
■脳からの警告!忍び寄る脳梗塞から命を守るために…
「突然、言葉が出ない」「片腕が動かない」「足元がふらつく」
それは、もしかすると“脳からの警告”かもしれません。
UHB「松本裕子の病を知る」は、2025年12月で放送100回目を迎えました。医療現場から正しい知識を伝え、道民の不安や疑問に寄り添いたい―そんな思いで続けてきた取材の節目に選んだテーマは、シリーズ『脳からの警告』第1回「脳梗塞」でした。
お話を伺ったのは、札幌柏葉会病院院長で脳神経外科医として数多くの命を救ってきた中山若樹医師。発症のメカニズムから最新の治療法、そして私たちができる予防と早期対応の大切さを解説していただきました。
脳梗塞は、脳の血管が突然詰まり、その先の脳細胞が死滅してしまう病気です。発症する場所や範囲によって、言語障害や半身まひなど様々な後遺症を引き起こします。場合によっては命を失う可能性もあります。
一口に脳梗塞といっても、原因によって3つのタイプに分けられます。
まずは「ラクナ梗塞」。脳の細い血管が詰まり、直径10㎜以下の小さな脳梗塞が生じます。小さくても、場所によっては日常生活に支障をきたす場合があります。
2つ目は「アテローム血栓性脳梗塞」。動脈硬化によって太い血管内の壁が厚くなり、詰まるタイプで、ラクナ梗塞より広範囲の脳梗塞を招きます。進行はゆっくりでも放置すると悪化するため、薬物療法に加え、外科手術が検討されることもあります。
そして3つ目が「心原性脳塞栓症」。心臓の中にできた血栓が突然、脳の血管に飛び、引っかかって詰まらせる重篤なタイプです。詰まる血栓が大きい場合には、重度のまひや言語障害などが後遺症になるだけでなく、命に関わるリスクが最も高い病態です。
皆さんは、脳梗塞の代表的な初期症状「FAST」をご存じでしょうか?
顔の歪み(Face)、腕の脱力(Arm)、言葉のもつれ(Speech)を感じたら、すぐに(Time)行動を…最近では、ふらつき(Balance)や視覚の異常(Eye)も加えた「BE FAST」という言葉で注意喚起されています。

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脳梗塞のもう一つの怖さは再発にあります。1年で約10%、5年で約20%の方が2度目、3度目の脳梗塞を起こしているという報告があり、再発を繰り返す度に後遺症が積み重なってしまいます。そのため、再発予防のための服薬や予防目的の治療、生活習慣の改善が極めて重要になります。
脳梗塞の治療は、1分も無駄にできない時間との闘い。年間2500件ほどの救急搬送がある札幌柏葉会病院の救急外来を取材すると、CTやMRI検査から治療までがスムーズな動線で行われていました。
脳梗塞の超急性期には、t‐PAという薬で血栓を溶かす「血栓溶解療法」が行われますが、タイムリミットは発症から4時間半以内。さらに、薬が使えない場合や効果がないケースでは、カテーテルを用いて血栓を取り除く「脳血栓回収術」が行われます。発症から6時間以内(24時間以内であれば適応される場合も)が目安になりますが、少しの遅れが、将来の生活を大きく左右するのです。
番組の最後に中山医師が力を込めて話して下さった言葉が心に残ります。
「私たち医療者は、患者さんが搬送されてから治療までの時間をどれだけ短縮できるか努力しています。でも病院に来るまでの時間は、患者さんとご家族に委ねられています」
脳梗塞は、ある日突然、誰にでも起こりうる病です。そして、本人よりも周囲の人が先に異変に気づくケースが多く、「様子がおかしい」と感じたら、ためらわずに119番通報を。違和感を見過ごさないことで、助かる命が確実に増えるのです。
次回以降もシリーズ「脳からの警告」は続きます。
この番組が、「知ること」で自分や大切な誰かの明日を守るバイブルであり続けられるように、私もまた歩みを進めていきます。
■札幌柏葉会病院
1971年4月に柏葉脳神経外科医院として開院し、2024年12月1日から社会医療法人柏葉会・札幌柏葉会病院に改名して現在の札幌市豊平区平岸1条12丁目1‐25に移転した。診療科目は脳神経外科、脳神経内科、循環器内科、リハビリテーション科などがある。病床数167床。緊急性の高い脳血管内治療や高度な脳血管外科手術が受けられる。手術の精度を上げるための情報統合型の「ハイブリッド手術室」を完備する。
電話(代表)011‐876‐9100
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