医療法人西さっぽろ病院
【2026年6月号掲載】

札幌・桑園地区に新病院開業
バスケットボールの経験から理想の医療を貫く整形外科医
STEP 1 転機となった米国留学
札幌市中央区の桑園地区に今年8月1日、「札幌スパインジョイントホスピタル」(56床)が開業する。
そのプロジェクトを立ち上げたのが、医療法人西さっぽろ病院の理事長であり、札幌スパインクリニックの理事長でもある整形外科医・渡邊吾一(54)である。

渡邊は小学5年からバスケットボールに励んだ。旭川の東明中では中体連で「ベスト5」に入り、旭川の選抜チームの選手に選ばれた。旭川東高を経て札幌医大に入学。大学ではバスケット部のキャプテンを務めた。
渡邊が医師を志したのも整形外科になってスポーツチームに関わる仕事がしたかったから。
大学を卒業後、大学関連病院などに勤務。転機が訪れたのは、2006年の米国留学だった。当時の整形外科は注射、湿布や薬の処方、リハビリなどが大半で、手術は片手間に行う程度だった。ところが米国では専門のスキルを持ったドクターが数多くの手術を手がけた。医師は手術で腕を磨き、患者も専門的な治療を受けていた。
晴天の霹靂だった。日本では年間数十例の手術数だったのに、こちらではドクターひとりで年間500例程をこなしていた。
「ひとつのことに特化して鍛錬を積む人に、かなうわけがない」
渡邊は、心に刻んだ。
「医師として医療を提供する以上、一流の医療を目指したい。そのためにはシステムが必要だ」
だが、周囲には米国のようなシステムがない。自分でつくるしかなかった。
そこで、渡邊は2016年に札幌スパインクリニックを開業した。
脊椎疾患に特化した専門クリニック。渡邊は明確なビジョンを掲げ、職員もその考えに賛同した。手術の際には、渡邉はスタッフや患者と一緒に提携病院に赴き、そこで執刀した。
ところが手術現場も入院施設も〝借り物〟。患者のために改善したくてもできなかった。それを実現するため、23年に渡邊は西さっぽろ病院を取得した。
渡邊にはもともと独立志向はなかった。札幌スパインの開業も西さっぽろ病院の取得も、自分が理想とする医療を追求する手段だった。
STEP 2 「お前は誰だ?」抵抗勢力に「改革」断行
渡邊が西さっぽろ病院でマネジメントと治療を開始したのが23年。それまで同院は整形外科を標榜していたが、リハビリが主で急性期の医療を行っていなかった。組織もリーダーによる統率が行われておらず、各部署が勝手気ままに動く状態だった。
渡邊が顔を出すと職員は皆、「お前、誰だ?」という雰囲気でよそ者扱い。手術や入院をやろうとすると現場サイドから「忙しくなるから止めてくれ」と言われた。
札幌スパインでは順風満帆だった渡邊は、初めて辛酸をなめた。
「生まれ変えられない以上、この組織は変わらない」
「ゼロ」からではなく「マイナス」からのスタートだった。
渡邊は「rebirth再生」を旗印に、改革を断行した。抵抗勢力は徐々に離れていき、ビジョンに賛同する職員が増えていった。
同院は老朽化が進み、渡邊が理想とする医療を実現するにはハード面で限界があった。病院取得の段階から渡邊が描いていたのが新病院の建設という一大プロジェクトだった。
病院の建設には最低でも数百坪の敷地が必要となる。候補地を見つけては他の業者に取られ、契約寸前で破棄されることもあった。ようやく桑園の現在地を確保した。
クリニックの立ち上げでも、新病院の建設でもその実現を後押ししたのが顧問や先輩をはじめとしたバスケットを通じた仲間たちだった。
STEP 3 「試合」も「医療」もチーム連携が大切
バスケットではシュートの瞬間、集中することがその成否を分ける。渡邊の整形外科医としての体力、集中力、メンタリティーはバスケットで培われた。
渡邊は大学を卒業してからも30代半ばまで自分でバスケットチームをつくり、マネジメントした。チームをつくるには「人集め」、「もの集め」が必要だ。チームが勝つためには方向づけをして訓練する。試合では「勝つ」という目標に向かって役割分担してそれぞれのポジションで協力し合う。

医療現場でも医師、看護師、放射線技師などの多職種がチームを組んでひとりの患者を治す。病院やクリニックの組織づくりも同じだ。
渡邊の人生哲学を支えているのはバスケットの経験のほかに映画『スターウォーズ』がある。主人公が泥沼から這い上がり、挫折しながらも成長していく物語だ。
「やっと、これでスタートできる」
『スターウォーズ』の宇宙船をモデルに設計された新病院を前に、渡邊はこう呟いた。
渡邊 吾一理事長/Interview
「脊椎」「関節」「骨粗しょう症」を三本柱に診療

――新病院が開業しますね。
はい。「札幌スパインジョイントホスピタル」では、脊椎と関節、骨粗しょう症を三本柱に診療します。
特に脊椎がメインになるので脊椎の手術に関わる設備を充実させることで最良の医療を提供したい。若いドクターがそこで最新の医療を学ぶために集まるでしょう。
具体的には「脊椎のナビゲーションシステム」を導入します。併せて術中での透視装置や神経の損傷がないかを術中にリアルタイムに確認できる「脊髄モニタリングシステム」も導入します。そのほか脊椎専用の手術台を設置します。
病室は広く快適にし、4人部屋、2人部屋のほかに個室を増やし、プライバシーを含めた患者さんの居住スペースを充実させます。
またスタッフが喜んで働ける環境も充実させて食堂はカフェのように広く快適にします。
――教育機関の役割も担いますか。
教育には2つの側面があって1つは医師や医療・事務スタッフからなる職員の教育。2つ目は運動器疾患を中心とした地域の啓蒙活動です。前者では理学療法・看護部に大学教授を顧問に招き、院外からの研修を受けたり、臨床研究も行います。
また学術活動にも力を入れて来年の春には全国学会「JALAS‐SLW」を当院が主催します。学術活動を通じて医師の教育に役立てられればと考えています。この4月に30代の専門医がフェローとして当院で働き、6月にはもう1人加わります。ドクターについては私自身がイニシアティブをとって学術活動と臨床活動を並行して行うことで一流の外科医を養成します。
経歴 渡邊 吾一理事長/1972年生まれ。旭川市出身。札幌医科大学卒。札幌医科大学大学院修。札幌スパインクリニックを2016年に開業。23年に西さっぽろ病院理事長に就任。26年8月、札幌スパイン・ジョイントホスピタルを開業。日本整形外科学会認定専門医、日本脊椎脊髄病学会認定脊椎脊髄外科指導医。
●医療法人西さっぽろ病院
住所/札幌市西区山の手3条2丁目5番1号
電話/011-611-6611
URL/https://nishi-sapporo.or.jp

