一般財団法人 北海道農業近代化技術研究センター

【2023年11月号掲載】

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農畜産物の持続的生産を支える〝消費者理解〟の醸成を

 鳥インフルエンザウイルスによる〝卵不足〟の影響は今もなお続いている。〝物価の優等生〟とされ、〝世界一の品質〟とも称される日本の卵を持続的に生産するには、消費者理解の醸成が不可欠。
 北海道農業近代化技術研究センター相談役・細越良一氏の提言を伺った。

据え置かれる1・5倍の価格

細越良一相談役
▲細越良一相談役

 鳥インフルエンザが猛威をふるい、卵が食品売り場から消えた。
 昨年11月から今年の3月までに鳥インフルエンザが発生した都道府県は25、養鶏場の数は78ヵ所にも及び、殺処分された鶏は約1500万羽。これは国内の飼養羽数の10%強に相当する。

 日本における1人当たりの卵の年間消費量は約300個で、その約半数は外食及び加工用だが、こうした状況の中、外食産業では卵を使用するメニューを削減、食品製造部門では一時的に海外から輸入して対応するなど、まさにパニック一歩手前の厳しい状況に至った。

 現在では鳥インフルエンザは収束し、卵が陳列される光景は戻りつつあるものの、価格は以前の約1・5倍に据え置かれたまま。殺処分による飼養羽数の減少と、国際的な飼料価格の高騰もあり、もとの価格に戻る気配はない。

世界一〝日本の卵〟を持続的に

 長年、〝物価の優等生〟と位置付けられてきた卵ではあるが、そのメカニズムは、工場並みの大規模な養鶏場で、無駄のない合理的な手法で卵を生産する──というもの。
 しかし、鳥インフルエンザが一度発生すれば、大規模な養鶏場ほど打撃は大きい。現在施行される鳥インフルエンザの感染防止対策では、1羽でも発症すれば、同一施設で飼養するすべての鶏が殺処分の対象になってしまうからだ。

 今般の研究によれば、鳥インフルエンザウイルスは変異を繰り返し、感染力も強まっていることから、渡り鳥以外の身の回りにいる鳥類などへの感染が増加傾向にあるという。
 このことによって、感染時期が通年化するなど、鳥インフルエンザの脅威が極めて身近にあることを認識すべきであろう。

 このようなリスクを避けるため、現在では飼養施設を分散化するなど、感染時の影響を最小限に留める対策が講じられているが、こうした対策によって生産コストが上昇していることはあまり知られていない。
〝日本の卵は世界一安全〟と称される。日本を訪れた外国人観光客が「卵かけごはん」を求める光景は何とも誇らしいが、この世界一の卵を生産し続けるためには、一定のコストがかかることを広く消費者に知らせていく必要がある。

 安定供給という面では、飼料についても輸入に頼り切るのではなく、国内産の割合を高めていくことに留意すべき。このことは酪農畜産においても言えることだが、全国平均の飼料自給率が20%程度ではいかにも心もとない。
 今後の世界情勢や食生活の変化などにも目を向け、水田転作での濃厚飼料の作付け拡大による、耕畜連携の促進、コントラクターの活用による適切な草地更新など、自給率向上のための積極的な施策の展開に期待したい。

細越 良一氏(ほそこし りょういち)

1949年9月20日生まれ、千歳市出身。73年北海道大学農学部農業工学科卒業、同年北海道空知支庁耕地部計画課入庁。89年北海道企画振興部地域調整課主査、97年北海道東京事務所参事、2001年北海道農政部農村計画課課長、05年日高支庁長、07年農政部参事監、08年農政部長。10年北海道農業近代化技術研究センター専務理事、13年理事長を経て、2019年6月に相談役に就任。