【2019年9月号掲載】

ベトナムからの青少年短期留学ツアーの一行、12人が6月に紋別市を訪れ、市内の中学校で授業を行い、習字や日本武道など日本の文化にも触れた。今回で3度目となるこのツアーは昨年まで市の事業として行ってきたが、今年は紋別観光振興公社の現地法人というべき、ベトナムのモン・マイ・トラベルが主催。行政の事業を民間が引き継ぐモデルケースとなり、「継続は力」の大切さを浮き彫りにした。

3度目となるベトナム短期留学ツアー【紋別】行政の事業を民間が継続

ベトナム青少年短期留学ツアーを主催したモン・マイ・トラベルの設立に汗を流し、今回、10日間の日程のツアーの受け入れを担当した紋別観光振興公社の中島和彦副社長はこう力説する。

「紋別市は今年度、ベトナムではなく、タイの中学生を対象とする受け入れ事業を計画していますが、事業は継続して行うのがベストです。ベトナムからの青少年短期留学を2回実施して成功したのですから、そこは大切にしていかなければならない。予算がつかなければそれで終了してしまうようでは、積み重ねてきたものが無駄になりかねません。行政が事業を構築して、それを民間が引き継ぐ。地域のためになることは今後もどんどん手掛けていきます。まちの活性化につながるのですから」

▲紋別の中学生と交流を図り、観光や日本の文化を体験した

交流人口拡大には海外交流が不可欠

北海道は、札幌圏など一部を除き、多くの市町村で「人口減に歯止めがかからない」という悩みを抱えている。そんな市町村が地域を元気づけるために合言葉のように目指しているのが「交流人口の拡大」だ。中島氏もそこを重視して、海外に目を向けた活動を精力的に展開してきた。

海外の青少年短期留学は交流人口を拡大していく上で大きな意味を持っている。というのも滞在中に、地元学生との交流や日本文化体験を通じて、日本語を学ぶ意欲や日本で働く気持ちを育む。それによって母国でのPRが促進され、さらなる旅行者や留学生が紋別を訪れることにつながるだけでなく、当人たちの再訪も期待できる。現に、今回の行程は、紋別観光や流氷公園でジンギスカンピクニックなど思い出に残る内容だったため、「また来たい」という声が多数寄せられているのだ。

▲紋別のシンボル、
カニの爪オブジェ

加えて、北海道はインバウンド観光客の獲得・定着に向け、官民一体となって海外にPRしている。北海道の基幹産業である農林水産業やその加工業、サービス業などの現場では外国人技能実習の受け入れで労働力不足の解消を図っている。今やどの自治体でも、住民と外国人との共生社会の実現が求められるなか、こうした短期留学生ツアーは「必要とされるもの」と紋別市内の会社経営者はきっぱりと語る。「地域全体で歓迎し、活発な交流を図ることが、相互の理解を深める上で大切」と言うのだ。

東南アジアを中心に精力的な活動を展開

▲オホーツク紋別空港から帰路についた

今回、旅行を主催したモン・マイ・トラベルは、紋別観光大使のレ・ティ・マイ・フンさんが代表を務める。フンさんは2年前に紋別市の非常勤特別職として観光交流推進室で研修した経験を持つ。

紋別観光振興公社は戦略上、資本関係は結ばなかったものの、モン・マイ・トラベルを全面的にサポートしてきた。同社を通じてベトナム国内の旅行会社にアプローチが行われ、紋別へのツアーの企画や催行など「紋別のためになる」ことが大いに期待できるからだ。

中島氏は、インバウンド観光客が比較的多い台湾や中国ではなく、ほぼ一貫して東南アジアに目を向けて活動し、実績をつくってきた。この背景には、紋別市民の生命線である「東京─紋別」航路の維持など、地域経済を保持していくために必要な要素が複数ある。

今回、市の事業を引き継ぐかたちでツアーを実施したのも中島氏の力によるところが大きい。スピード感を重視しつつ、新たな展開も視野に入れている。