【2019年11月号掲載】

北海道農業近代化技術研究センター_細越良一氏

〈ほそこし りょういち〉1949年9月20日生まれ、千歳市出身、69歳。73年北海道大学農学部農業工学科卒業、同年北海道空知支庁耕地部計画課入庁。89年北海道企画振興部地域調整課主査、97年北海道東京事務所参事、2001年北海道農政部農村計画課課長、05年日高支庁長、07年農政部参事監、08年農政部長。10年北海道農業近代化技術研究センター専務理事、13年理事長を経て、今年6月に相談役に就任。

地域・行政・企業一丸で労働力不足に対応した農業支援体制構築

〝労働力〟が不足している。なかでも一次産業、とりわけ本道の農業分野は顕著で、関係者は日々さまざまな施策で不足解消に向けた取り組みに汗している。地域の基幹産業である農業が今後とも持続的に発展していくためには、最新技術による作業の効率化はもとより、地元企業も副業に対する理解を深め、農業を支える役割を担っていくことが必要である。

直播専用の品種誕生

——まずは農業分野が抱える課題についてお話を。
〝労働力不足〟、これに尽きると思います。昨今「人手が足りない」といった声が各業界から聞こえますが、とりわけ農業分野の労働力不足は深刻です。
もちろんそれ以外にも課題はありますが、喫緊の対応が必要なのは地域、行政、企業が一丸となって〝労働力不足に対応した今後の農業に対する支援体制〟を構築することです。

——対応策として考えられることは。
まずは〝作業の省力化〟を図らなければなりません。同じものを生産するにしても、できるだけ人手をかけずに行うというもので、米の栽培で例えると、〝直播(ちょくはん)〟という方法があります。
これは「苗を育て、苗を運び、田植えをする──」といった従来の方法ではなく、麦のように水田に直接籾を播いていく栽培方法で、労働力を格段に減らすことができるため注目を集めています。また、この手法を用いることで〝労働ピークの分散〟を図ることにもつながります。
米の場合、田植えシーズンが労働のピークにあたり、この時期に労働力が不足してしまうわけですが、直播であれば田植えの前には種作業を終えることができ、ピークを分散させることが可能となります。それに加え、直播は移植に比べ生育ステージが遅くなるので、収穫時期も長くとることができ、結果的に労働のピークを緩やかにすることができます。
もちろん高収入を見込める品種については従来通り手間暇をかけて作り上げればいいと思いますが、そのほかのものについては、経営規模の拡大を進めていくためにも、必要な栽培方法であると考えています。今年は〝直播専用の品種〟が初めて作付けされるなど、直播に対するに対する機運が高まりを見せていますので、引き続き積極的に取り組みを進めていきたい。

——ITを活用した農業も近年話題です。
そうですね。鹿追町の「キャベツ自動収穫機」をはじめ、ロボットトラクターやワンタッチで農薬を自動散布するドローンなど、人工知能やITを駆使した〝スマート農業〟の導入はこの先なくてはならないものです。
近年、都市と地方との情報格差は、「解消されつつある」と感じていますが、スマート農業の導入が進めば、そのことに一層の弾みがつきますし、なにより地方の農家も最先端の技術力を持つことで、若い営農者のモチベーション向上にもつながるはずです。

農業理解で地域を守る

——外国人就労者活用もひとつの手段と言えますね。
確かに今年4月に入管法が改正され、外国人の受け入れをしている農家の例もありますが、通年で雇用することが難しい北海道の農業では限界があります。
地域にある労働力の活用、これこそが第一です。地域全体に活気を与えるためにも、地域にいる人に働いてもらうことが肝要です。

——具体的な施策は。
ひとつは既にリタイアした高齢者の労働力を有効に活用すること。「1日2時間ぐらいなら──」などといった、働く人の希望に合わせた労働環境を構築することでこれまで働けなかった人、働くことを諦めていた人を発掘できるわけです。深川市はきゅうりが有名ですが、きゅうりは朝収穫しなければなりません。こういったケースでは、「朝だけ働きたい」という人にうってつけです。
また 〝ワンデイワーク〟も推進したい取り組みのひとつですね。これは文字通り1日単位で働くというもので、昨年実験的に、多くの人手を必要とする〝長いも〟の収穫時にスマートフォンでワンデイワークの募集したところ、100人近い人が集まりました。

——地域内に〝これだけの労働力がある〟ということが証明されたわけですね。
その通りです。本格的な導入の目途も付きましたので、引き続き積極的に活用したいところですが、課題が見えてきたのも事実です。
働きに来てくれる人の大半は本業がある、いわばサラリーマンです。要するにワンデイワークに参加する人は、自身が勤める会社に〝副業〟の届出をしなければなりません。昨年1月に厚生労働省は〝モデル就業規則〟のなかの「許可なく他の会社などの業務に従事しないこと」という規定を削除し、「勤務時間外において、他の会社の業務に従事することができる」を追加しましたが、まだ副業に対する理解は進んでいるとは言い難いのが実情です。
道内企業を見渡せば、「十勝の小豆100%」「空知の米を使用」といったキャッチフレーズで商品展開している企業は数多いのですが、そういった企業も北海道農業が立ち行かなくなれば、企業の存続にかかわってくるはずです。自身の企業を守るためにも、地域の基幹産業である農業を守るためにも、支援体制の構築に尽力をいただきたい。

一般財団法人 北海道農業近代化技術研究センター
【住所】深川市広里町4丁目1-3
【TEL】 0164-25-1591
【URL】http://www.hamc.or.jp/