杉山 元氏/北海道労働金庫 理事長

杉山元理事長
理事長 杉山 元氏

杉山 元氏〈すぎやま はじめ〉

1961年札幌市生まれ、長万部町育ち。長万部高校卒業後、日本電信電話公社(現NTT北海道)入社。30代前半で労働組合専従となり、その後、情報労連北海道協議会議長、NTT労組北海道総支部執行委員長、連合北海道事務局長、同会長を経て、2024年現職。

変化の時代だからこそ会員・勤労者に寄り添う、新たな長期ビジョンに込める想い

つなぐプロジェクト1043万円を寄付

 事業量で道内3番目の金融機関である北海道労働金庫(以下、北海道ろうきん)は、2024年度までの現行長期ビジョンでは、目指す姿として「会員・地域・利用者とのつながりによる『しあわせの循環』の創造」を掲げ、事業推進を展開した。現在、新長期ビジョンと中期経営計画を策定中だ。

 北海道ろうきんは、預金残高は1兆1001億円(うち個人1兆140億円)、貸出金残高は8509億円(うち個人8437億円)、預金と貸出金を合わせた事業量は道内3番目の金融機関で、全道に37店舗(インターネット北海道支店を含む)を展開している。
 その特徴は、預金は約92%、貸出金は約99%が個人の顧客であること。生活者本位という姿勢、社会的な役割、暮らしに役立つ商品・サービスすべてがはたらく人の生活の視点から発想されている。

 経営の健全性を判断する際の指標となる自己資本比率は8・57%、総貸出残高に占める開示債権比率は0・65%と安定した経営基盤を築いている(数値は24年9月末)。

 24年までの現行長期ビジョンを振り返って杉山元理事長はまず「預金・貸出金の拡大」を挙げる。
「19年度に預金の年度末残高が1兆円を超えた。現行ビジョンが始まった15年度からの9年間で預金は1739億円、貸出金は1804億円の残高増加につながりました。会員と役職員が協働し福祉金融機関としての役割を発揮してきた成果であり、はたらく人の資金ニーズに適切に応えてきた証左であると思っています」

 会員や利用者と一体となった地域貢献活動の「つなぐプロジェクト」の実施でも大きな成果があった。
「この取り組みは預金・ローン等の利用1件につき100円、北海道ろうきんATMの利用やスマホ決済アプリへのチャージ1回につき1円など、取引内容と回数に応じた金額を北海道ろうきんが拠出するもの。『2023年度つなぐプロジェクト』(23年4月~24年3月末)では、各店・出張所推進委員会が選定した『地域に貢献する活動を行う団体』に対し、24年7月に道内57団体、総額1043万9000円の寄付を行いました」

 そのほか、23年8月に北海道と「連携と協力に関する協定書」を締結し、地域社会への貢献活動や児童・青少年への教育活動、道内労働者への支援活動を掲げた。協働事業として、市民活動団体との連携や金融リテラシー向上に係る活動に取り組んでいる。

 また、24年9月には職員が仕事と子育てを両立させることができ、働きやすい環境を作るための取り組みが評価され、「優良な子育てサポート企業」として、厚生労働大臣(北海道労働局)から「プラチナくるみん」の認定を受けた。これは「くるみん認定」を受けた企業のうち、より水準の高い取り組みを行い一定の要件を満たした企業が対象となるもので、道内で8番目。

 具体的には、制度周知の徹底による男性・女性とも極めて高い育児休業取得率や円滑な職場復帰の支援、「ノー残業デー」の取り組みなどだ。

次の10年につながる持続可能な基盤の確立を

杉山元理事長

 現在、新長期ビジョンを策定中だ。杉山理事長はそこに込める想いをこう力説する。
「『金利のある世界に回帰』するなど不確実で予想もできない変動を続ける社会環境とともに、はたらく人の課題やニーズは変化し、ろうきんが置かれた環境も変化していく。このような変化の時代にあるからこそ、会員・勤労者に寄り添い、生涯にわたり安心・安全な生活をサポートするというろうきん創設からの変わらぬ想いに立ち返り自らが変革を続けていきます」

 そしてこう締めくくる。
「会員・役職員が同じ認識に立って進めていくことが最も重要。会員・職員の声を聞きながら、福祉金融機関である北海道ろうきんとしての、次の10年、さらには設立100年(2051年)につながる持続可能な経営基盤の確立に向けた『道しるべ』としていきたい」