男と女の事件場ヘッダー

火遊びが大火事に 年上女に振り回されたモテ男

【K市発】□月■日、道警K署は元上司だった女性を殺害して山中に埋めたとして会社員小田切剛(36)を殺人と死体遺棄の疑いで逮捕した。女性の夫が「K市に行った妻と連絡が取れなくなった」と警察に行方不明届を出し、交友関係から容疑者が浮上。任意で事情を聴いたところ、犯行を自供した。2人は昨年春まで同じ地方支店に勤務していた。

「ご主人に気づかれたら、どうするんです。もう、会わない方がいい」
 剛は手にした携帯に語気を強めた。相手は昨年春まで同じ職場に勤務していた幸子だ。2人の関係は3年前から続いていた。
 政府が少子化による労働力不足を補う狙いから「女性活躍」を掲げて以来、各企業で女性登用が加速した。

剛が勤める金融機関でも女性の管理職が次々に生まれ、幸子も3年前、剛がいた職員10人足らずの道央の地方支店にナンバー2の課長として赴任してきた。剛は当時、主任。つまり、2人は上司と部下の関係だった。
 剛より一回り年上の幸子は札幌に夫と中学生の一人娘を残しての単身赴任。剛も当時、独身。たまたま同じ大学出身という親近感から、会社帰り、しばしば夕食を伴にした。
 剛は学生時代、バスケットボール選手で鳴らした長身のイケメン。結構、モテた。一方の幸子も職場では髪を後ろで束ねて眼鏡をかけ、地味なスーツ姿だったが、眼鏡を外し髪をほどけば、こざっぱりとした美人。細身だが、女盛りの人妻。色気も持ち合わせていた。
そんな2人が理ない仲になるのに、さほど時間はかからなかった。

 幸子の赴任から3ヵ月ほど経った夜、2人は居酒屋で夕食を伴にした。そこで幸子は珍しくビールをお代わりして、愚痴った。昼間、支店長に「女が旦那や子供を残して単身赴任してくるなんて、時代も変わったもんだ」と嫌味を言われたという。
「支店長は定年間近でやっと今のポスト。だから女性登用を妬んでいるんです」
「私だって単身赴任なんてしたくなかった。でも、主人も仕事を辞められないし、子どもだって進学の大事な時期だし…」
「課長、みんな、わかってますよ。気にしないでください」
「小田切君って優しいのね」
 剛は涙ぐむ幸子をタクシーでマンションに送り、そのまま一線を越えた。

 昼間は45歳の上司と33歳の部下が、週1、2回、互いを貪り合う。そんな関係は刺激的だった。特に幸子は、剛がこれまで相手にした年下女にはない魅力があった。
 痩せぎすで決してスタイルがいいとは言えないが、熟れた体は敏感だ。舌や指で胸や股間をなぞると、全身を震わせて切なさそうに声を漏らす。それがAVの影響か、やたら喘ぎ声を上げる今どきの若い娘と違って艶かしい。
 それでいて、愛撫する側に回ると、巧みだった。「夫以外、ほとんど男性経験がない」と言いながら、口と手、そして興奮して尖った乳首まで使って男の急所を突いてくる。それに我慢しきれなくなって剛がのしかかろうとすると、「ワタシ、これが好きっ」と言いながら、自ら四つんばいになって後背位に導く。

昼間、職場でテキパキ仕事をこなす幸子を目にするたび、夜の淫らな姿がダブり、剛の股間は疼いた。
 剛にとっては火遊びだったが、幸子の方がのめり込んでいった。管理職の夫は仕事に追われて元気をなくしていた。幸子が毎週末に札幌に帰っても、求められることはほとんどない。その点、剛は違う。ガツガツ求めてくる。それが幸子の体の渇きを癒してくれた。

 ある夜、いつものように激しく交わった後、剛が切り出した。
「来月、結婚することになったんです。相手は●●建設の社長の一人娘です」
「確か、あそこは取引先ね。じゃ、将来はあの会社の社長さんね。それにしても、ずいぶん急ね」
「出来ちゃったもんですから」
 そう頭をかく剛に幸子は尋ねた。
「ところで相手は幾つ」
「26歳です」
 剛が陰で自分より20歳も若い娘と付き合い、妊娠までさせていた。それがプライド高い幸子の嫉妬心をかきたてた。その夜、幸子は明け方まで剛を求め続けた。

 剛の結婚後、さすがに会う回数は減ったが、2人は関係を続けた。幸子が頻繁に誘ってきたからだ。
そんな関係も昨春、幸子が札幌の本店、剛がK支店にそれぞれ転勤が決まって、終わるはずだった。どうやら、2人の仲に上役が感づき、同時異動となったらしい。

 だが、転勤後も幸子は「会いたい」と電話を掛けてきた。一度覚えた禁断の味は忘れられないのだ。だが、剛は違った。12歳も年上の女より若い妻の方に傾いていた。
「明日の土曜日、そっちに行くわ」
「ダメですって。僕には子どももいるんでから」
「そんなことを言わないで。最後にするから」
「わかりました。会うだけは会います」

 翌日、剛は高速道を2時間も一人で運転してきた幸子とひと気のない公園の駐車場で落ち合った。幸子が誘い、車の中で激しく交わった2人だが、終わると「本当にこれで終わりにしましょう」「別れるのはイヤ」という堂々巡りが続いた。
 剛が凶行に走るきっかけは幸子の一言だった。
「そんなにワタシが嫌いなの。それなら、何もかも奥さんに言うわ」
 若い愛人を失いたくないという一心から出た言葉だが、剛の頭に血が上った。幸せな家庭も、妻の実家の建設会社を継ぐという夢も壊される―。剛はとっさに幸子の細い首に手を掛けていた。

(実際にあった事件をヒントにした創作です)