【2020年2月号掲載】

【紋別】新ガリンコ号1月就航 発着ステーション拡張へ
食のスペース充実・強化でフードコート新設構想も

冬のオホーツクのシンボル、紋別市のガリンコ号がバージョンアップして2021年1月に就航する。現在のガリンコ号Ⅱに比べ速度は1・6倍になり、乗船定員は40人増えて235人に。これに合わせて市は発着場となるガリンコステーションの拡張リニューアルを計画中。「食の充実」を図るためフードコートの新設構想も描いている。

▲オホーツク海の流氷帯をグングン進むガリンコ号Ⅱ

東京便の搭乗増で昼食場所のニーズ

▲紋別ガリンコステーションと呼ばれる
海洋交流館がリニューアルされる

来年1月に予定される3代目の新ガリンコ号の就航に合わせ、紋別市は乗り場がある観光の拠点施設「海洋交流館」(以下・ガリンコステーション)の拡張リニューアルを計画している。

外国人観光客の増加による混雑解消を図るほか、待合サービスの向上、さらには地域の「食」の魅力を積極的に発信していきたいという考えからだ。

東京とオホーツク紋別空港を結ぶ唯一の定期路線、ANA375便が到着するのは季節によって異なるものの通常、午後零時過ぎ。そのため、かねてから観光客らが昼食をとれる飲食施設の充実が求められていた。東京便の搭乗客数は大きく伸長しており(別稿参照)、今後さらに多様化するであろう「食」のニーズに応えるのも目的の一つだ。

現在、ガリンコステーション内の飲食施設は、市内に複数の店舗を構える「らーめん西や」1店のみ。人気店で評判も良いことから、リニューアル後も引き続き営業するとみられるが、市は「西や」のほかに4〜5店をフードコートのようなイメージで新装したいと考えているようだ。

「今後、具体的なプランの策定や実施設計に着手します。最重視するコンセプトは『食と観光』。ガリンコ号の迫力満点のクルーズを堪能していただくとともに、オホーツクの食材を使ったおいしいものをたくさん召し上がっていただきたいと思っています」(鈴木英樹副市長)

結実した海外プロモーション

▲観光資源が集まるガリヤ地区

そもそも市が、約10億円を投じて新ガリンコ号の建造に踏み切ったのは、乗船客数の増加への対応が大きな理由。外国人客の伸びが全体を底上げし、特にタイからの旅行客の増加が顕著だからだ。

2018年度(19年1〜3月)の乗船者総数は3万1516人。このうち外国人は9813人(乗船者総数に占める割合31・1%)で、うちタイは5819人(外国人乗船者数に占める割合59・3%)となっている。前年の17年度(18年1〜3月)は同2万8101人で、うち外国人6632人(同23・6%)、うちタイ2015人(同30・4%)だったことから、この1年間で飛躍的に増加したのがわかる。

その要因は、紋別観光振興公社を中心に数年前から東南アジア諸国への海外プロモーションに地道に取り組んできたことが大きい。

同社の中島和彦副社長は「旅行博などでの手応えは良かった。タイ国内でのガリンコ号の知名度が上がっており、現地の旅行会社も精力的に紋別へのツアー商品を販売してくれている」と強調し、オホーツクガリンコタワーの黒木主税常務は「外国人客の嗜好は体験型観光へ移行していると言われている。東南アジアでは体験できない雪や流氷、ドリルのついた流氷砕氷船等による冬体験が人気となっていると考えられます」と話す。

新ガリンコ号は、ガリンコ号Ⅱと比べて速度が1・6倍に。定員も195人から40人増の235人を予定している。これまでは流氷帯が遠い沖合にある時に、時間内に到達できないケースも少なくなかったが、スピードアップによって大きく改善される。加えて、新ガリンコ号とガリンコ号Ⅱの2隻体制で運航されるためキャパシティが大幅にアップするのもメリット。ダイヤの利便性も高まる。

また、夏期には大学等の海洋調査や花火等の企画便に加え、雄武町や湧別町など近隣の地域へのクルーズの実施を検討している。

そんなガリンコ号の歴史を辿ると、初代ガリンコ号が登場したのは1987年2月。アラスカの油田開発用に試験的に作られた砕氷船を「ガリンコ号」と名付け、旅客定員32人でスタート。船が流氷帯を進む光景とネーミングがピッタリで、たちまち観光客が定着した。

その後、定員は70人に増え、97年に現在のガリンコ号Ⅱが就航。船体重量は約3・5倍の150トンとなり、旅客定員も195人に大きく増えた。流氷を砕く大きなドリルで突き進み、砕けた流氷と海水が織り成す色彩は「神秘的」と評判で、砕かれた流氷が船体横から浮き上がってくる姿は圧巻だ。

04年には「海の邪魔者を逆手に取った流氷観光」として北海道遺産に認定され、冬のオホーツクを代表する観光資源として北海道の観光振興に大きく貢献してきたのは言うまでもない。

今後も人気が持続するのは間違いない。インバウンド需要の増加が注目される一方、北海道内に目を転じても、旅行会社が札幌発着でガリンコ号Ⅱ乗船をメインにしたツアーを企画、販売しているほか、地元の紋別観光振興公社は昨シーズンの2月、ガリンコ号Ⅱの乗船を2日目のハイライトとして1泊2日のオホーツク紋別空港発着「紋別観光周遊バスツアー」を催行。一方、北紋バスは1月25〜3月10日の期間中、「オホーツクまるごと満喫観光」と銘打ったシーアイス号を運行。レンタカーを使わない個人型観光客のニーズに応えている。

アザラシにふれるオンリーワン施設

▲「餌やり体験」ができる
アザラシシーパラダイス

リニューアル予定のガリンコステーションは市の所有施設である。「もんべつ海の駅」を別名とし、海が持つ様々な魅力を提供する施設として国土交通省が登録する「海の駅」の道内8ヵ所のうちの一つだ。

この一帯はガリヤ地区と呼ばれ、ガリンコステーションの周辺には「紋別 氷海展望塔 オホーツクタワー」や「オホーツクとっかりセンター」などの観光施設が集積している。

このうち「オホーツクとっかりセンター」は、「アザラシランド」と「アザラシシーパラダイス」で構成される国内唯一の海獣保護施設。なかでも「アザラシシーパラダイス」は2頭のアザラシが暮らす飼育プールのほかに、人工海水浴場であるホワイトビーチの一部を自然環境一体型の展示施設として利用した、日本中を探しても「ここにしかない施設」だ。

着地型観光を推進するうえで大切な要素が「オンリーワン」である。そんな観光資源をもっと上手に活用することで、新ガリンコ号の就航、ガリンコステーションのリニューアルに合わせ、ガリヤ地区の魅力はさらに高まるだろう。