【2020年1月号掲載】

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北海道ファシリティマネジメント協会新春座談会
北海道・札幌冬季オリパラ招致とFMでまちづくり【第10回】

札幌の青写真浸透で冬季オリパラの機運上昇を

——今回の座談会は「北海道・札幌冬季オリパラ招致開催とFMでまちづくり」がテーマです。まずは石川副市長に札幌市でオリパラを開催する〝意義〟を伺いたいと思います。
石川
 ご承知の通り1972年に札幌市でオリンピックが開催されましたが、当時の札幌市の人口は約100万人でした。同年に政令指定都市になり、さまざまなインフラが完成し、ウィンタースポーツという誰もが楽しめる文化も生まれた。
加えて、開催中だった〝さっぽろ雪まつり〟も世界中に配信され、現在では冬の一大イベントに成長しています。オリンピックが開催されたことによって札幌市が国際都市の仲間入りをしたわけです。
ですが、今では当時を知る市民も減少し、さまざまな施設も老朽化、ウィンタースポーツ人口も減少している。今一度札幌の存在意義を高めるためにも、まちの再構築を図るためにも、札幌オリパラ招致を進めていきたいと考えております。

——自民党のスポーツ立国調査会副幹事長を務める中村衆議は〝意義〟について。
中村 オリパラは〝スポーツと文化の祭典〟ですから、招致が成功すればスポーツで世界中の人に夢を与え、縄文遺跡群やアイヌ文化など、北海道が持つ文化を世界に発信することができます。また、高速道路の延伸をはじめ、インフラ整備も進むことになる。ニセコエリアまで延伸されれば、観光面でも北海道に大きな成果をもたらすことは間違いありません。

——ただ、今ひとつ盛り上がりに欠ける印象は否めません。
小玉 オリパラを〝スポーツのイベント〟としてだけで捉えてしまうと一過性で終わってしまう。盛り上がりに欠ける要因はそこにあるのではないでしょうか。各地域の方々が「自身の地域の課題解決」と、オリパラ開催を結び付ける作業をもっと具体的に実施すれば、全体の機運が高まり、一層のおもてなし力の強化にもつながると思います。
また、2030年を迎える頃、アジア圏域の中間所得層が爆発的に増えているはずです。現在すでにインバウンドが急増していますが、今以上に滞在型のニーズは高まり、その成長力、需要を取り込むためには、やはりスポーツと文化の魅力が鍵になります。所得の流れを見据えたうえで戦略を立てながら、〝オリパラは感動を呼ぶイベント〟ということを共有し、幅広い層を巻き込む取り組みにも尽力しなければなりません。
青木 民間の立場から言わせていただくと、私は50年以上にわたって企業を経営してきましたが、以前は
〝ヒト・モノ・カネ〟といった三原則があった。現在ではこれに〝情報〟が加わり四原則となっていますが、こういった観点でオリパラ開催を分析すると、出場する人、観戦する人、施設を造る人、さらには市民、道民、国民はどう感じているのか──、ということが大切になってくる。
オリパラ開催の是非を問うアンケート結果に目をやると賛成派に勢いがなく、〝まだまだ〟といった印象は否めません。カネの問題ばかりに注目が集まっているからではないでしょうか。
よく「負の遺産が多くなる」といった声を聞きますが、どれだけの予算で何を建設するのか──、こういったことをもっと具体的に市民に知らせることが重要で、前回のオリンピックが開催されたときには、地下街の開設や千歳空港拡張に加え、CO2削減といった環境問題を改める声も生まれたんです。決して負の遺産ばかりではない。もっと具体的な計画を打ち出せば、賛成の割合はきっと高くなるはずです。
吉田 同感です。私はオリパラ招致に向けた市民ミーティングや区民ミーティングに参加しましたが、青木さんがおっしゃった通り、「知らされていない、わからない」という空気感が漂っていました。もちろん大半の方は「オリパラは素晴らしい」ということを理解していましたが、札幌のまちづくりに効果があるかどうかについては認知されていない。札幌市が掲げる「未来のまちづくりの青写真」を理解していないんです。
今、市が打ち出す「障がい者に優しいまち」「共生社会」というものは、オリパラ開催とは関係なく目指さなければならない姿のはずで、オリパラ招致によりこのまちづくりが「確実に進展する」ということを知っていただくことが重要です。
また、先ほど小玉さんもお話しされていましたが、仮に招致が成功し、外国人観光客が多数来道しても、それが一過性のものとなってしまっては意味がない。そうならないためにも、国際都市として磨きをかける必要があり、例えば、外国人にも分かりやすい看板や案内板などの設置を進めるなど、皆さんが快適で安心して楽しめる環境を構築しなければなりません。

——国の立場から札幌オリパラに期待することは。
多田 地方創生の観点から申し上げると、札幌市でオリパラが開催されれば、外国人観光客が北海道にお金を落とすことになりますので、経済効果は大きい。
これについては当然ですが、付け加えると、北海道の強みを見せつけるチャンスだと思います。北海道は7空港一括民営化が進んでいるわけですから、観光ビジネス、食関連ビジネスに加え、冬だけではないスポーツや健康スポーツを打ち出すなど、一歩踏み込んだ多角的なビジネスを展開した方がいいでしょう。それにあわせて〝女性が活躍できるまち〟〝子育てしながら働けるまち〟などを市が積極的に提案し、新しいライフスタイル、新しい「札幌像」を提案したほうがより強いインパクトを与えられると思います。
杉浦 そうですね。〝スポーツ〟を核としながら〝持続可能性〟、〝若い力〟、〝グローバル〟などといった、積極的なメッセージを開催へ向けて盛り込むことが大切だと感じます。

——これまでの意見に付け加えるとしたら。
石川 札幌の将来像を具体的に示していかなければ、市民の支持率、市民理解は得られません。お話にもありましたが、女性や若い力が躍動し、スポーツも盛んで海外の方が安心できるまちを打ち出し、札幌ならではの優位性を活かしたまちづくりをオリパラに絡めて示していこうと思います。

FMの趣向活かし世界に誇れるまち創造

▲建て替え時期を迎えている月寒体育館

——FMを絡めてまずは会長から見解を。
吉田 市が念頭に置いているように「過剰に予算をかけない」ことは当然ですが、これから建設するものは障がい者や外国人観光客を含め全ての人にとって利用しやすいユニバーサルな施設にしなければなりません。オリンピック終了後も市民が将来にわたって活用できる、市民の財産になることを前提に建設する必要があります。
青木 市は「新しいものは建設しない」というスタンスのようですが。
吉田 確かにそうですが、私は必要なものは新築してもいいと思います。もちろんイベント的な一過性のものであれば既存の施設を有効活用すればよい訳で、そこの選別は明確にしていただきたいと思います。

——これについて石川副市長から。
石川 市としては、「新設しない」ということではありません。例を挙げると、月寒体育館は築50年以上で建て替え時期を迎えています。そこで〝オリパラのタイミングで施設を建てる、オリパラでは既設の月寒体育館と、新設の体育館を使用し、オリパラが閉幕した時に古い方を解体する〟、というスタンスです。これは新設ではなく建て替えと言えます。
中村 施設建設に絡めてお話しすると、〝オリパラの前の年にいろいろな施設が建設される〟こと自体が良いことではないと思います。前々からオリパラ開催の有無にかかわらず、子どもたちが一流のアスリートを目指せる環境を整備し、メダリストを育成しなければならなかったわけです。スキージャンプの高梨沙羅選手のようなトップアスリートがたくさん育っていれば、〝札幌冬季オリパラ招致〟はもっと市民から賛同を得られていたはずです。今の状況であれば、ただの〝場所貸し〟の札幌オリパラになってしまう。
子どもたちに夢を与える施設、育成のための施設建設について議論することが大切だと思います。

——オリパラ開催によって、決定されている新設工事が前倒しになる事案もあると思います。
青木 そうですね。新幹線については前倒しを図るべきです。開催時に新幹線が札幌にあるとないとでは都市としての印象が全く違う。まちづくりの〝前倒し〟は決して悪いことではありませんので、こういった部分は慎重に、バランスよく説明しなければなりません。
中村 私も同感です。ただそこに札幌市の〝本気さ〟をもう少し注入していただきたい。札幌市が今以上に「選手の育成に力を入れる」と宣言して五輪前後にも活用していくのであれば、国が支援に乗り出すことも考えられると思います。

——では、仮に施設を新設するとして、どのような施設が望ましいか、市民に納得してもらえるのか。
小玉 将来の収支を広く視野に入れた施設整備が望ましいでしょう。これまでのスポーツ施設はただ「スポーツをするだけの施設」でしたが、今のスポーツ施設は〟する〝だけでなく、VR、CGや音楽等を絡めた、観る・楽しむイベントを行うことで集客力を高めている。ライヴビューイングの人気もそうです。こうした多目的なイベントで稼ぐことにより〝もったいない〟というイメージはかなり払拭されるのではないでしょうか。まさにFMの指向が活かされる局面と言えます。

——最後に、オリパラ招致を盛り上げるための策を。
多田
 一番わかりやすいのはやはり〝観光ビジネス〟
を打ち出すことでしょう。それに向けてどういった連携をしてビジネスを展開すれば、どういった効果があるのか──。あとは情報を駆使し、FMを用いた施設を建設することもひとつの方法ではないでしょうか。
杉浦 中村衆議もお話しされましたが、やはり選手の育成は欠かせません。前もって施設が建設されれば、選手のホームグラウンドになり、記録も出やすくなります。選手の活躍が一番のパワーです。社会インフラの整備となると、公の資金も必要ですが、同時に、民間資金や民間の施設整備・管理ノウハウも活用した都市計画が大切だと思います。過去の大会では、選手村の施設が、大会後、改修のいらない公務員住宅として活用されたと聞いています。民間と行政が知恵を出し合った機運醸成が大切ですね。
青木 そうですね。いずれにせよ、招致が成功すれば、札幌のまちは一層世界に誇れるまちに生まれ変わるはずです。

衆議院議員 中村 裕之氏〈なかむら・ひろゆき〉
1961年生まれ。84年北海学園大学卒。2003年北海道議会議員初当選。12年3期目途中で辞職し、衆議院総選挙道4区から自民党公認で出馬、初当選を果たす。現在3期目。
札幌商工会議所特別顧問 青木 雅典氏〈あおき・まさのり〉
1935年生まれ。不動産会社や電気製品の卸売会社などを経て68年にホーム企画センター創業。2014年に会長に退くも、17年4月からは社長も兼務。北海道日中友好協会会長、在札幌ニュージーランド名誉領事も兼務。
内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局地方創生総括官補 多田 健一郎氏〈ただ・けんいちろう〉
1962年生まれ。86年東京大学法学部卒。86年自治省入省。2007年内閣府参事官。10年北海道副知事。現在は内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局地方創生総括官補を務める。
札幌市副市長 石川 敏也氏〈いしかわ・としや〉
1962年生まれ。2010年経済局中央卸売市場長。12年市長政策室政策企画部長。15年観光文化局スポーツ担当局長。16年スポーツ局長。19年5月から現職。
文化庁審議官併内閣官房内閣審議官 杉浦 久弘氏〈すぎうら・ひさひろ〉
1966年生まれ。89年文部省入省。2008年北海道教育委員会教育次長。14年東京オリパラ競技大会組織委員会事務次長。16年文化庁長官官房政策課長。18年から現職。
北海道公営企業管理者 小玉 俊宏氏〈こだま・としひろ〉
1959年生まれ。2012年経済部国際経済室長。15年胆振総合振興局長。16年環境生活部長。18年会計管理者。19年6月から現職。
FM協会会長 吉田 洋一氏〈よしだ・よういち〉
1946年生まれ。明大政経卒。北海道企画振興部長、教育長を歴任し、2009年退任。同年北海道社会福祉事業団理事長。19年からファシリティマネジメント協会会長。

 

 

●専門的意見聞けた10年

北海道FM協会専務理事
札幌オリ・パラ招致
応援委員長
藤﨑 昌甫氏

FMは老朽化した建物を長持ちさせ、より効率的な施設に再構築するための手法です。このほど東京オリパラの一部競技が札幌で開催されることとなりましたが、施設の整備・改修を必要とする事案もあるかもしれません。その際は、ぜひFMを活用したまちづくりを進め、東京都のためにも大会成功を全力でバックアップして参りたい。
加えて、当協会はこれまで、月刊クォリティ新年号で10年間にわたって、〝札幌のまちづくり〟をテーマとした座談会を掲載して参りました。本年も、国、道、市に加え、民間の方々から専門的なご意見を伺うことができましたが、協会といたしましては、この10年をひとつの区切りとしたいと考えております。引き続き、FMを活用したまちづくりを積極的に推進して参る所存ですので、今後ともご指導ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。