内澤 博昭氏/函館バス㈱社長
2025年9月号掲載

内澤 博昭氏
函館バス㈱社長
バス旅客輸送
地域住民の交通ニーズに応え、外国人運転手の採用にも着手
昨年、創業80周年を迎えた函館バスは、戦時下の事業者統合で誕生した函館乗合自動車を前身としている。1951(昭和26)年に現社名に改称し、57年に東急グループに入り、2003(平成15)年に脱退した。地域住民の“足”として渡島半島全域をエリアとし、一方で、函館山や五稜郭公園などを訪れる国内外の観光客にとって不可欠な交通手段となっている。
交通系ICカードで全国相互利用のメリット
――内澤社長は今年6月に専務から就任されました。勤務歴で思い出深いことはありますか。
2002(平成14)年の入社で、東急グループでの最後の年であると同時に、函館市営バス全路線の移管を受けた転換期にあたります。3ヵ年計画のもと、どう効率化を図るか、統合後のダイヤ編成を含めて、変革していく中での仕事に携わりました。また、バスに車載器を搭載し、位置情報などを把握する最新のバスロケーションシステムの導入、運用も担当しました。
――一貫してバス事業部でキャリアを重ねてきました。労務管理の仕事も多かったのでは。
多くのバス会社に見られるように、函館バスにも闘争の歴史があります。労働組合の考え方と経営をどうすり合わせていくか、多岐にわたり経験を積み、学んだことは多かったと思います。
――交通系ICカード「イカすニモカ」の導入も大きな変革でしたね。

キャッシュレスによって、運賃の現金授受や両替作業など乗務員(運転手)の負担が軽減されます。合わせて降車にかかる時間が短縮されるため、遅延の緩和につながるメリットがあります。
一方で、観光都市・函館として国内外から来られるお客様のニーズに応えていかなくてはなりません。全国相互のカード利用実績も踏まえて、福岡に本部を置く西鉄グループの「ニモカ」と提携し、「イカすニモカ」としてのサービスを2017(平成29)年に始めました。対象となる全国の鉄道・バスで利用できるほか、函館市電との乗継割引やポイントサービスの実施など、お得にご利用いただいています。
パートナーとなった西鉄さんとも良好な関係性が構築でき、交流や情報交換・情報共有などの面も大きなメリットになっています。
――渡島半島全体が営業エリアです。渡島・檜山管内にまたがり、函館と瀬棚を結ぶ区間は141㌔㍍と道内路線の中では屈指の長さです。地域住民の“足”としてどんな心構えをお持ちですか。
2市15町、面積は約6700平方㌔㍍。東京都と埼玉県を合わせた面積より広いのですが、人口は圧倒的に少ない。この先、人口減はさらに進むと予測されます。そうした中でのバス事業は「ただお客様を目的地に運ぶ」のではなく、自治体や住民の方がどのような交通体系を望まれるのか、私たちが作ったダイヤに基づきお乗りいただくというよりも、その地域のニーズに合った交通としてどういった役割を果たすべきなのか、を考えていかなくてはならないと思っています。
――函館は国内有数の観光都市でもあります。観光事業についてどうお考えですか。
あくまで地域交通をメインとしているため、今は率先して観光路線を拡大していくとか、観光に特化したことは考えていません。それよりもハイブリッド(組み合わせ)を重視し、生活路線にどうやって観光のお客様に乗っていただくか、を探求していきたい。市街地や湯の川温泉、函館山や五稜郭公園などを結ぶ現存の路線の堅持とともに利便性を高めていきます。
人事面のさらなる強化で安全性の徹底図る
――バス事業は、なによりも安全性が重視されます。どういった取り組みをされていますか。
一例を挙げると人事面です。8年前、北海道警察に長く勤務された方を迎え入れ、安全指導や安全対策に力を入れてきました。今年4月には、さらにもう一人、OBの方に入社していただき、一層の強化を図っています。
――近年は、運転手の高齢化や人材不足が深刻化しています。
道が主体となって、地区バス協会とともに合同就職相談会を催しており、道内の中では比較的高い採用実績があります。
今後の取り組みとして重きを置くのは、外国人の採用です。関東圏では外国人の運転手が見られ始めていますが、それは数年前から準備を始めて免許取得や徹底した安全指導を経て実現したものです。当社もまずはそこから始めたいと考えています。
函館バス株式会社
函館市高盛町10-1
TEL (0138)54-4471
URL http://www.hakobus.co.jp