
■ どんな検査をすればいいの?関節リウマチ診断Q&A
「関節が変形した手に絵筆を縛りつけて、カンバスに向かう老夫」の写真。毎年、道内各地で開催されている市民健康講座で、小池隆夫先生(北海道内科リウマチ科病院最高顧問)が見せてくれる一枚です。
その老夫とは、フランスの印象派を代表する画家ルノワール。温かい色彩と柔らかな筆致は、今なお多くの人々を魅了し続けていますが、晩年は「関節リウマチ」による激しい手指の痛み、変形との闘いだったと言います。
関節に炎症が起きて痛みや腫れが生じ、進行すると変形してしまう関節リウマチ。残念ながら関節が一度壊れてしまうと、元に戻ることはありません。
しかし、ルノワールの時代から100年以上が経過した現代では、関節が破壊される前に、リウマチを早期発見・診断することが可能になりました。
UHB「松本裕子の病を知る」、新シリーズ「教えて小池先生!リウマチのホント」2回目では「リウマチ診断」の市民からの疑問について徹底解説していただきました。

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疑問①手首から手全体の関節痛に悩まされています。リウマチかどうかはっきりと診断できる検査はありますか?(60代・女性)
小池先生によると「リウマチを正しく診断するには、いくつかの詳しい検査が必要」です。「問診・触診」で痛みや腫れがないか確認した上で、「血液検査」で炎症反応や免疫異常の有無を調べます。レントゲンや関節エコーなど、骨や関節の状態を見る「画像検査」も重要です。リウマチと間違いやすい痛風や高齢者に多いリウマチ性多発筋痛症、変形性関節症などもあるので、これらの検査で総合的、かつ慎重に鑑別しなくてはなりません。
疑問②関節の痛みは、リウマチ症状のように思いますが、血液検査では数値がはっきり表れません。リウマチかどうか不安です(70代・男性)
リウマチ診断時に行われる血液検査で、特に大切なのは「リウマチ因子」「抗CCP抗体」の2つ。「リウマチ因子」は、健康診断や人間ドックでもチェックされ、この数値が陽性だと「リウマチの可能性があるので専門医に相談」という判定になりますが「陽性=発症している・これから必ず発症する」ということではありません。「リウマチ以外の病気や健康な人でも陽性になることがある」と小池先生は話します。
一方、「抗CCP抗体」は、健康な人で陽性になることは極めて少ないため、リウマチ発症を予測、診断する上で有用な検査の一つです。もちろん「陽性=発症している・これから必ず発症する」ということではありませんが、「関節の腫れや痛みなどの症状があり、抗CCP抗体が陽性」であればリウマチの可能性はとても高くなります。
疑問③リウマチをレントゲン検査だけで早期発見することはできますか?(50代・女性)
レントゲンは、骨に傷がついたり、関節と関節の間が狭くなったり、手指の変形など、骨の状態を見るのに有効な検査ですが、レントゲン検査で骨に異常が見つかるのは、リウマチがかなり進行した段階なのでこの検査だけでは、早期の患者さんを見逃してしまうこともあります。
そこで近年登場したのが…レントゲンでは写らない関節の中の状態を“眼”で見ることができる「関節エコー検査」。どこの病院でもできるとは言えませんが、近年普及が進んできていて、小池先生は「当院では、エコー検査を治療経過や薬の効果を見るための検査としても用いています」とその有用性を強調します。
晩年のルノワールのように、痛みと手指の不自由さに苦しまないために…。早期に見つけ、診断して、適切なタイミングで早めに治療をすれば、関節破壊や変形を防ぎ、多くの患者さんが寛解に達成することができます。気になる痛みがあったら、どうか迷わずに専門医に相談して下さい。
(構成・黒田 伸)
■医療法人清仁会 北海道内科リウマチ科病院
札幌市西区琴似1条3丁目1‐45。地下鉄東西線琴似駅下車、4番出口から徒歩5分。診療科目は内科、リウマチ科、消化器内科、呼吸器内科、循環器科、リハビリテーション科。2009年から医師や医療スタッフを大幅に増員し最新の医療機器を導入。翌年に現病院名に変更し、国内に数少ないリウマチ性疾患に特化した専門医療機関として知られている。電話011‐611‐1371。 (K)