【2020年10月号掲載】

【住所】帯広市稲田町基線7番地5
【TEL】 0155-48‐8000
【URL】https://www.hokuto7.or.jp

「脳磁図」活用による認知症リハビリで個別化医療を実践

▲鴫原 良仁
精密医療センター長

北斗病院は、プレシジョン・メディシン(PMC・精密医療)を柱にした個別化医療に取り組んできた。認知症の治療でも脳磁図(MEG)などを活用し、患者に合った個別化医療に力を注いでいる。

認知症は、その半数以上がアルツハイマー病に起因することからアルツハイマー病=認知症だととらえられがちだ。また認知症の前段階であるMCI(軽度認知障害)では、まだ脳に余力があるため症状が改善する可能性があるが、一旦進行してしまうと、もはや改善は見込めないと認識されるのが一般的だ。だが、脳の働きが悪くなる認知症は、アルツハイマー病の症状のひとつであって、重度のアルツハイマー病でも認知症が軽症の場合もあれば、その逆もある。

▲脳磁図

鴫原良仁医師は、「風邪をひいた際に服用する咳止めの薬や解熱剤は病気自体を治すことはないが、症状を抑えることができる。眼鏡も近視を治すことはないが、生活に支障が出ない程度に視力を改善できる。認知症もこれと同様で、背景にある病気自体を治せなくても脳の働きをよくすることで症状を改善できる」と説明する。

そこで行っているのが、生活改善や運動療法などによるリハビリ(非薬物療法)だ。

▲介護老人保健施設「かけはし」

北斗では、系列の介護老人保健施設「かけはし」の入居者18人を対象に認知機能を調べる心理検査を実施し、リハビリ(3ヵ月)の前後での認知機能を比較した。その結果、改善がみられた人は18人中10人で半数以上。また周囲に迷惑をかける問題行動については18人中12人と全体の3分の2に改善がみられた。さらに脳磁図で脳の働きを調べると進行した認知症の患者でもリハビリを行うことで脳機能に変化がみられたという。

脳磁図は、脳の中の磁場の変化をとらえることで脳の働きを診断する最新鋭機器。心臓に心拍や脈のリズムがあるのと同様、脳にもリズムがあり脳磁図はそのリズムを調べることができる。

「進行した認知症患者でもリハビリによって脳の機能を改善できることが科学的に立証された」と鴫原医師。

この研究成果の科学的正当性が評価され、今年3月に国際科学雑誌(Scientific Reports)に掲載された。

▲北斗病院

一方、北斗系列の熊谷総合病院(埼玉県)では、脳ドックに前述の検査(脳磁図や認知機能検査)を加え、認知症にまで範囲を広げた「脳機能ドック」の実施を開始した。

 認知症の治療で薬物療法に限界があるといわれる現段階では、リハビリがカギになる。患者に最適のリハビリを提供するために、リハビリスタッフや精密医療の力を借りて認知症患者の生活の質を高め、幸せに生活できるよう力を注いでいきたい」(鴫原医師)。

鴫原  良仁精密医療センター長(しぎはら よしひと)
香川大学医学部卒。大阪市立大学で研修、医学博士を取得。University College Londonでリサーチフェロー(2011〜2017年)を経て、17年6月に北斗病院の精密医療センター長に就任。18年7月から熊谷総合病院のMEGセンター特別顧問を兼任。