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男と女の事件簿

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弁護士に救われた 真面目教師の出来心

【S市発】□月■日、S地検は酒に酔った知人女性をホテルに連れ込み、わいせつな行為をしたとして準強制性交の疑いで逮捕・送検された40代の男性教師を不起訴処分とした。地検は不起訴とした理由を明らかにしていない。

「強制性交」、「法律事務所」をキーワードに、ネットで検索すると、パソコン画面には弁護士事務所がズラリと並ぶ。結構な数だ。それだけ需要があるということか。

進学率の高さで知られる高校で社会科の教師をしていた真一(45)は1週間前、準強制性交の疑いで逮捕された。それは1ヵ月前の2020年12月半ば、前任校で教え子だった一美(28)とふとしたことから関係を持ったことが始まりだった。
その日、真一は妻が冬休み中の子供を連れて里帰りしたため、夕食を取りに学校近くの居酒屋に立ち寄った。そこに一美がたまたま来ていて、声をかけてきた。
「斉藤センセイでしょ。私、秋山です。●●高校で世界史を習った」
教え子の数は多かったが、一美は当時から大人びて気になる存在だったから、10年ぶりでもすぐにわかった。
勤め先の銀行の上司と飲みに来たというが、その上司が途中からセクハラめいた説教を始め、困っているという。
「センセイ、助けて」
「どうすればいい?」
「席に来て、教え子ですって挨拶してくれれば、あの上司、帰るわ」
その言葉通り、真一が挨拶すると、上司はバツが悪そうな顔をして帰っていった。
「ありがとう、センセイ。きょうは金曜日。飲み直しましょう」
アルコールが回ってきたせいか、一美は饒舌だった。
大学卒業後、就職した銀行では融資を担当し、重役の覚えもめでたいこと。さっきの上司はそれに嫉妬して、職場で嫌がらせを受けていることなどを語った。
「あんな奴、ぶん殴ってやればいいんだ」
真一が声を上げると、一美は「センセイは相変わらず、熱い。だから好きだったよ」と手を叩いて喜んだ。
「ところで、結婚は?」
「やっぱり、それを聞く?実は去年、離婚したの。私が仕事に忙しくて、あまり面倒を見られなかったから」
その会話辺りから、一美の目がトロンとし始めた。
自宅に送り届けるためタクシーを拾ったが、一美は寝入り、真一にもたれかかってきた。ダウンコートの上からも肉付きの良さがわかる。そして鼻をくすぐる女の香。結婚以来、妻一筋だった真一にちょっと出来心が芽生えた。
「休んでいこうか」とささやくと、一美は体を預けてきた。それを合意のサインと、真一は受け取った。

一美の体は熟れていた。どこに触れても敏感に反応する。丹念にしゃぶると乳首は痛いほどとがり、蜜壺に舌を這わせると、シーツに染みが広がるほど濡れた。
さすがにフェラチオなどはしてくれなかったが、それでも抽送を続けるうちに、自ら抱きついてきて「もっと、もっと」と、喘ぎ声を上げた。教え子と初めて関係を持つ背徳感も手伝って、真一は妻では味わえない興奮を感じた。
話はそこで終われば良かったが、そうはいかない。翌朝、目覚めた一美が声を上げた。
「どうして、こんなことになっているの」
「誘ったら、断らなかったじゃないか」
「そんなの嘘よ」
言い合いは続き、最後は一美が折れたように見えた。しかし、違った。一美はその足で警察に向かったのだ。
年が明けて、警察に呼ばれた真一は「無理やりではない」と言い張ったが、ホテルに乗り付けたタクシーのドライブレコーダーから、警察は一美が抵抗できないほど酩酊していたと判断。真一は逮捕された。そんな真一が頼ったのは大学時代からの親友で公認会計士の隆。仕事上で知り合いの弁護士長友を紹介してくれた。

長友は31歳と若いだけに動きが早かった。真一から一美のことを聞くや、すぐに接触した。示談に持ち込めれば、不起訴になる可能性が出て来るからだ。
「斉藤さんは合意を主張していますが」
「嘘です。私を酔わせて…」
「アノ最中、あなたが『もっと、もっとってせがんだ』とも言っていますが」
「なんて下品な。弁護士さん、あんな男は助ける価値ないわ」
「でも、彼は私の依頼人ですから」
堂々巡りが3日間続いた挙げ句に、長友が切り出した。
「あなたのこと、少し、調べました。幼いころから勉強ができて、一流の大学。そして今の大手銀行に勤めた。非の打ちどころがない。ただ、一昨年、離婚していらっしゃる。それで男性不信になっているのでは」
「そんなこと、ありません」
「それを証明してくれる人はいますか。たとえば会社の上司とか」 そう言われて一美はハッとした。あのセクハラ上司の顔が浮かんだのだ。今回の一件は会社に内緒だ。知られたら、どうなるか。一美は返事を言いよどんだ。長友はそれを見逃さず、畳みかけてきた。
「今回のことが会社に知られてはあなたもつらいでしょう。年も改まったことだし、ここは示談に応じて秘密にしませんか。斉藤さんも反省し、学校にもいられなくなって社会的制裁も受けています」
あの上司に知られるぐらいなら―。一美はそう考え、いやいやながら示談に応じた。
それで真一は不起訴になったが、逮捕時、実名で大きく報道したメディアは不起訴のニュースは仮名でしかもベタ扱い。失った信用は戻ってこないばかりか、家庭も仕事も失った。弁護士が救ってくれた出来心だが、代償は大きかった。

 

 

(実際にあった事件をヒントにした創作です)

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