サンエス電気通信㈱

【2026年3月号掲載】

バイオガス事業

STEP 1 フランス語での挨拶から8年後の再会

 フランス企業のNASKEOEVIRONNEMENT(フランス本社)が、バイオガス事業で北の大地に拠点を構えた。その中心人物がフェリックス(35)とギヨム(30)の若いフランス人だった。
 ふたりは道東・道北の地の標津、別海、名寄で3つのバイオガスプラントを稼働させた。その取り組みに確かな手応えと可能性を感じた道産子がいた。サンエス電気通信社長の宮田昌利(65)と上田組社長の上田修平(48)だった。

宮田昌利氏、フェリックス氏、上田修平氏
▲左から宮田昌利氏、フェリックス氏、上田修平氏

 道東でバイオガス関連の建設案件に携わっていたフェリックスが、再生可能エネルギーの地域セミナーに参加したのが8年前。声をかけたのが、宮田だった。
 初対面にもかかわらず、宮田はフランス語で「Bonjour, comment allez‐vous?」と、気軽に挨拶した。
 フランス語で挨拶する宮田の気転のよさにフェリックスは、技術や事業の前に、互いの文化と背景に歩み寄ることの大切さを教わった。

 その宮田は釧路を拠点に、電気・通信・情報分野から環境・新エネルギーへと事業領域を広げていた。
 フェリックスは、12歳から日本語を学び、沖縄での交換留学を経験した。その後、フランス南部の大学で日本語を専攻して修士課程を修了。海外技術と日本の現場、設計と運用、企業と地域。その間に立ち、調整と対話を重ねることが自分の役割だと考えた。

 フェリックスは、思った。
「日本の現場で外来技術の導入には、時間と信頼の積み上げが欠かせない。そのプロセスに伴走してくれるパートナーが必要だ」
 NASKEO本社は、フランス政府の支援を得て海外で展開することになった。同社はバイオマスを利用した発電システムを、フランスを中心に展開していた。日本向けのビジネスを調査し、酪農の供給基地である北海道から活動が始まった。

STEP 2 日本の酪農バイオマス発電へ、個別型の提案を開始

 市場を見きわめる中で、彼らが確信したのは、日本、とりわけ北海道では、個別農家に適合する小型のオンファーム型が最も現実的だという点だった。NASKEO環境は、2021年、ベルギーのBiolectricと日本での独占販売パートナーシップを開始した。

 たとえヨーロッパで稼働実績があるシステムでも、そのまま日本で動くわけではない。電気の周波数や電圧などの条件や系統への連携など、日本の条件に適応させるための推進力が必要だった。そこで加わったのが、2021年に採用されたギヨム・マイエだった。フランス人のエンジニアで、フランスの国立工学系高等教育機関で工学を学び、現在はNASKEO環境のDesign, Build, Operation Managerとして、設計から施工、運転の実装までを支えていた。

ギヨム氏
▲ギヨム氏(右)

 ちなみにオンファーム型バイオガスとは、フリーストール牛舎などから発生するふん尿を発酵槽で処理し、発生したガスを電力や熱として農場内で利用する仕組みだ。
 2023年初冬に標津と別海で2基が相次いで稼働を開始した。続く2024年には名寄で日立プラントサービスとの連携による下水処理分野の実証実験が動き出した。国内での稼働実績が重なるにつれ、NASKEO環境はさらなる体制づくりが必要だった。それは、実行と信頼を地域の中で加速させる体制だった。

STEP 3 再会から次のステップ、日仏連携の体制へ

 2025年の春、宮田とフェリックスは偶然再会した。
 相変わらず宮田は、Ça fait longtemps. Comment vas‐tu ?(久しぶり!元気だった?)と声をかけた。

 夏にNASKEOのシステムを導入した標津の中条農場の見学のあと、宮田はその農場の建設に関わりのある上田組を訪問した。社長の上田とは互いの事業協力の可能性を共有した。フランスのNASKEO本社の技術的成熟と知見を背景に持つNASKEO環境に協力して、地域の課題解決をサンエス電気通信と上田組で協力する内容の検討に入った。

 2025年秋、サンエス電気通信と上田組がNASKEO環境に資本参加し51%を取得、フランスと日本とでNASKEO環境の成長を支える体制を整えることで合意した。数カ月の対話と議論を積み重ねて、単なる投資ではなく、共同で経営に関わる決断をした。今年3月、フランス本社の代表の来日に合わせて、事業包括協定を結び、本格的に事業を展開することになった。

 宮田にとって出会いの挨拶がフランス語だったことに、運命を感じた。小さな出会いが、フランスと日本を結ぶ事業となって、北海道、日本の農業や環境の手助けになり、新しい連携が広がる可能性が生まれるのを期待した。

宮田 昌利
▲宮田 昌利氏

――北海道のバイオガスの現状と課題は。
 北海道は、国内最大規模の酪農集積地でありながら、農場レベルでのエネルギー自立と資源循環の導入は、まだ限定的な段階にあります。
 道内には5000戸規模の酪農経営が存在する一方で、バイオガス設備の導入例は集団型・個別型を合わせても100件未満にとどまっています。

――オンファーム型バイオマス発電とは。
 NASKEO環境が対象とするのは、主にふん尿を主体とする農場で、飼養頭数100頭規模から400頭超まで対応可能なオンファーム型バイオマス発電です。また複数モジュールを組み合わせることで規模拡張ができる点も特徴です。

 農場経営の中にエネルギーと環境の管理を組み込み、持続可能な生産体制を運用として定着させることが重要です。脱炭素への対応、電力と熱の自家利用によるコスト削減、ふん尿処理の安定化、作業負荷の軽減。こうした課題を一つのシステムで同時に扱える点に、オンファーム型バイオガスの意味があります。

 さらに最近では、地域の観光や移住などの推進の上で、牧草地への堆肥や液肥の散布などの臭気の問題や、大雨などでの糞尿の河川や土壌への汚染などの危惧が地域の課題の1つになっています。
 こうした課題にもそれぞれの農家を行政、農協、地域でも支援の制度などを拡充して、地域の農業を、日本全国の食料安全保障の一つとして支えていくことも今後の重要なテーマとなっていくでしょう。


宮田 昌利/1960年生まれ、子年。釧路市出身、65歳。学習院大学卒。小樽商科大学大学院商学修士。釧路根室圏まちとくらしネットワークフォーラム代表、釧路新産業創造研究会会長など公職多数。


●サンエス電気通信株式会社
住所/釧路市星が浦大通1丁目7番1号
電話/0154-51-2924
URL/https://www.sanesu.co.jp/