越智 文雄氏/あかりみらい社長

【2022年10月号掲載】

越智文雄社長
▲越智文雄社長 全国の自治体のLED化をアドバイス

とまらない電気料金の値上げ、青天井への対応法

 電気料金の値上げがとまらない。大手電力会社が相次ぎ燃料価格の変動を料金に反映する「燃料費調整制度」の上限撤廃を発表したことで、電気料金は今後、青天井となると予想される。どう対応すれば良いのか、越智文雄あかりみらい社長に聞いた。

燃料費調整制度の上限撤廃は禁じ手

――北電は8月29日、家庭向けの一部電気料金プランで、燃料価格の変動を料金に反映する「燃料費調整制度」の上限を12月から撤廃すると発表しました。電気の専門家としてどう見ていますか。
 一方的ですね。「上限」を勝手に撤廃できるならば「上限」の意味がありません。禁じ手です。自ら作ったルールの放棄で、これで電気料金は青天井になってしまい、ロシアがウクライナから撤退するまではどこまで上がるかわからない〝ノーコントロール状態〟になりました。

――国の対応をどう思われますか。
 先日、東京である国会議員とお話ししましたが、物価対策を主要政策に掲げる岸田内閣が電気料金についてのみ後手に回っているのは原子力再稼働の思惑があるためで、電気料金の高騰、電力逼迫を人質にとっているのではないかという推測で一致しました。事実だとすると透け透けに透けて見える姑息な手段ですね。
 政府は、ガソリンの暴騰を抑えるため元請け3社への補填により一定以上の値上げを抑え、価格を安定させています。高く評価してよい有効な手段です。対応も迅速でまさに模範例ですよね。
 ところが、大手電力各社が勝手に「燃料費調製制度」の上限を外し、自分たちでいくらでも値上げをしていくのは、1970年代のオイルショック時にもなかったこと。
 その当時は通産省(現在の経産省)が厳格に電気料金を規制していました。値上げとなると、国の原価査定により値上げ幅を縮小させられたり、消費者協会や地元新聞による厳しい追及に公聴会は紛糾したものでした。
 今回の上限撤廃は、国民への事前説明とか、経産省に相談するとか、国が影響緩和措置をとるとか、いろいろなことが考えられたのですが、あまりにも唐突で一方的でした。ですから社会的にはルール違反だと思います。

――電気料金の高騰は国民生活のみならず、企業経営をはじめとする経済や自治体財政にも大きな影響を及ぼします。
 大幅な値上がりはあらゆる製品、商品、サービスの価格に転嫁されます。北海道ではすでに冷凍・水産、食品加工、製造業に致命的なコストアップを招いています。企業経営や自治体財政にとって最優先の課題です。

LED化で料金削減とカーボンニュートラル

――では、どう対応すれば良いのですか。
 電力会社に対策を求めてもムリです。すでに国民や企業が自己防衛できる範囲を超えています。
 私がこの会社をつくって10年間、皆さんにお伝えしてきたのは、日本は、LEDの発明でノーベル物理学賞を受賞した世界先進技術の国であるのに、特に北海道はLED化が遅れているということ。民間施設では相当進んでいるのに、自治体が管理する公共施設はまだまだ残している。
 今月号の寄稿でも書いたように(94頁参照)、多くの自治体がLED化を省エネ投資ではなく公共事業としてとらえてきたのが大きな要因です。
 そうした中で、道内では35の自治体が私どものアドバイスで公共施設をLED化し、電気料金の削減に成果を上げています。そのほか50以上の自治体にご助言を申し上げ、試算を提出し、すぐにでも取り掛かれる準備をしています。

――政府は2050年までに温室効果ガスを全体としてゼロにするカーボンニュートラルを目指すと宣言しています。
 LED化が地球温暖化防止、カーボンニュートラルに大きく貢献することは明らかです。
 札幌のような大都市はともかく、普通の自治体であれば全公共施設を2~3年で完全にLED化をすることは可能です。今からでも遅くはありません。私どもに施設の図面を送っていただければすぐにでもお手伝いいたします。

――リース活用による公共施設のLED化をお手伝いするこのビジネスモデルは、北海道以外からもオファーがあると聞いています。
 東京23区や大阪府の自治体からも試算の依頼が寄せられており、静岡県や神奈川県、熊本県からも問い合わせが来ています。弊社では図面さえあれば自動的に試算と見積もりができるので、今後は全国展開を加速させて進めていく考えです。