㈱ホームエージェント

【2026年3月号掲載】

不動産管理・飲食・広告

STEP 1 二度と飲食店なんかやるものか

動画広告
▲動画広告

 幼少期は成績優秀だった中川。中学生の頃、父親の転勤で立川市に住んだ。東京でも治安が悪いことで知られ、勉強そっちのけで遊びを覚えた。

 セールスマンとして社会人の第一歩を歩んだが、夜の商売をやっていた先輩から誘われた。
「金持ちになりたいのなら、水商売が一番の近道だよ」
 その一言で、19歳で夜の世界に飛び込んだ。東京でバーを経営、昼はアパレルのバイヤーもやった。だが、当時の中川は経営知識が乏しく、バーは1年で閉店を余儀なくされた。

 中川は、心に誓った。
「二度と飲食店経営なんか、やるものか」
 無職となり、放浪の旅に出た。行先は札幌すすきの。真っ先にオークラビル(南5西2)の「赤門倶楽部」に客として入店した。東京・赤坂見附に同じ店名の店があったからだ。

 店内は広く、女の子も新鮮で、北海道弁がかわいらしく感じた。
「さすが全国屈指の歓楽街だな」
 だが、中川にとってすすきのは遊ぶ場所であって、働く場所ではなかった。東京での飲食店経営の失敗があったからだ。

STEP 2 やりたがらない仕事にチャンスあり!

 そんな中川を変えたのは、ネオン街の華やかさだった。
「東京でのキャリアを生かしたい。経営者ではなく、組織の一員であればできる。すすきので物を売りたい」
 中川が選んだのは、カラオケ業者だった。

 東京育ちで新参者の中川は「土地勘がない」「人脈がない」。ゼロからの構築だった。
 営業は飛び込み。1日最低40件回った。ターゲットを絞り、何度も戦略を変えた。
「もう来るな、と言ったじゃない!」──。日を決めて〝怒られる店〟だけを回ることもあった。
「また来た!」。断り続けると愛着がわき、人間関係が深くなる。そういう店はクセが強く、誰も近づかないから競合他社も攻めてこない。これも中川の戦略だった。一度取引が成立すると長く続いた。

 カラオケ業者は、夜10時が定時で帰るが、中川は朝5時まで働いた。
「(機器の故障で)どうしてくれるんだ。営業補償できるのか!」
 クレームの電話にも即座に対応した。
「自分には人脈がない。クレームを解決すれば人間関係が深まる」

〝雨降って地固まる〟で顧客との間に信頼が生まれ、新規の店を紹介された。
「『面倒くさい』『苦手』『無理』。皆がやりたがらないマイナス要素の仕事にチャンスがある」
 中川は、そう思った。
 自腹を切ってニュークラにも飲みに行き、売上ナンバーワンの子の話を聞いた。看板嬢には独立の目標がある。独立の際には営業につなげた。

 その一方で「顧客管理」にも力を入れた。顧客リストは300~500店舗。すすきのに3000軒あると言われる飲食店数の2割を占めた。「入金状況」や「紹介率」「(機器の)故障率」を管理し、それがのちの㈱ホームエージェントで不動産管理の礎となった。
 中川は入社数ヵ月で、社内売上ナンバーワンのトップセールスマンになった。

STEP 3 掛け算&引き算の経営方程式

 その後、不動産管理会社勤務を経て独立。2015年2月に不動産管理の㈱ホームエージェントを設立した。
「第1・2Gビル」や「TMビル」など26棟を管理。飲食ではすすきのに焼肉「天竺」や喫茶「ひかり」、ガールズバー「hana hana」、新さっぽろに韓国グルメ「食べスタグリル」の4店舗を運営。

看板広告
▲看板広告

 看板広告はすすきの駅前通り、5条通り、6条通りのメイン通りに同社の看板広告を約60ヵ所設置した。人目に付きやすい動画広告についてはコンテンツの制作も手がけた。
「不動産×飲食&広告」が基本戦略で、掛け算による相乗効果で不動産の商品価値を高めるのが狙いだった。

 中川が経営する飲食店は、ユニークな店が多い。昼・夜で業態を変える店や花魁コンセプトの店がそれだ。だが、流行は熱しやすく、冷めやすい。流行のなかに堅実な定番メニューを組み込むのが、中川流の真骨頂。それでも難しい場合には、勇気ある撤退も考える。
 中川の経営哲学には、常に〝掛け算〟と〝引き算〟の方程式があるのだ。

ホームエージェント 中川紀仁社長
▲中川 紀仁氏

――人間に対する洞察力に優れていますね。
 人間に関しては、常に関心があります。特にトップの成績の人については関心が強いです。
 ニュークラに飲みに行ってもナンバーワンの成績の子が何を考えているのか、興味があります。どんな業種でもトップの成績を収めるには独自のノウハウがあるものです。その人の目標や生い立ちを知り、グラスを片手に、次に何を話すのか、予想しながら会話するのも面白い。

 私は足で稼ぐ営業をしてきましたが、いまはアナログだけでは集客は見込めません。そこでSNSを中心にデジタルによる集客に力を入れています。ただしSNSや看板、動画などの広告は重要ですが、あくまでも集客のツールに過ぎません。最終的には人間力が決め手になります。人間力を磨くため、接客などの社員教育に力を入れています。

――中川社長にとって、すすきのとは、どういうマチですか。
 すすきのは、そこで長年にわたって働いてきた方が中心となって支えてきたマチだと思います。その良き伝統を尊重しながらもこれからは若い人が支えていくマチになって欲しいです。

 すすきのは私のような新参者でも受け容れてくれる寛容性があるマチです。若い飲食店経営者が輩出するマチになるよう、若い方にアプローチしてハコ(飲食店ビル)を提供していく役割を担いたい。
 歓楽街に足を運ぶ人は、刺激を求めます。治安を維持しつつ、もっと刺激のあるマチになって欲しいですね。安全かつ刺激のあるネオン街であって欲しいと思います。


中川 紀仁社長/1977年生まれの48歳。東京都出身。東京都立立川第六中学校卒。㈱ホームエージェントにて総合的な不動産運営、広告事業を行う。2015年2月、同社設立、代表取締役に就任。


●株式会社ホームエージェント
住所/札幌市中央区南5条西3丁目 Nグランデビル6F
電話/011-596-8539
URL/https://homeagent.co.jp/