【2020年3月号掲載】

「丘珠—紋別」トライアル安全運航支える 紋別観光振興公社空港スタッフ

道の事業である「航空路線トライアル運航」による「札幌(丘珠)—紋別」のチャーター便の就航が2月1日に始まり、同23日までに8往復16便が飛ぶ。機体はJALグループのHACプロペラ機だ。日常はANA東京定期便の運航支援、旅客サービス、グランドハンドリングを行う紋別観光振興公社のスタッフが、オホーツク紋別空港におけるチャーター機の定時・安全運航を支えている。

▲丘珠空港へ向け出発する飛行機を見送るスタッフ

▲グランドハンドリングスタッフが誘導(左)と
「安全確保」のため表示板を手づくり(右)

地域活性化のため交流人口の拡大を

▲宮川良一紋別市長も
「丘珠行き」に搭乗した


▲「丘珠行き」のチケット

道のトライアル運航事業で「丘珠—紋別」間が選ばれたのは、道内未就航区間でのニーズが最も高いと判断されたためだ。道の調査によると、「札幌—紋別」の流動人数は年間96万人だとされている。

真冬の2月に実施するのは、流氷観光で紋別を訪れる外国人観光客を見込んだからだ。紋別地区の住人が札幌へ行く手段での利用も考えられるが、主に〝観光需要〟を想定している。

実態や課題を把握することで、今後の民間による事業化の検討を促すのが狙いである。その背景に存在する大義が「地域活性化」だ。北海道の航空利用者数は増加傾向にあるものの、地方空港では路線や便数は必ずしも十分ではない状況にある。「人口減」に歯止めがかからない地域は「交流人口の拡大」によって、少しでもまちを活性化させたい。そのためにも航空ネットワークの強化は必要なのだ。

今回のチャーター便で紋別はいわば「受け入れ側」となる。オホーツク紋別空港は現在、東京・羽田空港との間で1日1往復のANA定期便が就航するのみ。かつては丘珠間でも定期便が飛んでいたものの、搭乗者が少ないため廃止された経緯がある。地域の将来を見据えて「道央圏との路線復活」を望む声は多く、このトライアル事業に少なからず期待を寄せる行政や経済界の関係者もいる。

函館便に搭乗して機体の特性を把握

▲乗客の手荷物を預かる豊田由依さん(左)、
 藤原めぐみさん(右)


▲融雪剤を散布する大堀正智さん

チャーター便の就航は2月1日にスタート。23日までの土・日曜に各日1往復、合計16便が飛ぶ。機材はJALグループのHACのサーブ360B。普段は丘珠と函館、釧路などを結ぶ36人乗りのプロペラ機だ。

前述のとおり、オホーツク紋別空港はANAの東京定期便だけが離着陸しており、その運航を支えるのはANA紋別地区総代理店の紋別観光振興公社空港営業所のスタッフである。今回のチャーター便の就航にあたっては、HAC(北海道エアシステム)のスタッフも数人、就航日に紋別に出向いているが、紋別観光振興公社はANAを通して運航支援、旅客サービス、グランドハンドリングの業務を受託。同社のスタッフが「定時」「安全」運航を支えているのだ。

「〝安全第一〟を最優先に心掛け、最善の旅客サービスに全力で努めています。紋別に観光客が来られるのは、紋別にとって嬉しいことですから、良い印象を持ち帰っていただきたい」(森野祐宜男空港営業所所長)

同社は、旅客サービスやグランドハンドリングのスタッフ約10人が昨年12月に「丘珠—函館」間を飛ぶHACの同機種に一旅客として搭乗したという。機体の特性や機内環境をできるだけ把握するためだ。

万全を期すため、できる限りの準備を行う。実際に体験することで、座学や見聞ではわからなかったものが、見えてくることもある。スタッフのスキルアップにつながり、それが〝財産〟にもなる。人材教育・育成への投資は惜しまないのが民間に生まれ変わった会社の方針だ。

朝7時紋別発の都市間バスで昼前に札幌駅前に着き、丘珠に移動。HAC13時20分発の便で函館へ行き、14時35分発の便で丘珠にとんぼ返り。札幌駅前17時50分発の都市間バスに乗って、紋別着が22時10分。HACのプロペラ機に乗るために、こんな日帰りのスケジュールをこなしたスタッフも数人いた。並々ならぬプロ魂である。

このほか、空港内のANA受付カウンターに隣接して、臨時のチャーター便受付カウンターを設置。同社がボードを制作して取り付けるなど、ハードとソフトの両面で準備を整えた。

▲オホーツク紋別空港ターミナルビル(左上)
▲「受付」ボードは紋別観光振興公社が提供(左下)
▲普段はANA定期便のみ表示されている(右)

大雪の影響によるつるつる路面改善

▲トライアル運航のため
乗客にアンケートを実施

2月1日のトライアル初便の就航直前、スタッフが気を揉んだのが天候である。オホーツクに張り出した低気圧がドカ雪を降らせ、「欠航」が心配されたのだ。

実際に、前日(1月31日)と前々日(1月30日)のANA東京便は往復とも欠航。紋別市内の小中学校も30日は昼で一斉下校、31日は臨時休校の措置をとるほどの大雪だった。風が強く、視界も不良。

「数日前の予報では、1日は回復するとのことだったが、紋別着が9時15分と早いため、それまで雪がやむかどうか、とハラハラでした」(複数の関係者)

そんなわけで、スタッフの多くは早朝に出勤。滑走路の除雪は道の委託を受けた地元業者が担うため、その様子を見届けるほかないが、降雪後に除雪したエプロンは「つるつる」と表現して過言ではない状態。そのため「お客様の動線に融雪剤を撒くなどして、転倒防止対策を施しました」と大堀正智グランドハンドリング課長。同氏も「丘珠—函館」の事前搭乗に加え、チャーター便ではカーゴトラックによる荷物の積み下ろしを担うことから、HACで研修を受け、準備と安全対策に余念がなかった。

▲髙木ゆかりさんが「機内への案内」をアナウンス(左)
▲藤原めぐみさんは搭乗チェックインにも携わっていた(右)

空路所要時間45分航路復活を望む声

かくしてトライアル運航の初日、丘珠からのプロペラ機はほぼ定刻に紋別空港に着陸。30分後に紋別の旅客を乗せ、丘珠へ飛び立ったのである。

「札幌—紋別」の空路の所要時間は約45分。紋別は鉄路がないため、札幌を往復する手段は車を使う人が圧倒的に多い。「旭川—紋別」自動車道の遠軽ICが昨年12月に開通したとはいえ、紋別と旭川・札幌の往復は滝上経由で浮島ICから高規格道に入るルートが近くて早い。直結する有料の道央自動車道を利用して札幌へおよそ4時間〜4時間半という。都市間バスの直行便で4時間20分である。

これに比べ、空路の45分間はまさに「あっという間」の感覚である。スピードを求める利便性からも「道央圏との航路復活」を願う声が出ているようだ。

▲ANA定期便で活躍するカーゴトラックにより荷物が運ばれた