【2020年7月号掲載】

〈やまなか ひろまさ〉
1968年7月30日生まれ、51歳。札幌市出身。吉田学園卒業後、タイヤメーカーやアルミ建材メーカーの営業を経て、99年㈱くきつ入社。建築、ガス、管理等すべての部署の経験を活かし部長、常務、専務を経て、2006年代表取締役社長に就任。現在に至る。

「お客様、オーナー様、社員とその家族をいかに守るか」コロナ対策 社長の闘い方を見せる機会に

札幌市の菊水地区を拠点に市内でLPガスの販売や不動産管理など、市民の生活インフラを主要事業とする㈱くきつ(山仲啓雅社長)。創業63年を迎え、これまでに暖房料金を40%割り引く『ガス安君』プランや、ガス料金にポイント付与のシステム導入のほか、全戸同一というガス料金の明確化など、先駆的なサービスを次々に実践してきた。ブランディング戦略に長けた山仲社長に、コロナ禍における闘いぶりについて話を聞いた。

インフラを扱う企業は分け合いの精神が必携

——新型コロナウイルスの感染拡大は、世界的なグローバル路線が裏目となるような事態になりました。
大手企業は新しい顧客をどんどん増やし、新規事業を立ち上げるなど、世の中は何でも拡大路線でした。私はここ数年、そういうことは行っていませんでした。業務内容を一層良くしていくため、前向きな効率化に取り組んできました。
一例として、通信でガス使用量を検針できる仕組みを業界で先んじて導入、また、社内の根幹となるシステムを一から構築するなど、先駆的な取り組みは中小企業としては当社くらいではないかと自負しています。
これは、顧客ニーズの多様化に対応していくためです。付加価値や差別化を図るため、システムを構築できるものは積極的に導入し、その分をサービス向上に振り向ける。拡大路線ではなく内容重視のコンパクトな業務に改善していく。しっかりお客様に寄り添えるような企業を目指したいと思い、こうした取り組みを3〜4年前に発想し、物件の洗い替えなども行ってきました。
今年は、さらに社員教育を充実し、お客様により喜んでもらえることを目指そうと、皆と話していた矢先に新型コロナウイルスの感染拡大問題が起こりました。

——この状況下で当初の事業計画の進み具合は。
お客様やオーナー、社員たちを守るという根幹については、コロナであろうと何だろうと変わりはありません。インフラを扱っている企業として現在、管理物件の入居者様とともにコロナ関連の情報を共有するように努めています。
家賃については「なかなか払えなくなってきた」「払えそうにないから引っ越しする」「少し待ってほしい」といった声が増えてきています。これに対して、ただ「払ってください」というだけではなく、北海道や札幌市の助成金など支援策に関する問い合わせ先などの情報を管理会社として入居者様に提供しています。ガスの供給先であるお客様には専用アプリで情報を発信するなど、自分たちだけではなく入居者様にも生き残ってほしいと思うからです。

——社員の外勤業務での工夫や取り組みは。
生活インフラを扱っている以上、店舗を完全に閉めて休業することはなかなかできません。このためガス事業で言うと、点検のほか器具不良などを含め、お客様の所に直接訪問する際には最善細心の注意を払っています。マスクは当然着用し、除菌水を持参のうえで訪問しています。社員の健康を守るため、時差出勤を導入し、社員の3分の1は11時出社や16時退勤、ほかには残業なしなど。
コロナの影響で、品薄だったマスクや除菌水関係は、取引先から融通して頂いたものをオーナー様や社員とその家族に配付するなど、こういう時こそ分け合いの精神で皆が生き残れるようにと心がけています。

危機の闘いぶりが最大の社員教育

——こうした取り組みの根底にあるものは。
まだ終息していませんが、このピンチのなかで社長の闘い方を社員に見せることが〝一番の社員教育〟になるのではないかと思います。
今まで営業活動を含めた業務で、「取り組もう」と言ってきたものを「やってはいけない」と言わなければならないのは、経営判断として、とても勇気が必要で、売り上げや利益を考えると難しいことです。北海道は2月末に独自の「非常事態宣言」を発表しましたが、当社はその早い段階から外回りをストップさせていました。どう闘い方を見せるか。私自身も試されていると思っています。
2018年9月に発生した胆振東部地震の時は、いわば有事の際の闘い方でした。社員は自分の住宅や家族が不安のなか、会社に集まってもらい、入居者様の安否確認に回りました。自分の家族を後回しにして取り組まなければならず、申し訳ないという気持ちもありながら、あの震災を乗り越えてきました。先代社長の故・茎津六松氏(08年死去)が生前話してくれました、「ピンチだから『できない』ではなく、『どうやったらできるか』を考えよう」。この精神が、こういう時だからこそ伝わるのかも知れません。

——実際、売り上げなどへの影響は。
当社は今回、売り上げが極端に下がったということはなく、物が売れずに先行きが不安ということもない状況です。ただ、地震の時と同じですが、インフラを扱っている以上、社員は休むことがなかなかできず苦労をかけています。商売は良いところもあれば、そうではない場面もあると思います。生前、先代が話してくれたことに気付ける機会ととらえています。苦労は無意味ではありません。当社の経営理念には、「会社を永久に存続させることを目指す」とうたっています。こんなことで駄目になっているようでは困ります。今後、世の中は少しずつコンパクト化に舵を切っていくのではないかと推察します。

株式会社くきつ
【住所】札幌市白石区菊水5条1丁目7-13
【TEL】 011-821-1181
【URL】http://www.kukitsu.co.jp