村山 文彦氏/㈱北日本オートバックス社長

2025年9月号掲載

(むらやま ふみひこ)1953年12月7日生まれ、巳年。函館市出身、71歳。大阪芸術大学卒。76年芸能事務所の渡辺プロダクション入社。独立後89年オフィスJMC設立。北海道に戻り、96年和田商会入社。2002年北日本オート用品社長、17年北日本オートバックス社長に就任。

村山 文彦氏

㈱北日本オートバックス社長

昭和時代のカー用品販売

昭和初期の移動手段は「自転車」。物流が発達しておらず、戦後の初期まで自転車やオートバイの部品の買い付けのために、東京まで足を運んだ。

 カー用品販売大手の「オートバックス」。その北海道の経営主体である㈱北日本オートバックスの歩みは、業界の歴史でもある。
 その舵取りを担う村山文彦社長に昭和初期、戦後、そして現在の取り組み、さらには次世代エネルギーなどの展望について語ってもらった。

――昭和初期から現在に至るまでの経緯は。

 当社の歴史を振り返ると①「自転車」②「オートバイ」③「自動車」④「それに関わる部品・用品」の順に事業展開しました。
 1923(大12)年6月に和田自転車商店として創業しました。48(昭23)年8月に自転車の卸売業を始め、53(昭28)年に本田技研工業㈱と取引きを開始し、㈱和田商会に社名変更しました。
 戦前の昭和初期の移動手段は自転車で、その小売りをやっていました。戦後、モノがない時代に入り、リュックを背負って東京まで自転車やオートバイの部品を買い付けに行きました。それが卸売業の始まりです。そしてホンダと交流を深め、ホンダのオートバイを扱うようになりました。そこでホンダのオートバイを販売する北日本ホンダ販売㈱という会社を57(昭32)年に設立しました。67(昭42)年10月にはそのサービス部門を独立させて、北央ホンダモーター㈱を設立してホンダの自動車の販売を始めました。これが現在の㈱ホンダカーズ札幌中央の前身です。76(昭51)年3月に北日本ホンダ販売㈱の部品部として「オートバックス月寒店」をオープンしました。これがオートバックス事業の始まりです。

 この段階で北日本ホンダ販売㈱はホンダ専属になったので自転車とオートバックスの部門は㈱和田商会に譲渡しました。88(昭63)年に㈱和田商会は北日本ホンダ販売㈱と吸収合併し、自転車は㈱和田商会に残し、オートバックスの方は独立させて89(平元)年10月に㈱北日本オート用品という会社を設立しました。

 これまでオートバックス事業は、㈱オートバックスセブンのエリアドミナントとしてやっていたのですが、㈱オートバックスセブンが97(平9)年に㈱オートハローズを子会社化して、02(平15)年には当社でも「オートバックス」と「ハローズ」の店舗が共存する時代がありました。そして17(平29)年に㈱北日本オート用品が㈱オートバックス北海道の全株を譲り受けて子会社化し、9月に両社を合併させて社名は現在の㈱北日本オートバックスに変更し、現在に至っています。
 一方、㈱和田商会については、土地・建物の資産を有する親会社的な意味合いを持っています。小売りでは「オートバックス」と自転車の「サイクルプラザ」の2本立てです。

――現在、取り組んでいることは。

 小売店の宿命ですが、時代に合わせてリニューアルしていかなければなりません。今年も7月に札幌市内の「北47条店」がリニューアルしました。
 ネット販売も引き続き力を入れていきます。当社の「カーズ」の自動車の販売では、1000万円以上の車が大方、Web販売で売れています。ただ車の部品には、実際に店舗で取り付けなければならないものがあります。ですからリアル店舗の必要性は絶対に無くなりません。
 当社のキャッチフレーズの「クルマのことならオートバックス」は、安全・安心を含めて信頼を売るということ。整備やサービス、車検などはたとえ電気自動車の社会になろうが、絶対に残りますね。

――将来の展望は。

 私は自動車がすべてEV車になるとは思っていません。いまのエンジンは「レシプロエンジン」というガソリンを使って動かすエンジンです。それが世界に10億台あると言われています。その技術に携わる企業や部品メーカーの数を合わせると膨大な数になります。エンジンから電気モーターに変えることでこれらをすべて無くすことは現実的な話ではありません。
 そこで理想的なのは、電気モーターで動くものの、その電気をつくるのをエンジンにすること。エンジンに使う燃料はガソリンでなくて大気汚染しない水素やアンモニア(e‐fuel)を化学反応させてその燃焼でエンジンを動かして電気をつくればいい。アンモニアでは生成のためにCO2が必要で、CO2削減にもなります。すでにこの研究や実証実験が行われています。私は「水素エネルギー研究会」という全国組織の副会長を務め、次世代エネルギーについて情報収集しています。
 当社の社是は「みんなで 明るく 楽しい毎日」。熱い想いで『気』に満ち溢れた夢のある企業を目指して!」というのが根本です。これからも将来に向け、チャレンジしていくつもりです。


株式会社北日本オートバックス

札幌市豊平区月寒東1条17丁目1-55
URL https://kitanihon-autobacs.com