【2018年6月号掲載】

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ビッグデータに基づき脳磁図で認知症の発症リスクを評価

鎌田一理事長

▲鎌田一理事長


鴫原良仁北斗精密医療センター長

▲鴫原良仁北斗精密医療センター長

北斗病院では認知症の診断に脳磁図を活用した画期的な試みを行っている。英国ロンドンの脳科学研究所で長年にわたり脳磁図の研究に携わってきた鴫原良仁医師を招聘、鴫原医師は昨年6月に北斗精密医療センター長に就任した。

脳磁図は脳の中の磁場の変化を捉えることで、脳の働きを評価する機器。脳に思考や感情などの活動があると脳内の神経細胞に電気が流れ、磁力が発生する。脳磁図はこれをセンサーで捉え、その磁力の強弱とタイミングから脳の働きや信号の伝達を詳細に把握することができる。

「脳にも心拍数の様なリズムがあり、海外の研究で1秒当たり10拍程度なら正常、7~6程度だと認知症のリスクがあると言われている」と鴫原医師は説明する。

脳磁図を使った認知症の評価自体は、新しい技術ではない。原理的には十年以上前から可能であった。しかし一般の医療機関でこの技術が利用できない。これは脳磁図検査における、正常と異常を判定する客観的な「基準」が確立されていないことが大きな要因であった。基準値を作るためには、戦略的かつ大規模なデータの集積が必要なため、莫大な労力がかかり、容易ではない。

この状況を打破するために、5年程前に英国8大学が共同して大量の脳磁図データを集積し、その「基準」を確立するプロジェクトがスタート。鴫原医師もロンドン大学の一員として、そのプロジェクトに参加していた。昨年北斗病院に着任後、8大学と共同し、同プロジェクトを日本で展開。さらに健常者のみならず、高齢者・認知症患者のデータを集めながら、日本の臨床現場で使える「基準」の作成を続けている。

鴫原医師は「基準値の作成は着々と進んでおり、遠からず実際の臨床に使える段階に入るであろう。一旦『基準』が確立されれば、比較的簡便な検査で、認知症発症に至る早い段階からそのリスクを評価でき、治療の選択肢を広げられる」と期待する。

北斗病院が構想の柱に掲げる「プレシジョン・メディシン」(PMC・精密医療)というのは、IOTを使って膨大な情報を集め、そのビッグデータの解析に基づき、患者の個々人に合った治療を選択し提供するもの。前述の脳磁図による認知症診断の標準データ作成もその一環だ。脳磁図などの補助技術によって認知症のリスクをより正確に評価することができれば、さらに適切な治療が可能になる。脳活性化リハや将来的には再生医療など、さまざまな技術を駆使して認知症の発症・進行を抑える時代が来るだろう。

鎌田理事長は「現時点では、熟練した医師の経験則に頼った認知症診療が行われている。これは今後も重要であり続けるであろう。しかしこれに、PMCを柱にした客観的なデータに基づくサポートが加わることで、よりよい認知症治療が、より多くの患者に提供できるようになる。脳磁図による認知症診断の取り組みが現代医療に果たす役割は大きい」という。

脳磁図1

▲脳磁図

脳磁図2

▲脳磁図