北武グループ
【2023年1月号掲載】
北武第1ビル(本社)
【住所】札幌市豊平区月寒中央通6丁目1-15 北武第1ビル
【TEL】 011-859-5233 (代表)
【URL】http://www.hokubu-g.co.jp
【北武グループ】北武フーズ商品開発で地域貢献、未来を見据え農園拡充の投資

北武グループの食品加工部門、北武フーズが業容を大きく広げている。「小樽花月堂」は創業170周年を機に本店をリニューアル、八軒工場では「パンかま」をはじめ特色ある商品を開発、管理栄養士による医療福祉食から生まれた「DELICOOK事業」も軌道に乗ってきた。道の駅のオリジナル商品開発はさらに磨きがかかり、地域貢献も果たしている。

「小樽花月堂」本店リニューアルは2022年4月。北武グループの創始者である小西政秀会長の強い思いから小樽の歴史・文化を発信するとともに、文豪・小林多喜二に焦点を当てるコンセプトとした。「多喜二茶房」を名称としたイートインスペースを新設、地元客や観光客に好評だ。

多喜二は4歳で小樽に渡り、小樽高等商業学校(現・小樽商科大学)を卒業後、当時の拓銀に勤務し、27歳頃まで小樽で過ごした。
おはぎが好物だったという。「花月堂」本店では可能な限り当時の状態に近づけた「多喜二が愛したおはぎ」を開発、特に人気を呼んでいる。
今後、観光名所である堺町通商店街に「花月堂ANEX店」の出店を計画中だ。
DELICOOK冷凍惣菜の可能性

札幌市西区にある北武フーズの八軒工場はもともと魚肉練製品の製造に定評があった。主に道産スケトウダラを生地にして、様々な副原料を使用した惣菜を開発し流通させてきた。
最近、売れ行きが好調な商品の一つが「パンかま」。道産スケトウダラを原料にしたかまぼこを指定のパン生地にくるんだ食べ応えのある商品。胆振管内洞爺湖町産のほたて、オホーツク管内美幌町産のとうもろこし、同佐呂間町産のかぼちゃなど地域の特産品やカレーハウスCoCo壱番屋などとコラボした商品開発も手掛けており、種類が増えることで大いに可能性を感じさせる商品だ。
「ホッケザンギ」をはじめ新商品の開発展開も同時に進めている。
コロナ禍による巣ごもり需要に応えるため豊富なラインナップを揃えた冷凍惣菜の「DELICOOK事業」も軌道に乗ってきた。小西会長はさらに力を注ぎ、「この事業を極めたい」と意気込みをみせる。

特徴は医療法人北武会管理栄養士の監修による医療福祉食から生まれた商品であること。主として高齢者向けの栄養食を提供してきたノウハウを駆使し、一般市場に向けて開発した。道内の量販店などに納められ、店頭で目にする機会も増えている。
和・洋・中のジャンルで、毎日でも食べられるお手頃価格であるのも消費者としては嬉しい。今後は今まで以上に道内の地元食材を原料に使っていく考えで、道の駅や地域の温泉との連携も図る。
この「DELICOOK」商品が地域振興や観光振興に資する日が遠からずやって来るかもしれない。
三笠高生のおせち商品化をお手伝い
「高校生の活動を応援する」という形の社会貢献も果たしている。三笠高校調理部が考案したおせち料理のレシピを再現した「まごころ込めた青春おせち」を商品化して販売しているのだ。
「高校生レストラン」で知られる同校は道内の公立高校では唯一の食物調理科単科校。その生徒が考案しただけに料理としてのレベルは高い。すべて手づくりで着色や添加物をほとんど使っていない貴重で価値のあるおせちだ。
道の駅のPB商品開発に多数の実績

一方、小樽市桂岡の花月工場は地域の特産品を活かした商品開発に一段と磨きをかけている。小西会長の持論である「北海道が持つ素材の優位性を活かせ」というフレーズにあるように、農産物や海産物を原料にした地域ならでは商品だ。特に道の駅のPB商品の開発に実績を重ねており、中にはオホーツク・紋別自動車道の遠軽ICに直結する道の駅「遠軽 森のオホーツク」の「塩餡パイ 雪の精」のように、開業以来から人気商品として定着・持続している菓子類もある。売れ筋であるだけに売店では目につきやすい場所に陳列されている。
原料となる農産物は米や小麦、小豆、じゃがいも、ハスカップなどさまざま。道の駅から寄せられるオーダーはまんじゅうやどら焼きなど和菓子が最も多い。
網走市では、商品の製造・販売を通じ、一種の社会貢献も果たしている。心身障がい者と向き合うNPO法人「網走市手をつなぐ育成会」の「オホーツクのごま煎餅」の製造・販売を応援し、売上金の一部を会の活動支援金として寄付しているのだ。
このNPOでは、障がい者が作ったパンやクッキーの販売に力を入れている。「オホーツクのごま煎餅」は北武フーズが持つ人脈などを活用して販路を確保し、オホーツク管内5ヵ所の道の駅と花月堂の店舗で取り扱っている。障がい者の勤労意欲の向上にもつながったという。
また、昨今は道産米の価値が高まっているため「北海道を応援!」する意味合いも込めて産地別の道産米を素材にした米粉菓子やお粥、リゾットなどの各種商品開発も進めている。「ゆめぴりか米粉バタークッキー」などの評判が良い。
このほか、新たなチャレンジとして、越境ECを活用し北米地区のアマゾンで、道の駅「遠軽 森のオホーツク」の「塩餡ペースト(瓶)」を販売中。こうした通販による販路拡大は今後の大きなテーマと位置付けており、「道の駅などのPB商品のプラットホームづくりを目指す」と従来に増して力を入れて取り組んでいく考えだ。
最近、至るところで目につく冷凍自動販売機による販路拡大も視野に入れ検討している。
小樽市忍路と北広島こくわ農園に大きな期待

小西会長はかねてから「食は未来への道を拓く」と語っている。そのためには惜しむことなく投資を進めており、例えば小樽市忍路や北広島市ではこくわ農園を増設し、こくわや加工商品を新たな特産品として育てていく。
忍路の農場で22年に 収穫されたこくわは実入りが良く、例年に比べ収量も多かった。一方、北広島のこくわ農園は2万平方㍍と広大(札幌ドームのアリーナ面積は1万4500平方㍍)で、20年に苗木1500本を植樹していることから、これからが楽しみだ。
新生農産では、上富良野地区に100㌶の田畑を持ち、そのうち60㌶で米づくり、そのほか麦類やデントコーン、大豆を栽培している。
農産物の生産から加工・製造、流通・販売まで一気通貫でできるのは北武グループの大きな強みである。