【2019年11月号掲載】

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【URL】https://www.hokuto7.or.jp

プレシジョン・メディシンの遺伝子解析で脳腫瘍の分子標的薬治療に取り組む

▲吉田 道春医師


▲加藤 容崇医師

北斗病院では、早期からプレシジョン・メディシン(PMC・精密医療)を柱にした個別化医療に取り組んでいる。

昨今、がん治療で患者の遺伝子に合った分子標的薬によるテーラーメイド医療が臨床の現場で注目を集めているが、北斗病院は従前から「次世代型シークエンサー」を使った遺伝子解析で、治療前にがん細胞の遺伝子を検査し、がんの個性を調べる遺伝子診断で、その患者に最適な分子標的薬の投与に努めてきた。

北斗病院の脳神経外科では、吉田道春医師(脳腫瘍が専門)が加藤容崇医師(腫瘍病理学が専門)と共同で、脳腫瘍における分子標的薬の治療に取り組んでいる。ここでは年間40症例の脳腫瘍の治療を実施。

悪性の脳腫瘍には、①膠芽腫(グリオーマ)、②悪性リンパ腫、③髄芽腫、④転移性脳腫瘍があるが、「当院では遺伝子解析により、ほぼ全ての悪性脳腫瘍について薬の標的になる遺伝子変異を特定しており、患者に合った分子標的薬の投与が可能になっている」と吉田医師。

だが、脳腫瘍に効く分子標的薬がわかっても腫瘍は脳内の毛細血管と周辺の複雑な組織の中に発生するため、特に脳関門(ブラッド・ブレイン・バリア)と呼ばれる箇所で薬の注入が拒まれ、薬が腫瘍に届くことがきわめて困難な状況になっている(ドラッグ・デリバリーの問題)。がん治療で分子標的薬が注目される中、脳腫瘍の治療については、外科手術と放射線治療に限られているのはそのためだ。

北斗病院では、このドラッグ・デリバリーの問題を克服するため、集束超音波装置「FUS」を活用した脳腫瘍の分子標的薬投与の試みを行っている。

FUSは頭蓋骨を通過してピンポイントに局所を超音波照射できる医療機器で、超音波の強弱によりマイクロバブル(微小な泡)が発生、その泡を脳関門に送ることで脳関門を開かせ、薬を腫瘍に届かせることが可能となる。脳梗塞の治療でバルーン(風船)で閉塞した血管内を拡張させるのと同じ原理だ。

現時点では研究段階だが、「超音波は放射線と異なり、照射容量に限界はない。近い将来には、この試みを臨床に応用し、いままで不可能だとされてきた脳腫瘍での分子標的薬治療を、ぜひ実現させたい」(吉田医師)

吉田 道春医師(よしだ みちはる)
鳥取大学医学部卒。北海道大学病院を経て、2016年12月より北斗病院勤務。18年3月北海道大学・大学院脳神経外科分野博士号取得。日本脳神経外科学会専門医。

加藤 容崇医師(かとう やすたか)
北海道大学医学部卒。北海道大学腫瘍病理学分野にて博士号取得。米国ハーバード大学医学部マサチューセッツ総合病院腫瘍センター勤務を経て、2017年1月より北斗病院勤務。18年より慶応義塾大学医学部腫瘍センターゲノム医療ユニット特任助教兼任。