Co株式会社

【2026年3月号掲載】

「快傑!モリッケ」システム

STEP 1 そんなことしないで車を売って来い!

 石井は幼少の頃から機械いじりが好きだった。家でトランジスタラジオなどを分解しては、よく父に叱られた。自動車整備の専門学校を卒業して、大手自動車メーカーに整備士として勤務した。店長から「お前の周りに人が集まるから、営業向きだ」と言われた。石井は、営業部門に配属された。
 話すのが苦手だったが、ホテルで半ば缶詰め状態で3ヵ月間トークを練習、接客の全道大会で優勝した。

 石井は気立ての良さから、客から相談されると無償で車を点検、修理した。
「そんなことしてないで、車を売って来い!」店長に怒鳴られた。「顧客との信頼関係が車の販売につながる」と、石井は説明したが、聞き入れられなかった。

 会社との軋轢が深まり、転職を考えていた矢先、妻がこう言った。
「高齢者が食事に困っているようだよ。人を助ける仕事、やってみない?」
 東京の説明会に参加し、食材を冷蔵真空パックにして販売する業者に出会った。試食で妻と顔を見合わせた。
「美味しい!これならおじいちゃん、おばあちゃんも喜んでくれる」

STEP 2 「無理、ムリ!」と門前払い

 妻と会社を設立して、その業者のフランチャイズに加盟して、弁当の配食サービスを始めた。石井は顧客獲得のため、地図を片手に日夜、がむしゃらに営業に勤しんだ。旭川や滝川で一軒一軒DMを配り、夜ポスティングした高齢者施設に翌日、訪問営業した。1日30軒の訪問営業が6、7年続いた。

「他で調理したものなんて、食べさせるわけにいかない」。門前払いされた。当然、弁当は売れなかった。
「売れなくて困っています」と頼んでも、「無理、ムリ!」の1点張りだった。

厨房
▲厨房

 営業に嫌気がさした。営業を避けて弁当の盛り付け作業に逃げた。そんな石井を支えたのが、妻の一言だった。
「営業に行かないと弁当、増えないよ」「真剣でないから人に伝わらないんじゃない?」
 ふと、自動車販売の記憶が脳裏をよぎった。
「そうだ。俺は人助けが好きなんだ」

 訪問先の高齢者の自宅で家の電球を交換したり、カーテンを開ける手伝いをした。最初は無口で遠慮がちだった高齢者も会話を重ねるうち「ゴミ出して欲しいんだよね」と用事を頼むようになった。些細なことだが、口コミで売り上げが急増した。
 「やはり、俺の考えは間違いではなかった」
 石井は、ほくそ笑んだ。
 その後は砂川、滝川、深川、妹背牛、秩父別、上砂川で市や町の委託による行政配食も手がけた。

STEP 3 温かい食事で利用者も職員も笑顔

 やがてFC本部からの提案で、施設給食を専門に扱うようになった。当時は真空パック食材をお湯で温める方法(湯せん)だった。だが、盛り付けの間に、食材が冷めた。

 石井は温風式再加熱器も試みたが、専用の食器が必要で乾燥しやすく手間もかかった。試行錯誤の末、FC本部がリヒートウォーマー(ニチワ電機製)を導入した。

「快傑!モリッケ」システム
▲「快傑!モリッケ」システム

 真空パック食材を「器に盛り付ける」「器ごとリヒートウォーマーに入れてスタートボタンを押す」「出来上がった料理を配膳する」の3つのステップ。通常50食分は、3、4人の人手がかかるが、1人で50食分の温かい食事を1時間で提供することができた。たとえば昼食では、朝食を提供した後、真空パックから食材を取り出して盛り付け、タイマーを押すと、昼の時間に自動的に出来上がった。

「これだと、利用者は作り立てのような温かい食事を楽しむことができる。施設側も人材不足の中、厨房の仕事にかかりっきりにならずに他の仕事に従事できる」
 石井は、頷いた。

 真空パックの食材は、石井が開発した。北海道ならではの食材や味付けにこだわった。献立は管理栄養士の北海道文教大学の松本洋子准教授に監修してもらい、栄養のバランスがよく、美味しく、健康的な食事が実現した。試行錯誤の末、調理法や加熱を調整、10年かけてレシピを作った。レシピの数は800以上に及んだ。
 こうして「快傑!モリッケ」のシステムが出来上がった。朝昼夕3食で864円(税込み)。食材の価格高騰の中、この安さだ。

 やがて需要が増え、会社も成長した。2023年4月に独立。
 セントラルキッチン(工場)は、仙台と滝川のほか、26年2月に札幌にも開設した(仙台工場と札幌厚別工場は共同事業)。取引先は現在、滝川の工場で22施設、仙台の工場で6施設。今後は少ない人員で1000食をつくるノウハウを提供するコンサルタント業も計画している。

Co 石井則好社長
▲石井 則好氏

――会社経営で、最も大切にしていることは。
 事業を始めたのは「人助けをしたい」という純粋な気持ちからでした。それが口コミで伝わり、結果的に事業を支えてくれたのだと思います。
 不思議なことに、自分の目先の利益ばかりを追求するとうまく行きません。どんなに「売れなくて困っています」と頼んでも世間は「無理、ムリ!」と言って相手にしてくれません。それは私が体験したことです。

 逆に相手の利益を考えて行動すると、それが巡り巡って自分に返ってきて利益を得ることができます。自動車メーカー勤務時代、人助けによって「顧客との信頼関係が車の販売につながる」と思ったことは、けっして間違っていなかったと確信しています。「情けは人の為ならず」と言いますが、まさにその通りだと思います。

――逆境の時に教わったことは。
 営業がうまくいかず、毎月赤字続きだった頃、FC本部から入金の催促があっても怖くて電話に出られませんでした。
 その時、本部のオーナーが「電話に出ろ。お金を払えないなら、きちんと話をして事情を説明しろ」と言いました。謝って説明するとオーナーは自ら支払先に頭を下げて支払いを猶予してもらうように頼んでくれました。そしていろいろな助言をしていただきました。私にとってそのオーナーは人生の恩師です。

 おじいちゃん、おばあちゃんたちに心もからだも〝あったかい〟食事を届けることで笑顔になってもらうこと。
 これが会社の基本理念です。


石井 則好社長/1971年生まれの54歳。砂川市出身。赤門自動車整備専門学校(仙台市)卒。大手自動車メーカー勤務を経て、2007年3月にCo㈱を設立。


●Co株式会社
住所/滝川市泉町1丁目14番30号
電話/0125-51-4355
URL/https://genkitchen.net/index.html