■膝の痛みを諦めない!治療の基本は“運動”
「もしかして、私も変形性膝関節症?」
その予感が見事に的中してしまったのが、ちょうど1年前のこと。突然、両膝に激痛が走り、一時は歩くのも辛い状況でした。
日本では予備軍も含め「50歳以上の2人に1人」と推計される「変形性膝関節症」。
診断時は「中高年に多い病気」と聞いて、ガックリ諦めモードだったのですが、ヒアルロン酸注射で改善しても「根本的な解決にはならない!」と重い腰を上げて、軽めのトレーニングを始めてみました。
3月10日の放送で、みつわ整形外科クリニックの島本則道医師は「膝関節周囲の筋肉をつけることで、膝を支えて膝の痛みを減らします」と、治療の基本は「運動」だと力を込めます。
とは言え、わかっていても始められないのが運動。いきなりランニングやハードな筋トレは難しいですよね…どんな運動をすれば良いのでしょうか?
自宅で簡単にできる【膝みがき体操】を教えてもらいました。
①膝のやや上に丸めたタオルを入れ、内腿でタオルを挟む
②内腿の力を緩めず、ゆっくりとかかとを上げ、つま先立ちをする
③顎をひき、体は真っ直ぐに。内腿の筋肉を意識しながら、10回〜15回行う
(詳しくは、みつわ整形外科クリニックYouTubeで動画公開中)
ポイントは、無理せずコツコツ続けること。「週に150分」の運動が効果的というデータもあります。
「そんなの無理!膝が痛くて運動なんてできないよ」という声も聞こえてきそうですが、島本医師は「痛みの原因を明らかにして向き合うことが大切。そのためには、整形外科を受診し、投薬、関節注射、リハビリテーションなどの保存治療から始めて欲しい」と呼びかけます。
* * *
ある研究では、変形性膝関節症の痛みを放置すると、健康寿命が短くなり、介護の対象となる危険性が約6倍にもなるそうです。
多くの膝の痛みは、保存療法で軽快しますが、なかなか取れない頑固な痛みや日常生活に大きな支障が出ている場合は「手術」を検討することになります。
変形性膝関節症の手術は、主に「骨切術」と「人工関節置換術」で、人工関節は「部分的」に置き換える方法と「全て」を置き換える方法の2種類。どの手術にもリスクはあるため、年齢、変形の程度、重症度など、患者さんに合わせて慎重に手術方法を選ぶことが重要です。
そして今、〝第3の治療法”として注目されているのが「再生医療(APS治療)」。
よく誤解されますが「軟骨が再生する」という訳ではありません。患者さん本人の血液から「炎症を抑えるタンパク質」と「軟骨を保護する成長因子」を抽出した「APS(自己タンパク質溶液)」を膝関節に注射し、変形性膝関節症の進行を遅らせ、痛みを軽くし炎症を抑える治療法です。「外来で1回のみの注射」は、体への負担が軽く、副作用も少ないため安全性の高さがメリットです。
一方で、デメリットもあります。自由診療のため、みつわ整形外科クリニックでは費用は約30万円から(医療機関によって異なる)。最も進行したグレード4期では、治療効果がある人は約4割で、現時点では残念ながら全ての患者さんに効果がある治療法ではありません。
しかし、「再生医療だけで治すということではなく、再生医療で膝の炎症が治まったと同時に運動習慣を身に付けるきっかけにして欲しい。まずは痛みを諦めず、治療で痛みを取ってから運動することが大切です」と諭す島本医師の説明に、思わず膝を打ちました。
さて、運動を続けて1年後の私の膝はと言うと…現在は痛みもなく、長時間歩いても違和感はありません。十分に筋肉が付いた美脚からはまだ程遠いのですが、長年酷使して元には戻らない擦り減った軟骨のレントゲン画像を眺めながら、引き続き「コツコツ運動を続けよう」そう心に誓った春なのでした。
(構成・黒田 伸)
■医療法人社団みつわ整形外科クリニック
札幌市豊平区平岸3条6丁目6‐30。地下鉄南北線「平岸駅」徒歩3分。一般的な整形外科治療を基本にスポーツ整形外科、骨粗しょう症、上下肢のむくみ(浮腫)の治療に特化した専門医療体制を持つ。
電話011‐816‐3200
■保存療法
手術療法に対してそれ以外の治療法の総称。薬物療法、理学療法、運動療法、心理療法、放射線療法などで症状の改善や緩和を目指す。膝関節周囲の筋肉をトレーニングで鍛えると痛みの軽減や症状の進行を抑制する効果がある。