旭イノベックス株式会社
【2024年1月号掲載】
【住所】札幌市清田区平岡9条1丁目1番6号
【TEL】 011-883-8400
【FAX】 011-883-8405
【URL】https://www.asahi-inovex.co.jp
建築・土木の鉄構現場で進むDⅩ化、オートゲートでは国際戦略の加速へ
建築鉄構、土木鉄構、住環機器の3事業部で企画・製造・販売を展開する旭イノベックス。2023年は「総じて堅調に推移した」ものの、鉄を含む建築資材の価格高騰で「建設規模の見直しや計画の中止も散見され始めている」と星野幹宏社長は気を引き締める。一方で、新たな取り組みにも意欲を見せる。
主力の建築鉄構事業部は「BIM」と呼ばれる3D技術を早くから導入し、優位性を高めている。デザイン性に富んだ建築ニーズに十分に応えられるからだ。
進化は続く。「複雑な図面だけでなく、工場で生産するすべての3D化を図りたい。管理業務から出荷に至るまで技術を活かし、トータルなDⅩ化を推進していく」と工藤孝志常務取締役建築鉄構事業部長は力を込めて語る。
札幌の中心部では再開発によるビル建設が至るところで進んでいる。同社が鉄骨工事を担う現場は少なくない。
一例を挙げると、オープンしたモユクサッポロ、11月30日に1stオープンのココノススキノ、建設中のほくほく札幌ビル、北海道新聞社の新本社ビル、アクサ生命の札幌中島公園プロジェクト、北広島駅西口Aプロジェクトなどの大型事業のほか、円山動物園のオランウータン館(仮称)工事などに携わっている。
遠隔監視機能完備大きな付加価値に
土木鉄構事業部は、同社オリジナルの「洪水から人を守る」無人無動力自動開閉ゲートへの評価が全国的に高い。ものづくり日本大賞内閣総理大臣賞などの受賞歴があり、それに驕ることなく改良・改善を重ねている。
現在は第3弾となる「オートゲートステップレス バタフライフロート」を展開中。こちらもDⅩ化を進めている。
「付加価値としての遠隔監視機能を今後、本格的に広めていく。現場に出向かなくても、事務所や樋門操作人の自宅などでゲートの状況を把握することができるのが利点」(伊藤伸彦常務取締役土木鉄構事業部長)
国際特許を取得中だ。
「すでに申請等の手続きを終え、審査が通ったところもあり、コロナ禍で停滞していた国際戦略を加速させる。国際的な展示会に出展するなどして、学術的なPRも進めていく」(星野社長)
土木鉄構事業部は、ダムゲートや橋梁などの公共工事に携わっている。22年に完成した平取ダムは一般社団法人ダム工学会から技術賞を受賞した。
多能工化の強み発揮違う部署で即戦力に
一方、住環機器事業部は23年に電気タオルウォーマー「ホットeラック」を新発売。モデルハウスへのサンプル設置などで周知活動を図るものの、建築資材高騰で新築戸建て住宅の着工棟数が大きく減っていることから、冷暖パネルともども受注面での影響は避けられていない。
市場の落ち込みに抗うのは難しい。しかし、ここで同社がかねてから進めてきた多能工化が強みとなって発揮されている。住環機器事業部の技術者5人が建築鉄構と土木鉄構の各事業部に応援に出て、それぞれの現場で即戦力として活躍中だ。
人手不足は今、経済活動のなかで大きな課題となっており、技術や技能を伴う建設業界や工業界は特に深刻だ。いわゆる「人の取り合い」も起きているといわれる。
同社は「採用環境は今後さらに厳しくなる」と見て、社内全体の賃上げを図り、初任給もアップさせた。採用に特化したホームページの作成や工場見学の受け入れなどを継続しながら採用活動を行っている。
ただ、星野社長は今の人手不足の現状を悲観的には見ていない。
「北海道でいえば、ラピダスやその関連工事に人が流れる懸念はあるものの、建設業や製造業はその業種が衰退して人が足りないのではない。チャットGPTをはじめとするAIの進化は我々ものづくりの仕事の価値をきっと押し上げてくるはずだと思っている」
そうした考えから、社会貢献活動には力を入れている。一例を挙げると、22年から北海道マラソンにキッズサポーターとして特別協賛。「旭イノベックスプレゼンツウイニングラン」が開催された。「スポーツを通じて青少年の健全育成を行いたい」(星野社長)という思いから始まった。