田中紀雄氏/㈱3eee 社長 

【2025年8月号掲載】

田中紀雄社長
▲田中紀雄社長

〈3eee 田中紀雄社長が新展開に意欲〉インドネシアに研修センター、海外人材の本格的育成に着手

 介護や障がい福祉、保育等の事業を全国展開する3eee(本社・札幌市)は近く、インドネシアに現地日本語学校と共同で研修センターを設立する。これを足掛かりに当社が注力してきた海外人材の紹介・受け入れを一層強化する構えだ。田中紀雄社長は「日本人同様に、貴重な戦力として様々な業種において海外人材の重要性はさらに増してくる」と説く。

研修センター設立で海外人材の確保目指す

 慢性的な人手不足が続く介護業界で、田中社長は早くから海外人材の活用を積極的に行ってきた。人材を送り出す国の状況を把握するため、インドネシアやベトナムなど海外諸国を度々訪れては、綿密な視察を行い、関連団体との交渉や面談を重ねて独自のネットワークを構築してきた。

 こうした経験をふまえ、田中社長は次のように語る。「今、ジャカルタやホーチミンといった都市部の若者たちは、東京など大都市圏に目を向けています。一方、地方にも日本で働きたいという人材が数多くいるものの、まだ地域に充分な教育設備が備わっていないため、私たちはここに目を向け、研修センターの設立に至りました。自然に会話できるレベルまで日本語力を引き上げられる優秀な講師が在籍する都市部の日本語学校と連携し、地方の大学や職業訓練校とつなぐ。そして地方にも人材育成の環境基盤を整え、人材不足にあえぐ企業に私たちが人材確保から就労までシームレスな支援をしていきたいと考えています」

▲3eeeでも諸外国から海外人材を受け入れる

 3eeeは、海外人材の生活支援や就労のサポートなどを行う登録支援機関として出入国在留管理庁の認定を受けており、介護分野において早期から実績とノウハウを積み上げ、ワンストップでの支援体制を整えてきた。今後はその強みを生かし、低コストでの特定技能人材の紹介を他業種にも広げていく方針だ。

「多くの企業が人材確保に悩んでいます。そんな時は、ぜひ当社にお任せください。ニーズの高い自動車整備業などをはじめ、様々な業種・業態にも柔軟に対応していきます」(田中社長)

介護食を根底から変えるプロジェクト本格始動

 そして新たな展開がもう一つ。『世界一おいしい北海道の介護食プロジェクト』だ。今夏にも本格始動を予定しており、自社事業所で提供する食事を内製化し、介護食の品質向上を徹底的に追求していく。

 きっかけとなったのが、昨年12月に開設したデイサービス「PLACES野幌」で実施しているクッキングリハビリの好評ぶりだ。田中社長は語る。

▲利用者に好評のクッキングリハビリ

「機能訓練室の中心にアイランドキッチンを配置し、広々とした空間で利用者様がスタッフと一緒に調理を行う生活リハビリの一環ですが、利用者の皆様がそこに“やりがい”を感じているのが伝わってきますね。高齢者は口腔機能の低下や、食事の準備が難しくなること等から、気づかないうちに栄養が不足しがちです。クッキングリハは、自分で調理し、栄養バランスに配慮した食事を楽しみながら栄養改善ができるという利点があります。実際、簡易栄養評価によると、65歳以上の適正BMI値を維持・改善できた利用者の割合は、実施から半年で33・3%と高い数値を示し、クッキングリハの効果を裏付けています。利用者様のアンケートでも『ワクワクする』『またやりたい』と答える方が多く、やりがいをもって意欲的に取り組まれている様子がうかがえます」

 プロジェクトはまず函館エリアから本格展開を図り、JR新函館北斗駅近くにある地産地消に特化したレストラン「HOKUTO FARMERS TABLE」と提携、そこが食事提供の拠点となる。道南の米や野菜など新鮮な地元食材を生かし、「食べる喜びと栄養改善の両立」を目指す。

 また、この6月に札幌で開催された全国介護事業者連盟の北海道・東北ブロック大会では、同社が運営する「PLACES野幌」と江別市認可保育園「LOVE ALICE保育園」が施設見学先の一つに選ばれた。参加者の耳目を集め、「非常に参考になった」との声も多く寄せられた。

 同事業所は、田中社長が「幼老一体の共生社会」の実現を図り、立ち上げた新ブランド。「長らく高齢者の身体機能向上と介護度の改善に重点を置いてきましたが、これからは子どもたちとの交流や調理・就労を取り入れたリハビリなどサービス提供の枠組みの中で“生きがい”という付加価値をどのように提供していくかが重要」と語る。