㈱ふかざわ青果

【2026年3月号掲載】

すすきの「飲食店向け」デリバリー

STEP 1 すすきの市場で野菜を配達

 深澤は小学生のころは水泳、バスケ、野球と、スポーツ少年だった。体育の授業での「キックベースボール」(ボールを蹴る野球)では、チームのキャプテン。メンバーの多くは球技が下手でも深澤のチームは全戦全勝だった。
「球が飛ばない所に、女子を配置しろ」「足が速いヤツは、チョン蹴りだ」「下手な相手に向かって蹴ろ」
 深澤の采配がズバリ当たって〝戦うところ敵なし〟だった。

「うだつが上がらぬ社員でも長所を生かす采配を行えば、組織は勝てる。それが上に立つ者の責務だ!」
 のちに、その体験が、深澤の経営哲学となった。

 深澤は生まれた時から野菜と縁があった。祖父の照八郎は、すすきの市場で八百屋を始め、その後はスーパーに転身、スーパー「札幌丸正」を経営する札幌丸正チェーン商事㈱の会長だった。
 18歳で父の進が経営する札幌丸正で働き始めたが、大手スーパー進出の煽りを受けて1年後に閉店。「八百屋をやれ」と父に言われて20歳で兄と八百屋㈱フカザワを設立した。

祖父
▲祖父は札幌丸正チェーン商事の会長だった
父
▲父と一緒の幼少・深澤社長

 当時スーパーの構成比別売上げでは、1位が八百屋で、2位が肉屋、3位が魚屋だった。だが、フカザワの年商は8000万円で、2年連続赤字だった。
「ほかの八百屋は、どうなのか?」
 店頭に並べられた商品の値札を見ると、自分の店より安かった。
「なんで、安く出せるんだ」

 店先には安売り商品が並べられる。生まれつき商才があった深澤は、その値段を見ただけで店の仕入れ値や利益が推測できた。
「ようし、それを下回る値段で売ってやろう」
 やがて深澤は自分の会社をつくり、28歳で独立。いまの深澤青果をオープンさせた。
「格好つけてやるぞ!」

 陳列も、がらっと変えた。色合いを考えながら「安いものは前に、高いものは隠す」ことで、高いイメージを払拭した。品揃えも豊かにした。高級料理店が使うようなハーブ野菜や刺身のつまの花野菜などスーパーではできないラインナップにこだわった。
 深澤は、頷いた。
「遊園地のような八百屋にしたいな」

STEP 2 八百屋やりたい人は誰もいない

〝格好〟つけは、仕入れでも行った。
 仲卸や問屋はまとめて購入する数量が多ければ多い程安く売ってもらえる。一方、購入側はまとめ買いしても売れなければ損失になる。野菜の場合、生ものなので日持ちしない。卸業者も売れ残るとロスになるから、購入ロットが大きい客は上客と見做される。

 朝はたくさん買って仲卸に「すげぇな」と思わせ、昼は安く売って客に「すげぇな」と思わせる。仲卸には「あれだけ仕入れるのだから、深澤青果は繁盛している」、客からは「あれだけ品揃えが多いのだから人気店だ」と思わせる。

 当然、在庫が増え、廃棄した商品は山ほど出るが、深澤はこらえた。
「売れない野菜でも、札幌一安く売っていれば売れる!」
 やがて「深澤青果は安い」という口コミが広がり、店頭に主婦たちが群がった。

スタッフ
▲深澤青果店舗前で

 深澤は社内では、インセンティブ制を導入した。年収は店長クラスで800万円~1250万円、20代で650万円の社員もいる。
「好き好んで八百屋をやりたい人なんか、誰もいない」

 深澤自身、25歳までは八百屋という職業を隠していた。なぜなら八百屋という職業を格好よく思えなかったからだ。ポルシェやフェラリーを購入した。格好よいと思われる職業にしたかった。
「頑張れば、八百屋だってフェラリーを買えるんだ」
 深澤は若い社員に、そう言った。社員の目が輝いた。

STEP 3 すすきので野菜のデリバリー

 ところで深澤青果は白石区菊水に新会社の㈱富喜を設立。富喜を拠点にデリバリーも開始した。エリアは中央区の札幌駅とすすきの。
 深澤にとってすすきのは、尊敬する祖父・照八郎がすすきの市場で八百屋を始め、飲食店に野菜を納品した歴史がある。いわば、すすきのは深澤にとってルーツであり、深澤青果の原点だった。

 デリバリーが実際にスタートしたのが、昨年の4月。取引先は500件に及ぶ。
 このデリバリーは通常の業者より2~3割安い価格で野菜や果物を購入することができ、飲食店経営者は食材コストを抑えることができた。

「おじいちゃん、帰ってきたぜ!」
 深澤の夢は、果てない…。

深澤 栄治社長
▲深澤 栄治氏

――深澤社長の人生哲学は。
 野菜も商売も、格好よくないと売れません。うちの会社で働いている社員だって最初は八百屋で働きたいとは思っていません。ただ他の会社より給料が高いから働きたいとか、いい車に乗りたいからだとか、いい格好したいからとか。僕は、それでよい、と思っています。自分を格好よくすることから始めればよいんです。

 たとえば、店の売り場や陳列、商品を格好よくすれば売れます。そしてそのやり方を、部下に伝えなければいけません。そうすれば部下が格好良くなって、巡り巡って自分に返ってきます。
自分が格好よくなって、次は他人を格好よくする。それが自分をさらに格好よくする。そして最後に会社が格好良くなればいい。

――社長業とは。
 社長業は、チームをつくって相手に勝つこと。野球に喩えるとわかりやすい。小さくて弱いチーム(中小企業)がどう大リーグのチーム(大企業)に勝つかを考えること。社長はそのチームの監督ですね。

――深澤社長にとって、八百屋とは。
 八百屋は先祖が残してくれた道筋みたいなもの。祖父や父から受け継がれてきたものです。
 僕は、たまたま八百屋という道筋があったから、それを究めなければならないと思ってやっているわけで、八百屋にはこだわりません。どの業種でも同じです。

 仮に僕が不動産や建築に身を置いたとしても、負けない自信はあるし、必ずその業界で一番になる自信があります。
 今ある職業で一つのことを追求できない人は、どの業種に行っても同じでしょう。


深澤 栄治社長/1988年生まれの37歳。札幌市出身。2008年5月に㈱フカザワを、2016年6月に深澤青果を創業。16年7月の深澤青果「本店」(札幌市白石区南郷通19丁目)を皮切りに、現在札幌市内および千歳市に6店舗を展開する。


株式会社ふかざわ青果
住所/札幌市白石区本郷通4丁目北7-15(深澤青果「本郷市場店」)
電話/011-826-4139
URL/https://fukazawaseika.com/