道民雑誌「クォリティ」は、政治・経済をはじめ、北海道のすべてがわかる総合月刊誌です。

ヘルスケア 〜症状から治療まで〜

  • HOME »
  • ヘルスケア 〜症状から治療まで〜

ヘルスケアイメージ

【こころの病気】認知症、うつ病、統合失調症…ドクターがアドバイス

 「ヘルスケア大百科」は病気にならないための健康情報に加え、診療科ごとに顕著な病気を専門医に解説してもらうシリーズ。最新のトピックスを掲載、また食事について識者のインタビューを加えた。
今月は「こころの病」について専門医の意見を交え、わかりやすく紹介する。

【しくみ】神経伝達物質の不足や過剰がうつや統合失調症の原因に







かつては「こころの弱さ」などといわれ、主観的な側面が強かった精神疾患だが、脳の研究が進み、客観的な側面からのアプローチがなされている。
現在は、さまざまなこころの病気の原因のひとつに、脳内の神経伝達物質の働きが関わっていることが明らかになり、治療法も進歩している。
たとえば、うつ病の場合、有力とされているのがセロトニンの不足だ。セロトニンは興奮作用をもたらすドーパミンや不快感をもたらすノルアドレナリンをコントロールする役割をもっているため、これらの供給がうまくいかないために、うつ症状が現れる(図1)。日本人にはセロトニンが不足しやすい遺伝子型の人が多いといわれている。
統合失調症の陽性症状である幻覚は、ドーパミンが過剰分泌されることで起こる。脳が異常な興奮状態になり、情報の伝達がうまくいかずに、見えているはずのないものが見えたり、聞こえるはずのないものが聞こえるといった症状が出るのだ。
抗精神病薬は、後シナプス膜のD2受容体に結合して、ドーパミンによる過剰な神経興奮を遮断することで、適度な情報伝達に戻す作用がある(図2・3)。
認知症は脳の神経細胞が減少し委縮することで起こるが、アルツハイマー型認知症の場合、通常の老化よりも早いスピードで委縮が進む。また認知機能に深く関係するアセチルコリンを産生する酵素の働きが低下し、アセチルコリンが減少することがわかっている。

【アスペルガー症候群】コミュニケーションがとれず特定の事象にこだわる

アスペルガー症候群は発達障害のひとつで、子どものときに症状が現れて、それが大人までずっと続く病気である。
症状は、他人とうまくコミュニケーションができず自分の感情を他人に伝えられない、また相手の言葉や表情をうまく読み取ることができないなど。
もうひとつの特徴は、こだわり。特定のことをしていないと落ち着かない、特定のモノを集めてしまう、日常で自分がやることが決まっていて、それを変えられたり予想しないことが起きるとパニックになる(癇癪など)、特定の感覚(救急車のサイレン音や子どもの泣き声など)に敏感に反応してパニックになる、など。
現段階では確立した治療法はなく、コミュニケーションのとり方や各場面でのふるまい方など、社会性を養う「ソーシャルスキルトレーニング」を行うのが一般的。パニックが心配される場合には「アリピプラゾール」や「リスべリドール」などの抗精神病薬を使う。

●パニック障害
パニック障害は、身体疾患はみられないのに、死ぬかもしれないと思えるほどの動悸や呼吸困難、不快感(胸や腹)、自律神経症状などからなる「パニック発作」(過呼吸症候群も含まれる)が繰り返し起こる病気。不安に陥りやすい脳や心理状態が関係していると考えられるため、治療は抗不安薬や抗うつ薬が有効だ。

【うつ病(運動)】1日30分のウォーキングと腹式呼吸でリラックス

うつ病の改善には、1日30分程度のウォーキングなどの有酸素運動と腹式呼吸を中心としたリラクゼーションを組み合わせることが有効だ。
リラックスはストレスと対極にある状態で、「心と体の緊張がとけて安らかな状態」をいう。腹式呼吸は誰でもすぐにできて効果があるリラックス法だ。呼吸や体幹部の安定を担う「横隔膜」を上下させ、大きくゆっくり呼吸することが大切。
具体的には、図4のような方法で腹式呼吸を行うと効果的だ。ぜひ実践してもらいたい。

●摂食障害
摂食障害(拒食症)は、太りたくないという肥満恐怖と、痩せ過ぎているにもかかわらず、まだ太っているという誤った認識から食べなくなり、栄養失調状態に陥る病気。女性に多く、死に至る場合もある。
治療では、体重低下が著しい場合は、入院のうえ、栄養補給とともに認知行動療法を含めた精神療法が中心となる。

【統合失調症】抗精神病薬でドーパミンの過剰を調節し陰性症状はリハビリで改善

▲北海道大学大学院 医学研究院
精神医学教室
久住 一郎教授

――統合失調症の発症のメカニズムは。
統合失調症でよく知られている症状は幻覚や妄想などの陽性症状です。この陽性症状は、脳内の神経伝達物質であるドーパミンの過剰によって起こると考えられています。
統合失調症は思春期に発症する病気です。他の臓器は生まれるときに、すでに完成していますが、神経だけは思春期まで発達を続け、この時期になってようやく完成します。
遺伝子的要因に加えて、出産時のトラブル(出生時仮死など)や幼少期のストレスなどの環境的要因によって神経の発達が悪くなることが原因とみられています。これらの神経発達の障害が成人後の脳内ドーパミンの過剰につながると考えられています。

――ほかに、どんな症状を呈するのですか。
ドーパミンのほかに、興奮性神経伝達に関係するグルタミン酸系の一種であるNMDA系が関連している、と言われています。
これらの神経伝達物質のバランスがくずれると、「自発的に何かをしようという気持ちがなくなる、生き生きとした感情がわかなくなる」などの陰性症状や「注意の集中が続かない、物事をてきぱきと処理できない」などの認知機能障害が出ることがあります。

――診断と治療は。
診断は丁寧な問診が中心になり、脳外科を含めた身体疾患による精神症状である可能性を除外するために、脳MRI検査や血液検査などを行います。
ドーパミン受容体を緩やかに遮断する抗精神病薬で、陽性症状を抑えます。
一方、陰性症状や認知機能障害の治療は、現在のところリハビリテーションが中心になります。

【うつ病】莫大な患者数と自殺との関係で社会問題に

▲札幌医科大学
神経精神医学講座
河西 千秋教授

――うつ病とは。
気持の落ち込みは誰もが経験しますが、うつ病は、脳機能に変調をきたす病的なものを指します。
症状としては、抑うつ、物事への興味・喜びの減退、食欲の低下、不眠、気力の減退、無価値観や自分を責める気持ち、思考・集中力低下、そして自殺に傾く気持ちなどからなります。また多くの場合、身体各部の不調が現れます。
これらが一日中、しかも毎日続けばうつ病なので、相当苦しい状態です。そのために、自殺を生じることがあります。北海道は自殺率が高いので、うつ病対策は重要な課題です。私は産業医でもありますが、働き方改革の観点からも課題となります。

――うつ病は自殺と関係しているのですね。
日本では、10代から30代の死因の1位は自殺で、40代でも2位です。自殺者全体の3分の1以上は60代以上の方々ですが、これらの30~50%にうつ病が関係します。

――うつ病で注意する点は何ですか。
うつ病は、悪化すればするほど、人に助けを求める力が弱くなってしまいます。
「元気がないがどうしたのかな?」と思う人が近くにいたら、声掛けをしてみて下さい。「実は…」と深い悩みがあって、しかも心身の不調が続いているようならまず傾聴に努め、必要に応じて受診を勧めてみましょう。

――治療ではどういった治療が行われるのですか。
ごく軽症であれば、治療は「精神療法」と「環境調整」で良くなります。症状が進んでいれば、それらに加えて抗うつ薬を使用しますが、通常1種類です。不眠で体調が悪い時など、補助的に睡眠剤などを使う場合もあります。

【食事】眠りの質をよくするアミノ酸の「トリプトファン」

▲札幌医科大学
保健医療学部
基礎臨床医療学
齋藤 重幸教授

――不眠に悩む人にお勧めの食事は。
「トリプトファン」というアミノ酸が眠りの質をよくすることで知られています。トリプトファンは、気持ちを落ち着かせる「セロトニン」や生体リズムを整える「メラトニン」の原料になります。トリプトファンを多く含む食材は、牛乳、チーズ、バナナ、鶏むね肉、ナッツで、ナッツでは特にクルミがよいとされています。
また「GABA(ギャバ)」と呼ばれるアミノ酸も神経の興奮を抑え、からだをリラックスさせるので眠りに効果的です。GABAはココアや玄米、トマトなどに多く含まれます。
もうひとつ、アミノ酸の「グリシン」も深部体温を下げる作用があり、効果的です。こちらはエビやホタテ、イカ、カジキマグロなどに多く含まれています。
その他、ジャスミンティーのようなハーブティーやホットミルクも安眠作用があるといわれています。

【認知症・睡眠障害】レビー小体型認知症の初期症状 気を付けたい「REM睡眠行動障害」

▲旭川医科大学
精神医学講座
千葉 茂教授

――認知症と睡眠障害との関連について。
睡眠障害は主に①「睡眠不足」②「過剰睡眠」③「睡眠時の行動異常」④「睡眠時間帯がずれている」の4つに分類されます。そのうち①睡眠不足による睡眠障害は認知症にみられる、もの覚えの悪さや集中力の低下、誤認などを惹起します。この場合、睡眠が充足されれば、認知症が改善されることはあります。

――レビー小体型認知症とはどういう病気なのですか。
レビー小体型認知症では前述③の睡眠障害である「REM睡眠行動障害」といわれる夜間、夢見の体験に基づいて異常な行動をきたします。

――REM睡眠行動障害とは。
睡眠にはREM睡眠とNONREM睡眠があります。REM睡眠では神経系が働いて夢を見ても行動を起こさないように制御しています。ところが神経が変性してそのシステムがうまく働かないと、夢を見た時、夢の続きとして行動に起こしてしまう。
それがREM睡眠行動障害です。具体的には睡眠時に「からだの一部を動かす」、「叫ぶ」、「上半身を起こす」、「壁に突撃する」、「隣にいる人を殴る」などの行動がみられます。REM睡眠行動障害の場合、レビー小体型認知症の初期症状(サイン)としてとらえる必要があります。
睡眠中に寝言を言う人がいますが、寝言とはまったく別なものです。寝言はNONREM睡眠のときに起き、心配はいりません。あと、睡眠障害で先程の4つの症状が1ヵ月以上続き、生活(QOL)に支障が出る場合には治療が必要です。治療は経過をみて、症状に応じて薬物治療を行います。

PAGETOP
Copyright © 月刊クォリティ All Rights Reserved.
このページに掲載された内容の著作権は、株式会社太陽に帰属します。 無断での複製・掲載・転載・放送等を禁じます。

※コンピューターの漢字表示制限により、一部の漢字をひらがな等で表記している場合があります。