
■「夫のこと…」から見えてきた〝男性更年期〟という課題
「夫のことなんですが、最近なんだか元気がなくて…男性にも更年期ってあるんですか?」
毎年3月に開催しているHAPPY WOMAN FESTAや、女性の健康セミナーで、ここ数年、必ずと言っていいほど寄せられる質問です。女性の更年期については社会的な認知が少しずつ進み「更年期」という言葉自体も身近なものになってきました。一方で男性の更年期となると言葉は知っていても、具体的な症状や対処法、受診先まで理解している人はまだ多くありません。
女性の場合は「閉経」という明確な目安があり、その前後5年、合わせて約10年間を更年期と捉えます。しかし男性には、このようなはっきりとした区切りがありません。そのため、いつからが更年期なのか分かりにくく、気が付かないまま不調を抱えているケースも少なくないのです。
男性更年期は、医学的には「加齢男性性腺機能低下症候群(LOH症候群)」と呼ばれます。背景にあるのは、男性ホルモン「テストステロン」の低下です。テストステロンは20歳頃をピークに徐々に減少し、加齢だけでなく、ストレスや睡眠不足、肥満といった生活習慣の影響も受けます。
このホルモンは、筋肉量の維持や内臓脂肪の抑制、認知機能、さらには意欲や気分の安定など、心身の幅広い機能に関わっているため、低下すると全身の倦怠感、やる気や集中力の低下、不眠、イライラ、抑うつ気分といった症状が現れます。さらに、性欲の低下や勃起障害(ED)、早朝勃起の減少なども特徴的です。
問題は、これらが「年齢のせい」「仕事が忙しくて疲れているだけ」と見過ごされやすいこと。しかし、テストステロンの低下は、サルコペニア(筋肉量の減少)や内臓脂肪の増加、さらには動脈硬化、糖尿病、メタボリック症候群といった生活習慣病とも深く関係しています。男性更年期は単なる不調ではなく、健康寿命にも関わる重要なサインといえるのです。

* * *
診断には、症状の評価に加えて血液検査でテストステロン値を測定します。「AMSスコア」という自己評価指標も用いられますが、数値だけでなく症状を含めた総合的な判断が必要です。意外と知らない受診先は、泌尿器科やメンズヘルス外来が中心となります。
また、ここで重要なのは「本当に更年期なのか」を見極めることです。倦怠感や気分の落ち込みの背景には、うつ病や甲状腺疾患、生活習慣病など、別の病気が潜んでいることもあります。「更年期だから」と自己判断せず、医療機関で相談することが大切です。
治療の一つとして、テストステロン補充療法があります。注射や外用薬によりホルモンを補うことで、筋力や代謝の改善、気分の安定、性機能の向上などが期待されます。ただし、副作用や持病との兼ね合いもあるため、医師の管理のもとで慎重に行う必要があります。
健康セミナーなどの現場で感じるのは、「本人よりも周囲が先に気づく」ケースが多いということです。妻や同僚が「何かおかしい」と感じている一方で、本人は気づいていない、あるいは認めたがらない…そこに男性更年期の難しさがあります。
男性更年期は、特別な人の問題ではありません。誰にでも起こり得る変化であり、向き合うことで改善が期待できる状態です。
「なんとなく不調」をそのままにしないこと。そして、男性も女性も「お互い様」。
更年期は人生の中で誰もが通る変化だからこそ、お互いの不調を理解し、思いやることが、これからの時代の健康を支え、人生の質を守る第一歩になるのではないでしょうか。
早いもので来年で5回目を迎えるHAPPY WOMAN FESTA。目指しているのは、女性だけが輝く社会ではありません。男性も女性も、ともに自分らしく生きられる社会へ…合言葉は「HAPPY HUMAN」!
■テストステロンの増加法
男性ホルモンであるテストステロンの分泌を高めるには、有酸素運動と筋力トレーニングをバランスよく組み合わせる。有酸素運動はウォーキング、ジョギング、サイクリングなどがあり、心肺機能の向上やストレス軽減にも役立つ。筋トレは下半身の筋肉を使う「スクワット」や「デッドリフト」などの全身運動が効果的。テストステロンは睡眠中に分泌が高まり、起床時に最も高くなるため慢性的な睡眠不足は低下の要因になる。
(K)

