公益財団法人 北海道対がん協会

【2026年1月号掲載】

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あらかじめピロリ除菌の有効性を判定できる「スマートジーン」、胃・大腸がんで「AI」導入

 北海道対がん協会(加藤元嗣会長)では、X線検診でピロリ胃炎を調べ、除菌歴がなくてピロリ胃炎が疑われた人を内視鏡検査に誘導している。
 その結果、胃腫瘍の発見率は2・6%と、内視鏡検診の場合(0・27%)と比べ、10倍程高くなった。胃がんを効率的に発見するには、ピロリ胃炎の診断がきわめて重要だ。

▲加藤元嗣会長

 さらに北海道対がん協会では「スマートジーン」を使った胃内液迅速PCR検査を行うことで、ピロリ診断と適切な除菌薬の選択が可能である。
「スマートジーン」を使うと①「ピロリ菌の感染が陰性」②「ピロリ菌の感染が陽性かつCAM感受性」③「ピロリ菌の感染が陽性かつCAM耐性」の3つの判定が50分でできる。

「CAM」はピロリの一次除菌で用いられるクラリスロマイシンという抗生剤で、②「CAM感受性」はこの抗生剤が効くこと、③「CAM耐性」は逆に効かないことを示す。

▲「スマートジーン」

 ピロリ除菌では、一次除菌でクラリスロマイシンを使い、それが効かなかった場合に改めて二次除菌を行うのが通常だ。これに対し、同協会では「スマートジーン」であらかじめクラリスロマイシンが効くか否かを50分で判定することで、抗生剤が効かない場合(③の判定)には一次除菌を行わずに最初から二次除菌を行うことができる。

「この方法だと、初回の除菌成功率が98%に高まり、検診に来たその日のうちに1回の除菌で済みます」と加藤会長。

 また同協会は、AIを使った胃がんと大腸がんの内視鏡検査を実施している。
 同協会が導入しているAIは、病変検出を補助する「CADe」と病変診断を補助する「CADx」だ。食道・胃・大腸では病変と思われる箇所を検出すると内視鏡の画像に印(四角の枠)が表示される。また、胃では画像撮影のために動画をフリーズ(静止)するとAIが作動してがんの可能性(60%以上)がある場合に「生検」の必要性を示す「Consider biopsy」の文字が表示される。

 治療ガイドラインでは、がんの見逃し率は1~3割で、特に背景の胃炎が強い胃がんの場合には、がんを見つけづらい。
「AIを導入することは、経験が浅い内視鏡医のそばに他のドクターが付いて複数の目で内視鏡を診るのと同じ効果が得られ、がんの見逃しを防ぐことができる」と加藤会長。

▲北海道対がん協会

 そのほか、26年8月頃から旭川市が対策型胃がん検診への胃内視鏡検査の導入を予定していることから、同協会の旭川センターでは、それに向けて、内視鏡室等を充実させ、受診者の利便性を向上させるために、改修を行う予定としている。