河西 邦人氏/札幌学院大学 学長

【2024年11月号掲載】

河西  邦人氏
▲学長 河西 邦人氏

札幌学院大学が掲げる「地域との共生」、社会課題を解決する教育で成果を還元する大学

コスプレフェスタで新札幌の街に活気を呼ぶ

 2022年に江別・新札幌の2キャンパス体制が整った札幌学院大学。大切にしているのは地域を丸ごとキャンパスにしていく、オープンエデュケーションという考え方だ。「学生の課題解決能力開発のために行う社会課題を教育研究活動によって解決し、その成果を社会へ還元していく大学が理想」と語る河西邦人学長に聞いた。

――札幌学院大学は「地域との共生」を理念に掲げています。その理念のもとで具体的な活動をされていますね。
 私が学長に就任してから、課題解決のために住民や行政、企業等と協働していく能力を身につけるPBL型教育(課題解決型学習。Project Based Learning)の推進に力を入れています。来年度からは全学的にPBLを採り入れ、より積極的に展開していく動きになっています。

新さっぽろコスプレフェスタ
▲「新さっぽろコスプレフェスタ」で街が活気づいた

 最近の例では、9月15日に本学の学生が中心となった実行委員会の主催で昨年に続き、「新さっぽろコスプレフェスタ2」を開きました。

 自分たちが通う新札幌キャンパス周辺の街をさらに盛り上げようと企画・提案したもので、イベントの運営にあたっては㈱札幌副都心開発公社、新さっぽろ副都心商店会、コスプレイベント開催に実績のある一般社団法人新文化経済振興機構などの協力を得て実現したのですが、今回はエリアを拡大してパワーアップ、昨年の参加者約680人を上回る984人から申し込みがありました。同伴者などの関係者を含めると約3500人がこのイベントで新札幌に集まったことになります。

 まさに若者たちを巻き込んだ地域活性化策であり、商業施設での撮影や飲食・買い物などの消費行動によって経済効果が生まれています。若い年齢層や発信力を持った方々に広く新札幌の新しい魅力の発信を促すことにもつながりました。

札幌学院大学新札幌キャンパス
▲2021年4月にオープンした新札幌キャンパス

――新札幌キャンパスの社会連携センターが大きな力になっています。
 社会連携センターは、地域と連携した教育研究を推進し、SDGsへの貢献を果たしていくための施設として2021年に新札幌キャンパスへ移転しました。課題解決力に秀でた人材の育成をバックアップする施設でもあり、黒子として学生たちをサポートしています。

――新札幌では昨年秋に再開発商業施設「BiⅤi新さっぽろ」がオープンしました。運営する大和リース㈱北海道支店と連携協定を結んでいますね。
 新札幌の活性化が大きな目的です。去る8月23~25日には、本学や大和リースのほか、新札幌の教育機関・医療機関、商業施設などが関与する一般社団法人新さっぽろエリアマネジメントの主催で「BiⅤi新さっぽろ」「サンピアザ1階光の広場」などを会場に「shin‐sapporo good summer festival」を初めて開催しました。

真夏のフェスティバル
▲真夏のフェスティバルでビアガーデンの隣に
学生たちがキッチンカーを出店

 音楽、映画、早朝ヨガなど盛りだくさんのイベントで連日にぎわいを見せ、まちづくりなどの活動を実際に行う授業「地域貢献B」の受講生らがBiⅤi新さっぽろのアクティブガーデンにキッチンカーを出店し、とても好評でした。

江別の4大学1短大、市や商議所と連携強化

――江別キャンパスの地域との取り組みにはどんなことがありますか。
 本学を含む江別市内の4大学1短期大学(ほかに酪農学園大学・北翔大学・北翔大学短期大学部・北海道情報大学)は、江別市、江別商工会議所とえべつ未来づくりプラットフォーム連携協定を結んでおり、協働による地域貢献と高等教育の活性化を目指した活動を行っています。

経済経営学部試食・販売会
▲経済経営学部の後藤英之ゼミが行った泊村産
カブトホタテの試食・販売会も地域課題解決に
向けたマーケティングプロジェクトの一環だ

 そのほか、江別市や南幌町、由仁町、長沼町など8市町、江別商工会議所、JA道央などが参画し、学生地域定着推進広域連絡協議会(ジモ×ガク)を組織し、地域課題となっている「地域の活性化」や「若者の地域定着」の達成を目標に学生のボランティア活動を主とした支援を行っています。本学はそのボランティア登録者数が最も多いのです。

 具体的には、地域のお祭りや商店街での古本市、多世代交流サロンなどにボランティアスタッフとして参加し、地域の方々との交流を図っています。活動終了後は毎回レポートを提出させ、「まちの温かさを感じることができた」といった感想が寄せられています。

――札幌学院大学は、国際交流、海外の大学との交流も積極的に展開していますね。
 昨年5月にコロナが5類に移行し、今年度から本格的に交流事業を行っています。
 今年6~7月、人文学部英語英米文学科は、米国オレゴン州のマウントフッドコミュニティカレッジから11人の学生を受け入れました。江別市が同州グレシャム市と姉妹都市を結んでおり、市内の家庭にホームステイをしながら、本学で学びました。「太宰治や夏目漱石が好き」という学生もいて、相互に学び合える貴重な2週間でした。

 また、今年9月には、グローバル科目「グローバルインターンシップ」の一環として、4人の学生がマレーシア・ペナン市にある協定校「TAR―UMT」で英語研修と現地企業でのインターンシップに取り組んだほか、来年度から半期留学先にオーストラリアのサザンクロス大学の追加が決まるなど、ホットな話題もあります。

時代の要請に応える教員養成

――江別キャンパスに人文学部人間科学科・英語英米文学科・こども発達学科と法学部の合計2学部。新札幌キャンパスに心理学部と経済経営学部経済学科・経営学科の2学部。それぞれに特徴、特色があり、関連する資格・免許や卒業後の進路もさまざまです。課題を一つ挙げるとすれば何ですか。
 新札幌キャンパスの心理学部と経済経営学部は多くの志願者が受験してくださり、とてもありがたいのですが、江別キャンパスの人文学部と法学部が志願者を減らしています。私もそれぞれの学部も危機感を抱いており、最近、学部が主体となって改革案を作成しています。

 文科省からどのような指導があるかわかりませんが、これからの社会のあり方を見据え、地域と共生することを大きなテーマとしています。

――日本全体の社会問題の一つとして教員志願者の減少が挙げられます。大学として取り組んでいくことはありますか。
 人文学部こども発達学科は、学校や地域、保育の現場で活躍できる人材を育成する学科で、小学校教諭一種免許状の取得が可能です。

 いま、特別な支援が必要な小学生が増えています。本学は「人権の尊重」を理念の一つとしていることから、誰ひとり取り残すことのない特別支援教育の専門家を育てていくことに力を入れているほか、多様化した社会の中で「メンタル面でタフな人材」を育成していくことも、とても大事だと捉えています。