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■足のボコボコ血管、むくみ…もしかして「下肢静脈瘤」?

「急にふくらはぎ辺りの血管がボコボコと浮き出ているのに気付いたんです」

 札幌市内に住む山本友美さん(40代・仮名)は10年以上前、2人目の出産後から足に違和感を感じていました。痛みはないため、病院を受診することなく日常生活を送っていましたが、血管が浮き出ている箇所が増え、年々悪化してきていると言います。
「夕方になると、冬はロングブーツのファスナーが閉まらなくなるほど、ふくらはぎがパンパンに」。
 さらに「朝方に起こる“こむら返り”は、大袈裟ではなく息ができなくなるほどです」と、日々の辛い症状に顔を歪ませます。

 知り合いの医療関係者に相談すると「下肢静脈瘤では?」と受診を勧められましたが、治療内容についての情報が少なく不安で、一歩が踏み出せていませんでした。
 国内の患者数1000万人以上と推定される「下肢静脈瘤」。
 1月28日の放送で、斗南病院心臓血管外科の吉本公洋医師は、「身近な病気でありながら症状や治療法について正しく理解されていません」と指摘します。

 足の血管がボコボコと浮き出る下肢静脈瘤はなぜ出来るのでしょうか?
 心臓から送り出された血液は足の先まで巡り、静脈とリンパ管を通って心臓へ戻ります。下から上へと血液を送る静脈には、逆流を防ぐための「弁」が付いていますが、この弁が何らかの負担で壊れると、血液が逆流して静脈に溜まり、「ボコボコと膨れた状態」になるのです。

 下肢静脈瘤は40歳以上の女性に多く、女性の患者さんは男性の2〜3倍。年齢とともに増加する一方で、「特に妊娠や出産後、立ち仕事や長時間のデスクワークなどをしている方は発症しやすい傾向にあります」と吉本医師は話します。

 もしかして下肢静脈瘤かも…そう思った皆さん、こんな症状はありませんか?

【下肢静脈瘤セルフチェック】
□血管が目立つ、ボコボコしている 

□重く感じる、だるい 
□つりやすい  
□むくみやすい、腫れている 

□かゆい、変色している 
□血管が硬い、痛い

▲「気になる症状があれば我慢しないで…」と話す吉本医師

*  *  *

 足のむくみやだるさは、1日中ではなく「長時間立っていた後」や、「昼から夕方にかけて」起こります。山本さんのように「寝ている時に起こる“こむら返り(足がつる)”」も下肢静脈瘤の特徴的な症状。
 また、皮膚の血液循環が悪くなることで、湿疹や色素沈着などを起こすこともあり、この病気が潜んでいる可能性があります。

 私の母も40代から下肢静脈瘤で、「血栓が飛んで、脳梗塞や心筋梗塞を起こすのでは?」と長年不安を抱えていたのですが、吉本医師は、
「下肢静脈瘤があるからといって、エコノミー症候群のような血栓症になるわけではなく、必要以上に恐れることはありません。ただ命に関わる病気ではありませんが、放置して重症化すると皮膚炎を合併したり、潰瘍になることもあります」
 と注意を促します。

 すべての患者さんが急いで治療を要する訳ではありません。しかし、外見が気になる、症状が辛い、皮膚炎を起こしているなど、日常生活に支障をきたすようであれば、医師に相談の上、治療することができます。
 軽症の場合は、生活習慣の改善、弾性ストッキングで予防・改善する「圧迫療法」。また進行して痛みや皮膚症状がある場合には「手術」を検討します。

 以前から盛んに行われていたのは、弁が壊れた血管を抜き取る「ストリッピング手術」。現在主流なのは、カテーテルを静脈に入れ、内側からラジオ波やレーザーで焼いて塞ぐ「血管内焼灼術」や、医療用接着剤をカテーテルで静脈に注入し外側から圧迫して塞ぐ「血管内塞栓術」で、いずれも体に負担の少ない治療法で保険適用になっています。

 吉本医師は「静脈瘤のタイプと程度を正しく診断し、その方に合った治療法を選択することが大切」と早めの受診を呼びかけました。

 放送後、山本さんから「手術を受けることにしました」と連絡が来ました。インタビュー時には、黒いロングスカートで下肢静脈瘤がある足首まで覆っていた山本さん。もしかしたら今年の春は、少しだけ丈の短いスカートを履いて、軽やかに闊歩しているかも…そんな姿を想像しました。

(構成・黒田 伸)

■斗南病院
 札幌市中央区北4条西7丁目3‐8。正式名称は「国家公務員共済組合連合会斗南病院」。消化器内科、腫瘍内科など23診療科を持つ「都市型急性期病院」。道から地域医療支援病院に指定され地域のクリニックや医療機関と連携しながら高度医療を提供する。JR札幌駅から徒歩5分。紹介状がない外来は前日の午後4時までに電話予約が必要。
電話(代表)011‐231‐2121

■動脈と静脈
 動脈は心臓から酸素と栄養素を含んだ血液を全身に送る血管。静脈は血液が全身の臓器から心臓に戻っていくときに通る血管。静脈の血液は体中の二酸化炭素や老廃物などを回収して再び血液をきれいにするために必要な肺や肝臓など運搬する役割がある。

松本 裕子(医療キャスター)

松本裕子

uhbニュースキャスター時代に母親のがんがきっかけで2010年からがん医療取材・啓発活動をスタート。北海道新聞とともに「がんを防ごう」キャンペーンを展開し、予防や早期発見、最新治療、がんと生きる―などをテーマに医療特集を自ら制作。その後、現代人を襲う様々な疾患について、患者に寄り添った取材活動を続けている。また、女性のライフスタイルや健康のサポートにも取り組んでいる。
★uhbで毎月第2・4日曜日 早朝6時15分〜6時30分「松本裕子の病を知る」放送中。
 YouTubeでも配信している。