宮田 昌利氏/サンエス電気通信㈱社長
2025年9月号掲載

宮田 昌利氏
サンエス電気通信㈱社長
エネルギー
系統連系が弱い「再生エネ」、公共インフラとして整備すべき
電気から通信、インターネット、そして自然エネルギーを活用した再生エネルギーへと時代のニーズに応え、進化を遂げてきたサンエス電気通信㈱。
その宮田昌利社長に、再生エネが抱える問題点や北海道の経済振興への提言について語ってもらった。
「電気」「電話」から「ネット」「再生エネ」へ
――御社の沿革は。
私の祖父が、昭和22年に宮田電気を創業して浜中町で酪農の牛舎に送電線を敷設する北電の営農電化の下請けを行ったのが始まりです。
昭和33年には釧路市内に電気工事のサンエス電気を設立し、私の父もそこで働いていました。高度経済成長で電気工事の受注が伸び、昭和40年代になると企業や家庭の電話の需要で電線だけでなく、電電公社の下請けで電話線を敷設する事業へと拡大していきました。やがて父が電話線の通信事業として独立し、サンエス通信を設立しました。昭和54年にサンエス電気とサンエス通信が合併し、いまのサンエス電気通信になりました。
昭和63年に私が入社し、「これからはインターネットの時代になる」と考え、当時はインターネットの回線がなかったのでパソコン通信から始め、パソコンショップを開店しました。そしてインターネットの時代になって95年にサービスプロバイダーの「マリモインターネット」を立ち上げました。釧路でいま残っているプロバイダーは当社だけで、今年30周年を迎えますが、ありがたいことに釧路市内で500社以上が利用しています。やがて太陽光や風力などの自然エネルギーを活用した再生可能エネルギーの時代になり、当社でもいま「洋上風力発電」の事業に取り組んでいます。
このように当社は「電気」「通信」「インターネット」「エネルギー」へと事業拡大していきました。
インフラ整備の明確なビジョンを
――事業を進めるうえで課題は、ありますか。
電気では、国の施策で発電事業と送電事業を分ける「発送電分離」が行われていますが、せっかく発電しても系統の送電網が細すぎるためにつながらない。これは太陽光でも風力、地熱でも同じです。
北海道は国土面積の22%を占めていて発電事業のポテンシャルが高いのに、発電のエリアは人が住んでいないため送電網が細い。北電も収益性のないエリアに送電網は延ばさないし、太い電線網を敷設しません。いわゆる「系統連系の脆弱さ」が大きな問題です。
でも電線は生活インフラです。日本で再生可能エネルギーを推進させるであれば、電線はビジネスの産業基盤でもあります。国は、民間企業にまかせるのではなく、公共のインフラとして整備すべきです。
これはJRにも言えることだ、と思います。本来、固有のインフラで足回りの線路の更新、補修などは生活や経済活動の動線です。
いまGXをトップにファンドを創設して資金を集め、北海道から800万kwの電力を本州に供給するプロジェクトが計画されています。計画では日本海側と道東に送電網を海底テーブルで敷設します。
電線は長く敷けばロスが出るため、超電導などの技術を用いて国の予算で実現してもらいたい。生産地は北海道ですが、消費するのは本州の首都圏なのですから。
一方、インターネットの通信線は、北海道に海外から直結の太い線はありません。米国から海底ケーブルが関東圏に敷かれていてそれが全国に広がっています。いま欧州から北極海を経由して日本に海底ケーブルを敷設する計画が検討されていて、その際、アリューシャン列島から来たケーブルを北海道に分岐し道央に接続が検討されています。
私は苫小牧ではなく、釧路に持っていけばよい、と考えています。釧路は昨年12月に道東自動車道が全面開通しました。高速道路には「情報BOX」があって光ファイバーが設置されています。釧路にケーブルを敷けば、高速道路の光ファイバーで釧路だけでなく、帯広、富良野、トマムで分岐させて高速道路のネットワークで全道につながります。各地にデータセンターの可能性など、その相乗効果は大きいです。
物流で言えば、高速道路は根室や稚内にまで延びていません。函館方面も大沼で途切れています。本州とのつながりで言えば、トラックが走れる青函トンネルを早くつくるべきです。
北海道の優れたポテンシャルを発揮するためには、まずインフラの整備を行うべきです。情報もエネルギーも物流もすべてインフラです。
道はインフラ整備について明確なビジョンを持つべきだし、北海道選出の国会議員も党に関係なく、オール全党で北海道のために取り組んでほしいです。
サンエス電気通信株式会社
釧路市星が浦大通1丁目7番1号
TEL (0154)51-2924
URL http://www.sanesu.co.jp