医療法人新産健会 LSI札幌クリニック

【2021年12月号掲載】

【住所】札幌市東区北13条東1丁目2番50号
【TEL】 011-711‐1331
【URL】https://www.lsi-sapporo.jp/

がんの第4の選択肢・「免疫細胞治療」とゲノム解析による個別化医療

▲医療法人新産健会 LSI札幌クリニック 副院長・免疫診療部長
瀧本 理修氏

がん治療で手術や抗がん剤、放射線と並ぶ第4の選択肢として注目されているのが「がん免疫療法」だ。
札幌市内の医療法人新産健会LSI札幌クリニックでは、その「免疫細胞治療」に力を注いでいる。
担当する瀧本理修副院長(免疫診療部長)に、がんの最前線治療について語ってもらった。

――瀧本先生は元札幌医大の准教授ですが、専門は何ですか。
大学時代はがんの抗がん剤治療の臨床と研究に携わってきました。大学を退職する時は、ノーベル賞を受賞した本庶佑京都大学特別教授が開発した免疫チェックポイント阻害剤(オプジーボ)が臨床現場で使用され始めたころで、今後はがんの治療でがん免疫療法がメインになるだろう考え、瀬田クリニックに就職しました。瀬田クリニックは東京大学の免疫治療講座の江川滉二教授が退官後に開設した日本で最初の免疫細胞治療の施設で、現在でもそこと連携して免疫細胞治療を提供しています。

――がん免疫療法とは。
免疫は、私たちのからだの中で異物を排除するシステムです。がん患者は、その免疫がうまく働かないために、がんが発症し進展します。
がん免疫療法は、①免疫チェックポイント阻害剤を使ってがん細胞で生じている免疫のブレーキ作用を解除する治療法と②がん患者は免疫の力が低下しているので、それを回復させて増強する、いわばアクセル的な意味合いを持つ治療法の2つがあります。
後者はさらに①免疫細胞治療(保険適用外・自由診療)と②CAR‐T療法(保険適用)などがあります。

――瀧本先生が行う免疫細胞治療とはどんな治療なのですか。
免疫細胞治療にはさらに①活性化リンパ球療法と②樹状細胞ワクチン療法があります。先程述べたように、がん患者のからだでは、がん細胞が免疫に対してブレーキを働かせているか、患者個人の免疫力が低下しているか、のいずれかです。
免疫で異物を攻撃する「兵隊」の役割を担うのが「リンパ球」で、リンパ球に攻撃の指令を行う「司令塔」の役割を果たすのが「樹状細胞」です。
①活性化リンパ球療法は、兵隊であるリンパ球を増やして活性化させ、体内に戻して低下している免疫力を改善する治療法です。
一方の②樹状細胞ワクチン療法は、司令塔の樹状細胞にがんの目印(がん抗原)を記憶させて、リンパ球をがん抗原に誘導させて攻撃する治療です。

――2つの治療は、それぞれどういう場合に適応になるのですか。
まず患者の免疫の低下の程度をくわしく調べる「免疫機能検査」を行います。抗がん剤治療や放射線治療が行われると免疫の機能が低下していくので、免疫の機能が低下しリンパ球の割合が非常に低下している場合には、リンパ球を増やす①活性化リンパ球療法を行います。
一方、リンパ球の割合が十分なのにリンパ球がうまくがん細胞を狙い撃ちできていない状況で、がんが進展している場合には②樹状細胞ワクチン療法が適応になります。

――具体的にはどういう治療が行われるのですか。
①活性化リンパ球療法では、血液を採取して、細胞加工施設で細胞を培養する作業を行います。およそ2週間経つと細胞はおよそ1000倍に増えます。それを点滴(50‌cc程度)で患者さんの体内に戻します。免疫機能の状態によりますが、通常、それを6回繰り返すのでおよそ3ヵ月の治療になります。
②樹状細胞ワクチン療法については、血液を採取してがんの特徴を樹状細胞に記憶させて投与します。こちらはワクチンなので皮下注射(1cc程度)になります。こちらも通常、6〜12回接種します。
いずれの治療もほとんど副作用はなく、体に負担が少ないのが特徴です。

ゲノム解析でがん免疫の個別化医療

――この治療が適応になるがんのステージと治療効果は。
ステージⅠ~Ⅳのどの段階でも適応になります。Ⅰ~Ⅲ期で手術でがんを摘出した後、がんの再発予防の目的で行うこともあります。Ⅳ期であっても抗がん剤治療と組み合わせることで相乗効果が期待できる場合があります。臨床研究では免疫療法が抗がん剤の作用を高めたり、逆に抗がん剤が免疫細胞の効果を高める報告があるので、抗がん剤治療と併用するメリットは非常にあると思います。
免疫治療の特徴として病状が進行せずに止まる状態(長期安定)が、ある一定の確率で発生します。

――その他については。
これまでは樹状細胞ワクチンをつくる時に、がんの目印になるがん抗原を調べて、がん抗原を特定した上で樹状細胞に記憶させる方法で行っていました。そのがん抗原はすでにわかっているがん抗原(既知抗原)でした。
当院では現在、プレシジョン・メディシン(精密医療)の1つとして全ゲノム解析も行っています。ヒトの遺伝子は約2万2000個ありますが、がん細胞特有の遺伝子異常をすべて調べて、ネオアンチゲン(新生抗原)を特定して遺伝子レベルで樹状細胞ワクチンをつくる方法を臨床研究として提供しています。また免疫の状態によっては免疫チェックポイント阻害剤との併用療法の臨床試験も実施しています。ゲノム解析により究極の個別化医療が可能となっています。