【2019年8月号掲載】

久野 信之校長

〈くの のぶゆき〉 札幌市出身、59歳。慶祥学園教諭、立命館慶祥高等学校教諭、立命館慶祥中学校・高等学校教頭(2008年)、同副校長(12年)を経て、15年4月に校長に就任、現在に至る。

大学入試改革に即応した「アクティブラーニング」棟が完成

来年度から実施される大学入試改革では、受験生の「思考力」、「判断力」、「表現力」や共働性が試されることになる。
学校法人立命館(本部・京都)が運営する立命館慶祥中学校・高等学校は、16年前からこれらの学力養成を目指したアクティブラーニングに力を注いできた。
今年4月には、その教育棟が完成。そこで久野信之校長に真の学力養成を目的とした教育棟への熱き思いを語ってもらった。

「思考力」「判断力」「表現力」や共働性を養成

▲アクティブラーニング棟

——教育棟建設の目的は。
立命館慶祥は、北海道でナンバーワンの進学校を目指しています。これからの進学校というのは、従来のように机にかじりついて問題演習だけで試験対策を行う学校ではありません。机上の勉強だけでは、世界に通用しない。
これまでの大学入試は、難しい問題演習を解くことが主で、答えが1つしかありません。受験生は正解を答案用紙に書いていく。でも人生はそんなものではありません。世界を見渡してもそんなことで政治が、文化が、環境保全が進んでいるわけではありません。
アクティブラーニングとは、ディスカッションやディベートなどを通じて生徒が主体となって能動的に学ぶ授業を指します。そのために最先端のICT教育設備を導入してスピード感ある授業が展開できる施設がこの教育棟です。
アクティブラーニングは、「教わる」のではなく、「自ら学んでいく姿勢」が基本です。そのためには議論すること、自分と違う考えを受け入れることが大切です。そして違う考えを持っている人同士が議論して協調していく力が大事なわけです。
今回の大学入試改革では、そのことにようやく日本も気付いたと言えます。
立命館慶祥がアクティブラーニングに取り組んで今年で16年目になります。当時はアクティブラーニングなんて誰も知らなかったのですが、そんな時代から取り組んできました。大学入試の方が当校の考えに近づいてきたと考えています。

——教育棟が稼働して、どうですか。
全国の都道府県単位の私立の中学校や高校の校長会からの視察が相次いでいます。アクティブラーニングを実施し、その施設を持っている学校は全国に数多くありますが、当校のアクティブラーニング棟には、他にはない特徴があって、それが視察の大きな目的になっています。

生徒が日常使う「スマホ」で授業

——具体的には。
他校では、規格統一されたスマートデバイス(タブレット)を生徒に配布しています。一方、生徒たちは日常生活で、ドコモやauなどいろいろなキャリアのスマートフォンを使っています。互換性がないため、学校側は、タブレットを配布、活用するしか手立てがなかったんです。
でもアクティブに学ぶのであれば、常に手の届くところに調べたい学習がなければならない。日常使わないタブレットを使って勉強しても効果が上がりません。
そこで当校ではキャリアの異なる複数のスマートフォンでも生徒の指先ひとつで1つの画面に投影できるICT機器を導入しました。アプリと450回線以上ある高速インターネット回線で、同時に何百人の生徒が自分のスマートフォンを使いながら、1つのテーブルで議論ができるわけです。

——デジタルの効用ですね。
でも当校が目指すアクティブラーニングの柱はアナログなんですよ。
この教育棟の教室には大きな机があって、そこに数式や自分の考えを直接書き入れます。ノートだと自分の考えは自分しかわかりません。ここでは自分の考えを瞬時に他の人が共有できます。また机の天板をはずして壁に取り付けてプレゼンテーションすることもできます。ここでは実際にペンで机や壁に書きながら、議論していくことになります。昔は、「机や壁に落書きするな」と叱られたものですが、当校では大歓迎です(笑)。
このようにデジタルとアナログの併用によって、生徒たちの自由な学びを誘発し、「学ぶって面白い」、「自分と違う考えというのはこんなに素晴らしいのか」といった他者を受け入れる姿勢を育みます。
以上のアクティブラーニングによって、基礎学力がきちんと定着しているかは「小テスト」で確認します。当校が行うテストは、答えが1つではありません。たとえば数学では答えにたどりつくまでの論理的な数式も評価します。

——開校以来、「世界に通用する18歳」を目標に掲げていますね。
先ほど述べた世界に通用しない社会人に共通するのは、説得的に話ができないとか、人を感動させるプレゼンテーションができない点ではないかと思います。
違う考えの人や異なる歴史的背景の人、異なる人種の人たちと一緒になって自分の考えを積極的に伝えていく。相手は感動をもってその人の考えを聴く。教育棟の活用で真の学力を育て、大学受験改革に挑みたいと思っています。

立命館慶祥中学校・高等学校
【住所】北海道江別市西野幌 640-1
【TEL】011-381-8888
【URL】http://www.spc.ritsumei.ac.jp/