萩原 一利氏/萩原建設工業㈱社長
2025年9月号掲載

萩原 一利氏
萩原建設工業㈱社長
建 設
「東北海道」エリアで「農業特区」の推進を
2024年問題の「働き方改革」で建設業は、大きな岐路に立たされている。また「令和の米騒動」で日本の農業政策が問われている。
農業王国・十勝で帯広建設業協会会長を務める萩原一利氏に、地域振興策について語ってもらった。
「農業」「流通」インフラ「水の利活用」を
――御社の沿革は。
当社は1918(大正8)年に創業しました。
創業者は萩原延一(当時は萩原組で、昭和24年に現社名に変更)で、2代目が萩原一男、そして私が3代目です。3代にわたって帯広建設業協会の会長を拝命させていただいています。
札幌は「官」がつくったマチなのに対し、十勝は依田勉三などの「民」がつくったマチです。また釧路は「狩猟民族」なのに対して十勝は「農耕民族」です。狩猟では狩りができなくなれば移動すればよいですが、農耕では土地を守らなくてはなりません。そのため十勝の人は、先人が100年以上にわたって開墾してきた土地を、幾多の試練を克服しながら守り抜いてきました、十勝で比較的人口減少が少ないのは、それが背景にあると思います。
昭和50年代に十勝では、農業道路が縦横無尽につくられました。十勝川温泉の近くの「十勝中央大橋」(白鳥大橋)も農業道路の関係で、道の予算でつくられました。
日本にとって十勝の農業は、きわめて重要です。現在の日本の食料自給率は、カロリーベースで38%です。これを50%にまで引き上げなくてはなりません。
そのためには「十勝」「北網」「釧根」の3つのエリアを1つの「東北海道」ととらえて、「東北海道」を「農業特区」にすべきです。先程の農業道路の整備を含め「農業インフラ」、特に北網から十勝港までの高速道路の整備を含めた「流通インフラ」、そして「水の利活用」が必要です。
北海道は日本の国土面積の22%を占めます。「十勝」「北網」「釧根」の地域を一体として「農業特区」にして国や道が農業開発していかないと、食料自給率の50%達成は難しいでしょう。
いま北海道は札幌に一極集中しています。札幌が栄えたのは、日本海を使って北前船が小樽を経由して札幌に物資を運んだ歴史にあります。
ところが全国的にみると大都市は仙台、東京、名古屋など太平洋側にあります。いまの交通網や通信網なら、北海道の太平洋側に大都市ができるのは当然でしょう。
具体的には経済や工業は「苫小牧港―千歳空港―札幌」のラインで、農業に関しては「十勝港――帯広空港―帯広」のラインをつくるべきです。帯広では、「川西IC」付近に大規模な食料備蓄基地「フードテックパーク」ができる計画です。
道は東北海道のどこかに副知事を常駐すべきです。いま十勝長いもの米国などへの輸出が盛んですが、副知事が地域の農作物や牛乳などを海外に営業するなどの柔軟な対応で、道は農業の振興に力を入れるべきです。
また建設業の使命は「地域の安心・安全を守ること」。そのためには防災・減災」が不可欠です。将来、いつ台風や地震、津波などの災害が起きるかわかりません。
太平洋沿岸に地震や津波が発生したら、内陸に位置する帯広は道東の中核都市として避難や復旧復興の拠点として大きな役割を担えるのではないか、と思います。
災害が起きてからでは遅く、国や道は復旧復興ではなく、予算を確保して防災減災のためのインフラ整備を推進していただきたいです。
「新3K」対策で若い人材の確保を
――建設業が抱える課題は。
私が帯広建設業協会の会長になった2003年は、会員数が209社でしたが、現在は120社と、半減しています。合併もありますが、多いのが廃業や倒産です。
大きな課題は、人材不足です。少子高齢化で技術者が大きく減っている一方で、若い人材が入ってきません。
かつて建設業は「きつい」「汚い」「危険」の「3K」と呼ばれていましたが、「新3K」は「給与」「希望」「休暇」です。「働き方改革」で、公共工事では「週休2日制」かつ「土・日休」が普及しました。今後民間建築でどう「週休2日制」などを普及させていくかが課題です。
人手不足でも建設業は先程述べたように防災減災の役割を担っているので、工事を減らすことはできません。海外からの人材活用のほか、省エネやIT化で効率的な業務の推進で人手不足を補う工夫をしています。そのほか、若い人に建設業に興味を持ってもらえる取り組みもしていかなければならない、と考えています。
萩原建設工業株式会社
帯広市東7条南8丁目2番地
TEL (0155)24-3030
URL https://www.hagiwara-inc.co.jp