【2020年4月号掲載】

〈はせがわ よしろう〉
1966年生まれ。札幌学院大商学部経済学科卒。2015年総務部次長、18年取締役営業部長兼経理担当部長、19年6月常務取締役、同年10月から現職。

時代に合った新路線開設でウポポイ開業 の経済効果を胆振全土に

人手不足や燃料費の高騰など、業界を取り巻く環境は深刻を極めるものの、「地域の足を守る」というブレない信念のもと、組織強化に全力をあげる。踏み切った路線の減便・廃止、ウポポイ開業に対する期待——、昨年10月に社長に就任した長谷川義郎社長に訊いた。

輸送安全部創設で乗務員の安全教育強化

——社長就任にあたり、改めて基本的な考え、理念を。
人口減少や乗務員不足、原油高をはじめとする運送経費の高騰など、業界を取り巻く環境は極めて厳しいものですが、こういった状況下でも〝地域住民の足を守る〟という使命が我々公共交通事業者にはありますので、その責任をしっかりと果たして参りたい。
事業の舵をとるにあたっては、〝組織基盤の合理化〟や〝運行時における安全体制の確立〟をはじめ、〝各地域の運行路線見直し〟や〝地域自治体と連携による事業エリアの活性化〟〝同業者や他交通機関との連携強化〟といった5本の柱を中心に指揮をとっていこうと考えています。お客様がより安心できる環境づくり、従業員が誇りを持って働ける環境づくりを進め、一層愛される企業にしたい。

——就任直後からさまざまな取り組みに着手されています。
そうですね。なかでも早々に創設した輸送安全部は新生道南バスの根幹とも言える部門です。これまで難しかった〝乗務員の安全教育〟はもとより、利用者からの苦情や内部・外部からのモラルの問題などに対応する専門的な部門で、警察OBの方々の協力を得ながら、安全体制の確立に向け始動しています。輸送安全基盤の強化、再構築を図っているわけです。

——業界全体で人手不足が顕著です。
運転手不足の背景にあるのは、主に大型2種免許の取得、若者の車離れ、労働条件などがありますが、そのほかにも運輸業界の古い体質に対する違和感や、IT関連企業に対する憧れなど、若年層の考え、意識の変化もあると感じています。

——どのような対応策を。
さまざまな要素が業界の人手不足につながっているわけですが、弊社としましては、定期的な会社見学会、情報誌やSNSなどを活用した求人情報の発信、また、道とバス協会の協力を得て実施する企業説明会など、あらゆる手段を活用して人材確保に努めています。加えて、地元で働きたい方やUターン希望者への就職PR活動なども、自治体と連携して積極的に実施していきたいと考えております。
併せて、労働環境の改善にも着手しているところです。運転手の〝生活基盤の安定〟や〝健康管理体制の維持〟は安全管理体制にも直結する課題ですので、経営状況などを十分に加味しながら引き続き積極的に取り組んでいく必要があります。

〝収益性〟の現実受け運行路線見直しを

——路線の減便、廃止などが話題となりました。
各地域の人口減少に伴い、バス利用者数も減少しています。不採算路線や重複路線集約、減便や廃止なども進めていかなければ、乗務員の労働環境は改善されず、将来的な路線維持は困難になってしまいます。
現在の路線は会社創立90年以上の歴史の中で、地域住民の意見やまちの発展状況に合わせ、積み重ねてできた路線です。ですが、時代の変化とともに人口動態やまちの状況も大きく変化したことに加え、労働力不足や補助金制度の見直しなどもあり、バス路線が変化に対応できていない。公共交通機関として、可能な限り細かく、あらゆる地域にバス路線を張り巡らせたいという想いはあっても、収益性という現実を受け止めないわけにはいきません。
今後さらに人口減少が加速することが予想される以上、今着手しなければ、会社の存続はもとより、地域の交通手段そのものの継続も困難になる。そうさせないためにも、将来に対応するための全運行路線の見直しは不可欠です。地域の方々から苦言やご助言を含め、さまざまな意見を頂戴し、時代に合った路線づくりを進めていきたい。

——ウポポイと各地をつなぐ新路線の開設を予定されています。
そうですね。地元事業者として近隣市町村へウポポイ開業の経済効果を波及させなければなりませんので、札幌—登別温泉、新千歳空港—登別温泉の都市間バスを白老町に立ち寄らせること、登別温泉—苫小牧、室蘭、洞爺湖方面への接続時間の見直しなどを予定しています。
客層については、台湾や韓国のリピーター、欧米の観光客も視野に入れていますし、なにより世界に誇れる新たな観光資源が胆振にできるわけですから、国内からの需要増も見込んでいます。
さらに、路線のみならず貸切バスについても、修学旅行や各種ツアーによる需要増が期待できる。各旅行代理店や同業者との連携強化に努め、貸切バスの利用促進につなげていきたい。

——今後のビジョンを。
現在、新3ヵ年計画の策定を行っている最中ではありますが、既に実践している取り組みには手応えを感じています。組織内の透明性も図られ、若い従業員や現場の率直な意見が今まで以上に発信されるようになった。5年後には創立100年を迎えますので、今後はこの動きをさらに加速させ、輸送安全体制の確立、乗務員不足対策、労働環境の改善を行い、地域から愛される、成長できる企業をつくって参りたい。