
■がんが光る!見える手術と光治療の最前線
「本当に、がんだけが光っているんですね!」
映像を見た瞬間、思わず声が出ました。モニターには手術中の肝臓が映し出され、近赤外線カメラに切り替わった瞬間、がんだけが緑色に光を放ち、浮かび上がったのです。
「これが北海道大学病院でも実施されている最先端の蛍光ナビゲーション手術です」
説明してくれたのは、肝臓や大腸などの手術を専門とする消化器外科Ⅰの武冨紹信医師。
近年、腹腔鏡手術やロボット支援手術が急速に普及しています。患者さんの身体への負担が少ない一方で、体の奥深くにある血管やがん、臓器の位置を正確に把握しながら手術を行うことが、これまで以上に重要になっています。
そこで活躍するのが“光”です。患者さんに特殊な蛍光色素を投与し、近赤外線カメラで観察すると、これまで肉眼では見えなかった血流やがんなどが光って浮かび上がります。
もう一つ、今泉健医師が見せてくれたのは、大腸がん手術の「腸管」の映像。肉眼では腸管の色や表面の様子は分かっても、血流までは正確に把握できません。そこで、蛍光色素を投与すると、血流が十分な部分だけが鮮やかな緑色に光り、血流が悪い部分は光りません。
消化器の手術では、切除した腸管同士をつなぎ合わせることがあります。もし、血流が悪い場所をつないでしまうと、つなぎ目がうまく治らず、感染など重大な合併症を引き起こす原因となります。光は、リスクを減らすための重要な〝道しるべ〟になっていました。

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武冨医師は「がんの手術で最も重要なのは、確実にがんを取り切ること」と強調します。光によって、がんの位置や広がりを確認しながら手術を行うことで、がんの取り残しを防ぐだけでなく、必要以上に正常な肝臓を切除せずに済みます。光がナビゲーションすることで、より安全で精度の高い手術へと進化しているのです。
現在は、消化器の血流評価や肝臓がんなどを中心に活用されていますが、米国では肺がんや卵巣がんなど、それぞれのがんを光らせる蛍光試薬の開発、認可も進んでいます。今後、日本にも導入され、応用可能ながん種がさらに増えることが期待されています。

デモンストレーションの様子
“光”を使った技術は、手術だけではありません。北大病院では、これまで治療が難しかった皮膚疾患に対する新たな光治療「IPL(インテンス・パルスド・ライト)」も始まっています。
代表的な対象疾患は「酒さ(しゅさ)」。頬の赤みや毛細血管が浮き出たり、ほてりやヒリヒリ感などを繰り返す慢性皮膚疾患で、長年悩んでいる患者さんも少なくありません。塗り薬や飲み薬だけでは十分な効果が得られないケースもあり、治療法が求められていました。
IPLは、赤みの原因となる毛細血管だけに反応し、異常に広がった血管を縮小させることで症状の改善を目指します。皮膚へのダメージを抑えて治療できることが大きな特徴です。
北大病院皮膚科の氏家英之医師は「皮膚科でも光が新しい治療の選択肢になる」と期待を寄せます。
最後にこんな言葉が心に残りました。
「私たちが目指しているのは病気を治すことだけではありません。患者さんが人目を気にせず笑顔で過ごし、その人らしい毎日を取り戻すことです」
見えなかったものを見えるようにし、治療が難しかった病気に新たな選択肢を生み出す―。〝光〟はいま、医療そのものを進化させ、患者さんがその人らしく生きることを支える技術へと進化を続けています。
■ロボット支援手術
医師が遠隔操作席(コンソール)に座り、高精度の3D画像を見ながら、ロボットのアームを動かして行う内視鏡手術。ロボットが自動で動くのではなく、医師の手の動きを忠実に再現して治療を行う。ロボットの先端には関節があり、狭い場所でも細かい作業が可能。体に小さな穴を数カ所開けるだけなので出血が少なく、術後の痛みを抑えられる。開腹手術に比べて早い回復や日常生活への復帰が期待できる。
(K)

