北武グループ

【2024年1月号掲載】

北武第1ビル(本社)
【住所】札幌市豊平区月寒中央通6丁目1-15 北武第1ビル
【TEL】 011-859-5233 (代表)
【URL】http://www.hokubu-g.co.jp

北武フーズの「食未来事業」2大プロジェクトで実績

地域連携の商品づくりに磨き クックチル惣菜がさらに進化
▲小西政秀会長

 北武グループの食品加工部門、北武フーズは5年前にスタートした2大プロジェクトで実績をあげている。同社が掲げる「食未来事業」の中核を担うもので、「地域連携による商品づくり」と「冷凍惣菜開発の強化(クックチル・クックフリーズ事業)」の2つ。目的は地域社会への貢献を果たすことである。

 北武グループの創業者、小西政秀会長はかねてから「地域とともに」を持論に、「北海道が持つ素材の優位性」を活かした商品開発に力を注いできた。

 地域のシンボルであり、人々が集まる道の駅に着目し、道内約80ヵ所の道の駅に花月工場で製造した菓子類等を納入。その半数以上は商品の企画から開発、製造までを担う、道の駅独自のPB商品だ。地域としっかり手を取り合い、信頼を生み、強い連携体制が構築されたからこその実績である。

▲プレミアム塩餡パイ

 旭川紋別自動車道の終点、遠軽ICに直結する道の駅「遠軽森のオホーツク」の「塩餡パイ 雪の精」に代表されるように、人気商品として定着・持続している商品は少なくない。
 そうしたなかで、ここ最近、成果をあげているのが、北海道産の米を使った商品展開だ。ここに着目したのは世界情勢による小麦の原料高が背景にあるが、全国的に価値が高まっている道産米のPRにつながり、「北海道を応援する」という意味合いが込められている。

 一例を挙げると、芦別と秩父別の米粉バターフィナンシェ、深川や蘭越の米粉バタークッキー、雨竜の米粉蒸しきんつばなど。
 これらの多くは米の食味ランキングで特Aの「ゆめぴりか」と「ななつぼし」を原料とし、味や食感の評判は上々。地域の道の駅の売店で販売され、看板商品としてPOP入りで目につきやすい場所に陳列されている。

 こうした地域連携による商品づくりは新たな展開も生んでいる。その一つが広域エリアの商品開発だ。JAしれとこ斜里から地元の小豆と小麦粉を使用したあんこぱいの製造を受託、商品化となり8月下旬の発売開始から製造が追いつかないほど好評を得ている。現在、道の駅はもちろん、知床のホテルやJA関連施設などで販売されている。

 これら道の駅のPB商品は道外でも着目されるようになり、静岡県のしずてつストアや岡山県の両備ストアなどで行われた北海道物産展からオファーが寄せられ、ほぼ完売となった。
 一方で、地域PB商品の通販事業にも着手。インバウンドを含め来店客を増やすためのサポートや観光需要閑散期の販売促進、リピート購入などに結びついているため、今後さらに強化していく考えだ。

▲北海道産米粉を使用したさまざまな菓子類

八軒工場の技術力大いに活かされる

クックチル惣菜
▲クックチル惣菜の豊富な商品ラインナップ

 もう一つのプロジェクトが「冷凍惣菜開発の強化(クックチル・クックフリーズ事業)」。
 同工場はもともと魚肉練製品の製造に定評があり、主に道産スケトウダラを生地にして、様々な副原料を使った総菜を開発し流通させてきた。そこからさらに業容を広げ、巣ごもり需要に応えるため豊富なラインナップを揃えたのが冷凍惣菜の「DERICOOK事業」だ。

 特徴は医療法人北武会管理栄養士の監修による医療福祉食から生まれた商品であること。主として高齢者向けの医療・福祉施設への食事供給からスタートしたもので、その後、一般市場に向けてラインナップを充実させ、現在は約40種類。

 多くの栄養分が含まれ、ヘルシーであることが消費者に受け入れられている。毎日でも食べられるお手頃価格で、一人で食べきれる量であるのも嬉しい。業務用パッケージ対応のため安心・安全だ。

 DERICOOK事業が進化し、「惣菜」からバージョンアップしたのが「冷凍丼ぶり」シリーズだ。短時間で手軽に味わえるレンチン弁当である。パッケージの半分がご飯もの、半分が惣菜となっており、こちらも和・洋・中と豊富なラインナップを揃えた。

需要高まる冷凍食品供給数を増やす方向

「冷凍丼ぶり」シリーズ
▲「冷凍丼ぶり」シリーズ(盛り付け例)

 近年、量販店の冷凍食品の売り場スペースは大きく広がっている。消費者の利用頻度が増えているためで、日本冷凍食品協会の調査によると2014年と20年では週1回以上の利用者が15・2%アップしているのだ。

 高齢化のさらなる進行と少数世帯の増加で、冷凍食品の需要が今後も増え続けるのは間違いない。八軒工場では今まで以上に道内の食材を原料に使った商品開発を進めていく方針で、ニーズに応え提供数の増加や設備強化も視野に入れている。

 また、冷凍レンチンやフローズンチルド対応商品などの幅も広げ、量販店や本州の北海道物産展向けの供給も行っていく考えだ。
 この冷凍食品の分野でも、地域連携プロジェクトから派生した商品づくりが見られる。美瑛産コーン、噴火湾産ほたて、佐呂間産かぼちゃを使った「パンかまシリーズ」は札幌商工会議所認証の「北のブランド」に選ばれ、とても好評。

ライスボールコロッケ とパンかま
▲パンかまとライスボールコロッケ (右)

 このほか、喜茂別産ジャガイモのいももち風「いもまんま」や蘭越産ゆめぴりかを原料にした「ライスボールコロッケ」などがある。
 これまで取り組んできた2大プロジェクト「地域連携+惣菜開発」を活かし、地域のPB惣菜づくりや福祉食の分野でも貢献したい考えだ。

 北武フーズは「高校生の活動を応援する」という社会貢献活動も果たしている。三笠高校調理部が考案したおせち料理のレシピを再現した「まごころ込めた青春おせち」を商品化。これは4年間継続している。

 もう一つ。深川東高校商業クラブが16年に企画した「スイーツなどら焼き」も製造。カスタードクリームにりんごのコンポートをはさんだ生どら焼きだ。

自社農園で米づくり付加価値の向上図る

上富良野地区の新生農産
▲上富良野地区の新生農産

 小西会長は「食は未来への道を拓く」と力説する。北武グループの強みは北武フーズの花月工場や八軒工場などで発揮される特徴を持つ技術力だけでなく、道内に複数の農地を保有していることが挙げられる。先見性を持ち、「食」に関しては早くから投資してきた。

 その一つ、上富良野地区の新生農産は100㌶(東京ディズニーランド+ディズニーシーの面積に相当)の田畑を持ち、そのうち60㌶で米をつくり、そのほかに麦類や大豆を栽培している。
 ここで生産された米はブランド米として普及させ、今後は付加価値向上にも取り組んでいく考えだ。

 いち早く大規模農業の運営ノウハウを確立し、北海道の食供給に先駆的な役割を果たそうと研鑽を重ねてきた。
 現在、国は食品産業を中心に、多様な関係者が集結して新たなビジネスを持続的に創出する仕組みを構築するためLFP事業(Local Food Project)を推進している。

 北武グループは地域連携を重点に掲げ、農水産物の生産から製造・加工、流通・販売までのプラットフォーマーとして取り組んでいる。
 今後、ますます北海道の食にまつわる社会課題の解決と地域活性化の両面での活躍に、期待は高まるばかりだ。