男と女の事件場ヘッダー

淫靡な更年期治療 「ゴッドハンド」の特殊サービス

【H市発】■月□日、H中央署は40代の女性をマッサージ治療中、下着を脱がせて下半身を触ったとしてマッサージ師川上洋二(65)を準強制わいせつの疑いで逮捕した。女性からの訴えで発覚した。調べに対し、容疑者は「あくまで更年期障害への施術だった」と否認している。

ツボを押すたび、治療台に乗る女の体が波打つ。ほどなくすると、切なそうな声を上げ、二度三度、腰を跳ね上げた。

「施術の効果はありましたか」
「楽になりました」

40代後半の主婦は、そう言い残し顔を赤らめて帰っていった。

洋二はベテランのマッサージ師。甲子園を目指していた高校時代、練習中に硬球が右目を直撃、視力を失った。残った左目も酷使がたたって視力が低下。日常生活に支障はなかったが、将来を心配した親の勧めで洋二は大学を中退。専門学校に転じてマッサージ師の資格を取った。その後、札幌の大手治療院で修業を積み、30年前、幼なじみとの結婚を機に故郷で治療院を開いた。

ストレス時代だ。肩凝り、背中や手足の痺れ、果ては全身の強張りといった不調を訴える人は多い。だから需要は多く、洋二も後輩を雇って手広く経営していたが、3年前、長男長女が独立したことから自適な暮らしを求めて一人で切り盛りする店に縮小。同時に旧知の婦人科開業医とタイアップして「更年期治療」と銘打ち、40代後半の女性専用に切り替えた。

女性は傍目を気にするから、店は患者同士がかち合わぬよう1日5人限定の完全予約制。施術料は1時間8千円と割高だが、「ゴッドハンド」と呼ばれる施術のうまさと、ある特殊な「サービス治療」が口コミで広がり、隣町から通ってくる常連もいる。

その特殊な治療を始めるきっかけは2年前にさかのぼる―。

その日の患者は48歳の主婦。なかなかの美人だ。小顔のせいか、私服ではほっそりと見えたが、薄いワンピース型の施術着に着替えると、胸は大きく、ヒップもむっちり。それでいてウエストはほどよく締まっている。症状は極度の肩凝りと偏頭痛。典型的な更年期障害だった。

ハーブオイルを全身にすり込み揉みほぐしていくと、自律神経が刺激されて血流が良くなったのか、青白かった肌が赤みを帯び始めた。次はツボ押し。うつ伏せにして首筋から腰にかけて押していく。ツボは場所によっては性感帯と重なる。腰から尻に指を進めていくと、女は時々「アッ」と声を漏らした。

続けて仰向けでのツボ押し。胸の周りのリンパをさすった後、下に向かってツボをなぞっていく。ヘソと恥骨の中間にある「丹田」周辺は特に丁寧に。東洋医学ではエネルギーを示す「気」が集まる場所とされ、治療には欠かせない。

「奥さん、ここが特に凝っていますよ」
「冷え性で最近、胃腸の調子もおもわしくないの」
「そうでしょう。きょうは奥さんが最後だから、入念にしましょう」

手の平で下腹部を撫で回すうちに汗ばんだ肌が手に吸い付いてきて、洋二は職業上、あってはならない興奮を覚えた。施術着の上から股間をなぞっても、抵抗しない。そればかりか女の顔は上気し、甘い吐息すら漏らし始めている。

「血の巡りがよくなるよう、下着も取りましょうか」 

そう促されると、女は「脱がせて」とばかり自ら腰を上げた。自前のパンティには染みができていた。体は火照り、淫裂は濡れそぼっている。こうなれば、施術という名の秘め事。洋二が急所に指を這わせると、女は瞬く間に全身を痙攣させた。

施術料を支払いながら、女がつぶやいた。 

「あんな治療があったのね。元気が出てきたようです」

聞けば女は更年期も重なってここ数年、夜の営みから遠ざかっていたという。

「血行を良くするため、夫婦生活はあった方がいいですよ」
「でも夫は下手。ワタシはセンセーがいいわ。定期的に通ってみようかしら」

その言葉が男の征服欲を刺激した。それで患者が喜んでくれるなら一石二鳥。洋二に新たな治療法が加わった。もちろん、相手次第だが、治療と言えば拒まれることはほとんどなかった。ただ、治療である以上、洋二は3原則を守った。使うのは手と指だけ、相手の愛撫は受けない、そして本番には応じない―。

その患者は初診だった。婦人科医から紹介された主婦で46歳。洋二好みのすっきりとした美人だ。更年期で体がだるいという。

いつものようにオイルを全身に塗りこみ、体を揉みほぐしていく。肌はすべすべして触り心地がいい。うつ伏せでのツボ押し、続いて仰向けでのマッサージ。脇下を揉み上げると、形のいい胸が艶めかしく揺れた。仕上げはヘソ下の丹田周辺。ゆっくりと撫で回し、恥骨付近に指を近づけると、女は体をよじった。

「センセー、そんな所もするんですか」
「更年期治療には大事な場所です」

そう言われたら、黙るしかない。だが、洋二がパンティに手を掛けると、再び抵抗した。

「なっ、何をするんですか」
「体を締め付ける下着は血の巡りを妨げるんですよ」

女が好みのタイプだったからか、それともいつもの慣れからか、洋二から慎重さが消えていた。嫌がる手を振りほどき、パンティを引き下げ、指がヘアに触れた瞬間、女は大声を上げて治療中止。女は施術料を支払うや、声を掛けても何も答えず帰って行った。

1ヵ月後、洋二はH中央署に呼ばれ、事情聴取された。

「女性から下半身を触られたり、下着を脱がされたりしたという被害届が出ています」
「施術の一環です」
「やったことは認めるんだね」
「あくまで治療です」

洋二はそう言い張ったが、認められるわけはなかった。

(実際にあった事件をヒントにした創作です)