株式会社土屋ホーム

【2025年6月号掲載】

【住所】札幌市北区北9条西3丁目7番地
【TEL】 0120-228-406
【URL】https://www.tsuchiyahome.jp

土屋ホーム設計施工 「恵庭のMORI」、動画で伝わる技術特性と廉価の理由

▲完成予想の鳥瞰

 土屋ホールディングス(本社・札幌市、土屋昌三社長)傘下の土屋ホーム(本社・札幌市、山川浩司社長)は、同社が設計施工を行う恵庭市営住宅恵央団地PFI建替事業のポイント説明動画を制作し、4月に自治体や研究機関、メディア向けに限定公開した。木造4階建て中層棟の技術特性がよく分かると評判は良い。

▲建設工事が着々と進んでいる(2025年3月)
▲動画は山川浩司土屋ホーム社長の挨拶から始まる

 このPFI事業は公募型プロポーザルによって土屋ホールディングスを代表企業とするグループが最優秀提案として選ばれ、土屋ホームが設計施工を担っている。昨年7月に着工し、今年12月の竣工に向けて、工事が進められている。

 中層棟60戸と平屋棟20戸の計80戸の市営住宅を建て、隣接地に11区画の分譲住宅用地を整備するものだ。

木造の〝メリット〟に経済性と環境への配慮

▲中層棟全景のイメージ

 最大の特徴は、北海道の中層公営住宅では初の木造であること。道産木材が使われ、水と緑、花に囲まれたガーデンシティのまちにふさわしく「恵庭のMORI」と名付けられた。

 木造の大きなメリットは、経済的な面だ。作業の効率性や短い工期、構造体の軽量性などから低コスト、すなわち廉価で建設できるのだ。

 もう一つが、環境への配慮と地域経済に貢献できる点。地域材の活用によって輸送に係るエネルギーやCO2の排出を抑制できる。
 土屋ホームは2022年に道内初の木造賃貸マンション「ラピス」を開発し、1棟目を札幌市白石区菊水に建設した。「恵庭のMORI」ではそこで培った技術を存分に発揮する一方で、「ラピス」にはない工夫や工法も随所に見られる。

 例えば、南面に大きな開口部をとるため、耐震開口フレームという特殊な部材をバルコニーに設置しバランスを保持している。また、耐震、耐火性能を確保するため21㍉の強化ボードを合計3万枚近く使用している。

▲完成してからでは見ることができない精巧な軸組

 得意とする断熱や気密面では「ZEH(ネット・ゼロ・エネルギーハウス)仕様」を採用。入居者の光熱費負担の抑制につながるのは自治体にとっても一つのメリットだ。

 動画制作の狙いを、土屋ホールディングス・大吉智浩副社長がこう語る。
「完成してからでは見ることができない構造体を知っていただくのはもちろんのこと、技術の裏付けがあるからこそ廉価にできることをしっかりと説明したかった」

大工不足にあって自社で育成の強み

▲南側の耐震開口フレーム(夜に撮影)

 動画を視聴した関係者からは「よく理解できた」といった感想が寄せられたほか、「公共建築物の発注方法のあり方を考えなくてはならない」という声も少なくなかった。

 大吉氏が解説する。
「多くの自治体は再整備計画に基づいて公営住宅の建て替えを行いますが、そこには公共建築物は鉄筋コンクリートだという既成概念がある。この場合、設計と施工を分けて入札するのが一般的ですが、恵庭市の事業は設計施工を同時に行うプロポーザルでした。つまり『構造の規制はしない』、『自由な提案をしてください』ということ。それによって当社グループも参加し、選ばれることができた。公共建築物の木造化は国の法律で促進していながらも現状はなかなか進んでいない中、私どもの動画を見て、既成概念が壊れる瞬間はあったのだと思います」

「国の法律」とは「公共建築等における木材の利用の促進に関する法律」を言う。2021年に一部改正され法の対象は公共建築物から建築物一般に拡大した。脱炭素社会の実現に資するためだ。
 北海道は木材資源に恵まれている。そうしたポテンシャルがありながら、公共建築物の木造化が進まない理由の一つに大工の不足が挙げられる。

 その点、土屋グループは、土屋アーキテクチュアカレッジが工業高校等の卒業生を社員として雇用し、大工として育てているのが大きな強み。今年4月も定員の10人が入社した。この先、国内の大工の人数はさらに減ると予測される中でしっかりと生産能力の担保に努めている。