【2020年4月号掲載】

「丘珠―紋別」トライアル8往復16便の安全運航で期待つなぐ道央圏との路線復活

▲オホーツク紋別空港で機内へ誘導するグランドハンドリングのスタッフ

道の事業である「航空路線トライアル運航」による「札幌(丘珠)—紋別」間のHACプロペラ機を使ったチャーター便が2月1〜23日の土・日曜に就航した。厳冬・降雪期のため気象条件によっては飛行機が飛べないこともままある北海道だが、予定の8往復16便は1便も欠航や大幅な遅れはなかった。オホーツク紋別空港での運航支援、グランドハンドリング等を担った紋別観光振興公社のスタッフらが定時・安全運航を支えた。

外国人客8人でも5割超える搭乗率

▲普段はANA定期便の
旅客サービスを行うスタッフ

このトライアル運航は文字通りの実証試験だ。その結果を踏まえ、実態や課題を把握することで、今後の民間による事業化を促すのが狙い。事業を受託したJTBが結果を分析して道に報告書を提出することになるが、運航実績の速報値によると、8往復16便の販売座席数合計536(「丘珠—紋別」31・「紋別—丘珠」36)に対し、搭乗者数は295人。販売座席数に対する搭乗率は55・04%だった。

トライアルを真冬の2月に実施したのは、道央圏を訪れた外国人観光客がさらに足を伸ばし流氷観光のため紋別へ行く手段として飛行機が見込まれたからだ。

しかし、1月中旬に中国で新型コロナウイルスの感染者が発生、2月初めには日本にも感染が拡大するなどして道内への外国人旅行客は激減。今回の搭乗実績も外国人は合計8人で、当初の見込みとはまったくかけ離れた数字となり、正常時に行うトライアル運航とは異なる調査結果が予想される。

そんななかにあって、紋別および近隣町村の住民が札幌へ行くために飛行機を利用するニーズは「一定数ある」ことがうかがえた。紋別観光振興公社が地域住民向けに46席を販売し、そのうち「紋別—丘珠」間は半数以上の29席を占めていたためだ。

加えて、流氷観光ニーズは2月中旬以降に、より高まることも数値となって表れた。「丘珠—紋別」間の搭乗者157人のうち、前半(1〜9日)の4便が合計53人で、後半(15〜23日)の4便は合計104人とほぼ2倍。うち3便が「満席」もしくは「ほぼ満席」で飛んだのだ。

2月後半に3連休があったとはいえ、流氷の接岸状況も観光客の動向に大きく関連したとみられる。紋別への流氷接岸初日は平年で2月6日。大きなドリルで流氷を砕いて突き進むガリンコ号Ⅱを楽しむのも「より流氷帯に行ける可能性の高い」時期を選ぶのは観光客の心理といえる。

▲定時運航で両空港間の所要時間は約45分

HACスタッフと連携、協力できた

▲大手2社の定期便就航が実現する可能性も…

いわば「受け入れ側」となったオホーツク紋別空港で、安全運航を支えたのはANA紋別地区総代理店の紋別観光振興公社空港営業所のスタッフである。就航日ごとに札幌との間を行き来したHACのスタッフと連携、協力、コミュニケーションを取りながらトライアル運航での職務を全うした。紋別空港は羽田空港との間でANA定期便のみ就航していることから、今回の業務はANAを通じて受託したものだ。

森野祐宜男空港営業所長はこう述べる。

「ご搭乗のお客様を無事到着地まで送りだすのが最大の使命。それを果たせたのは良かった。多くのお客様にご搭乗いただけたのも嬉しいですね」

荷物の積み降ろし、飛行機とターミナルビル間の安全動線の確保を担ったのはグランドハンドリングのスタッフだ。「プロペラ周辺の安全確保にとくに気を遣いました」と大堀正智課長は振り返る。

ところで、チャーター機に乗った紋別市民が実感したのは言うまでもなく「早さ」だ。「所要時間45分。あっという間」「小型機とはいえ、乗り心地も悪くない」といった声が聞かれた。

加えて、オホーツク紋別空港は、道内空港のなかでも、市街地から近い高利便性で知られる。市役所や国の出先機関が集まる中心部から車で約10分という距離は、ANAが空港の品質を表彰するクオリティアワード快適性利便性部門で2018年度、ANAが就航する国内外67空港の中で「部門総合1位」となった要因の一つでもある。

都市間バスの「紋別—札幌駅前」間の所要時間は4時間20分。それに比べて空路は、紋別市街から札幌中心部まで1時間半前後で移動できることになる。待ち時間を含めても2時間とかからないのだ。

紋別線復活は優先識者が持論を展開

▲搭乗客の移動動線に
融雪剤を撒布

紋別では、行政や経済界関係者の中に、かつて就航していた道央圏との定期便再開に期待を寄せる声は多い。ただ、丘珠との定期便が廃止となったのは、搭乗者が少なかったからにほかならない。この先、地域の人口減はさらに進み、採算に合う搭乗者数を維持するのは容易ではない。

そんななかで、道内交通政策や交通インフラに詳しい平岡祥孝・札幌大谷大学社会学部教授は『北海道自治研究』2020年2月号巻頭の〈鋭角鈍角〉欄で「交通モビリティサービスの視点で公共交通政策を思考する」とのタイトルでこう記している。

「札幌と道内主要拠点都市を短時間で結ぶとなれば、丘珠空港を核とした航空ネットワークの充実は必要であろう。たとえば、紋別は鉄道もなく、高規格幹線道路も遠軽までしか延伸されていない。丘珠—紋別線の復活は優先されなければならないと考える。たとえ防衛省管理空港であっても、丘珠空港の高質的活用に向けて、札幌市や北海道の本気度が問われている」(一部抜粋)

トライアル運航の実績は、定期路線の復活へ向けて「前進した」とは言えないまでも、新型コロナウイルス感染拡大下で5割を超える搭乗者があったのは、期待をつなぐには十分だったといえる。

 

 

紋別観光振興公社旅行センター新ブランド「もん旅」継続PR

▲新登場の「もん旅」

新型コロナウイルス感染拡大の影響で、旅行をはじめ〝人の動き〟が大きく縮小するなか、ANA紋別地区総代理店の紋別観光振興公社旅行センターは「早め早めに手を打つ」(佐藤和也営業1課課長)と一歩先を見据えた営業展開を実践している。今年2月に立ち上げたオリジナル旅行ブランドプラン「もん旅」を継続的にPRしていく。

新型コロナ影響も「早めに次の手を」

▲紋別観光振興公社旅行センターのスタッフ

「もん旅」は、紋別観光振興公社が主催する旅行商品を早めに申し込むことによって、お得な料金で旅行を楽しめる新ブランド。「早め」というのは商品によって異なるが、おおむね出発日の2ヵ月前を指す。

例えば、「オホーツク紋別空港—羽田空港」の直行便を利用した東京フリープラン3泊4日の商品だと、通常の旅行代金がお一人5万5000円前後(2・3名1室利用の場合)のところ、2ヵ月前まで申し込むと早期割引キャンペーン価格で3000円引きとなる。

消費者にとってのメリットは「お得感」で、一方の紋別観光振興公社は販売促進につながるほか、「早め早め」にANA直行便の座席管理ができる。

佐藤氏は言う。

▲管内18市町村の情報を発信する道の駅「遠軽 森のオホーツク」でもポスターで告知

「『もん旅』って何だろう? と興味を持っていただくことから始めました。初の試みによって市場がどう動くかをリサーチする狙いもあります。同じことの繰り返しや真似事ではなく、とにかくやってみようというチャレンジでもあります」

告知は、旅行センターや市内・近隣町村の集客施設、公共施設にポスターを貼ったほか、商品のチラシにも紋別の人気キャラクター「もん太」をあしらった割引キャンペーンのマークをつけた。早速、数件の申し込みがあったものの、新型コロナウイルス感染拡大で大半はキャンセルに。

しかし、佐藤氏は「夏以降を見据えて商品を造成していく。手を打たずに推移を見守るのではなく、動いていくのが大事」ときっぱりと語っている。