
■100人の関節リウマチ物語 病と共に“生きる〟ということ
「この痛み、歳のせいだと思っていた」「受診しても原因がわからなかった」
番組で実施したリウマチ患者100人へのアンケートには、そんな声が数多く寄せられました。
関節リウマチは、関節の腫れや痛みを主症状とする自己免疫疾患ですが、症状の始まりは人それぞれ。初期は他の病気と区別がつきにくく、適切な診断に至るまでに長い時間を要するケースも少なくありません。
UHB「松本裕子の病を知る〜100人の関節リウマチ物語・前編」では、アンケートを元に「診断までの道のり」に焦点を当てました。
アンケートで最も多かった初期症状は「手指や手首の腫れや痛み」。一方で「肩、膝、足指など手以外の関節」から始まるケースも珍しくありません。北海道内科リウマチ科病院最高顧問の小池隆夫先生は「変形性関節症や痛風、更年期によるこわばり、五十肩など、“年齢のせい〟と誤解してしまうこともあります」と話します。
また、症状が出てから診断されるまでの平均的な期間は「半年以上」が最多で、「2ヵ所以上の医療機関」を回り、ようやく専門医にたどり着いたという方が全体の60%を占めます。
ある女性は、足の裏側の指の付け根に痛みが走り整形外科を受診するも、医師からは「靴が合っていないのでは」と言われ、痛みを抱えて過ごしていたそうです。しかし、症状は改善せず、別の病院で血液検査を受けたところ「リウマチの可能性」を指摘され、ようやく専門医の元で確定診断がつきました。
「初期には、レントゲンなどの画像診断では異常が映らないことも多く、血液検査やエコー検査などの専門的な診療が早期発見につながります」と小池先生。自己判断せず早めに専門医に相談することが、寛解への第一歩にもなります。

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後編では「診断のその後」に迫りました。治療はこの20年で大きく進化し、かつては痛みを抑える飲み薬が主流だったのが、今では点滴や注射タイプの薬剤が登場し、炎症を抑え関節破壊や変形を防ぐことが可能に。従来より即効性のある新薬も登場し、外来で続けやすい治療も増えていると言います。
しかし、治療の選択肢が増えた一方で、アンケートでは「薬の副作用」「治療費」「効果の持続性」「薬の選択に対する不安」など、治療継続への悩みが多く見られました。小池先生は「リウマチは炎症をコントロールしながら“長く付き合わなければならない慢性疾患”」と話し、症状だけでなく、年齢や仕事、家庭環境など患者一人ひとりに合った治療を見つけていくかが大切になってきます。
25年にわたりリウマチと歩んできた重永トモ子さん(80)は、足首の痛みが全身へと広がり、寝たきり状態で精神的にも追い込まれたといいます。当時住んでいた根室から札幌への通院、装具をつけての生活、痛みを理解してもらえない孤独感…。それでも専門医との出会いや家族の支えの中で少しずつ状態が安定し、今では日常生活を取り戻しつつあります。「最近、友人と出かけたり、“声が明るくなったね”と言われるのが嬉しい」と笑顔を見せてくれました。
アンケートでは、「診断された後、不安に感じたこと」として「将来への不安」「家事・仕事への影響」など、“生活そのもの”への不安が多く挙げられました。社会とのつながりが減り、孤立感や自己否定に繋がることも。
「リウマチでも自分らしく生きるために大切にしていることは」という問いへの回答では、「無理をしない働き方」「趣味を続ける」「前向きな気持ちや笑顔を忘れない」が上位に。痛みのない日常、家事や仕事ができること、家族と出かけること―。リウマチと共に生きるというのは、日々の小さな幸せを取り戻すことなのかもしれません。
100人の関節リウマチ物語。そこにあったのは、一人ひとりが人生と向き合やい、試行錯誤しながら自分らしく生きる姿でした。
UHB「松本裕子の病を知る」は、この冬放送100回の節目を迎えます。医療の最前線を見つめ、患者の声に耳を傾けてきた歩みが、これからも多くの人の“道しるべ”となるように…“知ること”の力を信じて続けていきます。
■関節リウマチと似た症状の鑑別
関節痛は変形性関節症や痛風、更年期などでも生じるため、症状を引き起こす疾患を絞り込む「鑑別」が欠かせない。診断には血液検査に加え、滑膜の炎症や血流の異常を可視化できる関節エコーなどの画像検査も重要だ。現在使われているリウマチ分類基準では、症状のある関節数、血清所見、症状の持続期間などを点数化し、一定の点数以上を関節リウマチと診断するなど総合的に判断する。
(K)

