北海道エア・ウォー ター株式会社

【2023年10月号掲載】

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「杜のサーモンプラント・東神楽」が今年5月稼働、エア・ウォーターグループの「陸上養殖」プロジェクト

▲今年5月に稼働した 「杜のサーモンプラント・東神楽」

 エア・ウォーター㈱(本社・大阪市)とエア・ウォーター北海道㈱(本社・札幌市)は、陸上養殖事業に参入し、上川管内東神楽町の陸上養殖プラント「杜のサーモンプラント・東神楽」が今年5月に完成、稼働を開始した。
 同グループが培ってきた技術の粋を集め、初期投資が抑えられる中小型設備で、サーモンの安定供給への貢献が期待される。

 日本の漁業は、地球温暖化や赤潮被害などで漁獲量が減少、また漁業従事者の減少や高齢化も課題になっている。
 一方、世界では人口増加に伴う需要増を背景に、輸入魚の価格が高騰。供給が不安定になる中、養殖ニーズが高まり、なかでも海水温の上昇に左右されず環境負荷が低い安定的な漁業モデルの陸上養殖が注目されている。だが、商業ベースで採算が合う養殖施設は大型設備が必要とされていた。

 その状況下で同グループは、養殖時に不可欠な酸素やエネルギー、人工海水などの技術に加え、遠隔監視や鮮度保持、食品分析などの技術を有し、これらを組み合わせることで養殖プラントの設計から設備の運転、メンテナンスまで一貫したパッケージを提供する「陸上養殖プラットフォーム」提供事業を展開。

 前述の「杜のサーモンプラント・東神楽」では、飼育水に酸素を溶かすことで成長を促進し、自然界では3~5年かかる出荷時期をおよそ2年に短縮できる。飼育魚はニジマスのほか、人工海水で飼育可能なウニなどとの複合飼育も計画。併せて養殖排水を植物が栄養として吸収するアクアポニックス(水耕栽培)を行うことで、サステナブルなフード事業にも取り組む。

 このプラントは、建物の総面積が1000平方㍍程度で初期投資が抑えられる。中小型設備でも採算が合う実証の場として高品質で美味しいサーモンを養殖する生産技術やノウハウを確立していく方針だ。
 1年後を目途に、各自治体や漁協、外食チェーン店、食品商社などにこのプラットフォームの提供を開始し、需要の高いサーモンの安定供給を通じて食料自給率の向上に貢献する考えだ。

 エア・ウォーターグループは、地域活性化や養殖事業を基軸とした農商工振興を図るため、昨年8月に東神楽町と包括連携協定を締結。同プラントで生産されたサーモンは、東神楽町でブランド化し、町内の飲食店やふるさと納税の返礼品などに活用される予定。地域の教育・研究機関とも連携し、放流や食育学習などを通じて環境保全やフードロスなどのSDGs達成に向けた取り組みも進めていく方針だ。

▲酸素供給や人工海水に加え、
アンモニア除去など様々な技術を活用

 ちなみに同グループの陸上養殖事業は、長野県松本市の「地球の恵みファーム・松本」(来年夏完成予定)でも進められ、今年秋にサーモンやバナメイエビの養殖が稼働する。
 そのほか、同グループは、陸上養殖でサーモントラウトを養殖・販売する三井物産系のFRDジャパン(本社・埼玉県)の第三者割当増資を今年7月に引き受け(50億円)、その事業にも参画している。